30年度 問題1①~③ 消費者行政と関連法(正誤○×)その2(一般公開中)

1. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入 (マーク)しなさい。

① 消費者基本法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者を保護すべき弱者として位置づけていることから、 消費者が自主的かつ合理的に行動する努力義務までは定めていない。

② 消費者基本法は、国は、国民の消費生活の安定及び向上を図るため、消費者団体の健全かつ自主的な活動が促進されるよう必要な施策を講ずるものとすると規定している。

③ 消費者基本法は、消費者政策会議が消費者基本計画の案を作成するとしており、また、その際には消費者庁の意見を聴かなければならないとしている。

30年度 問題1① 消費者基本法(第1条・目的 第7条・消費者の責務)A★☆ ※超基本

① 消費者基本法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者を保護すべき弱者として位置づけていることから、 消費者が自主的かつ合理的に行動する努力義務までは定めていない。

消費者施策の考え方の超基本です。消費者基本法は消費者保護基本法が大幅に改正されたものです。ちなみに、新規に制定されたのではなく、改正されたものですので、『消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)』となっています。

消費者保護基本法が制定されたのは昭和43年です。1968年ですね。このころが消費者行政が始まった時代と覚えておいてください。私は昭和41年生まれですので、生まれた直後に様々な消費者保護施策が始まったという感じで覚えています。ちなみに、国民生活センターが誕生したのは1970年です。1960年代に消費者保護のための様々な法律が施行されました。

消費者保護基本法は、その名称の通り「消費者は保護される立場」であるという考えでしたが、消費者を取り巻く環境が大きく変わり、消費者を保護するのではなく、消費者の権利を尊重し消費者の自立を支援するという考え方に大きく変わりました。

ちなみに、この論点は、この年の論文問題のテーマ1とつながっていますし、論文ではよく使うフレーズです。。

平成30年度 論文試験問題 テーマ1
消費者の権利を実現する上で、行政や消費者はどのような責務や役割を果たしていくべきか、論じなさい。
指定語句:消費者基本法、消費者と事業者との格差、国、地方公共団体、消費生活相談

さて、問題1①は消費者基本法の第1条の目的と第7条の説明はないですけど消費者の責務としています。

消費者基本法
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。

「 消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ」というフレーズはおなじみのフレーズです。論文でも多様しまうので呪文のように唱えれるようになってください。『消費者の権利の尊重及びその自立の支援』も定番フレーズです。頻出論点です。問題文中の「消費者を保護すべき弱者として位置づけて」というのは消費者保護基本法の時代ですので、このフレーズが誤りです。

また、消費者の権利を尊重するから、消費者自身でしっかり勉強して努力して自立してくださいということなので、「消費者が自主的かつ合理的に行動する努力義務までは定めていない」が誤りです。

このフレーズは消費者基本法第7条に規定されています。

消費者基本法
第七条 消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない
2 消費者は、消費生活に関し、環境の保全及び知的財産権等の適正な保護に配慮するよう努めなければならない。

以上の論点で問題1①は2か所が誤りになっています。というのが正攻法ですが、読んだ瞬間、違和感がありまくりな問題ですね。特に「努力義務までは定めていない」。「義務までは定めていない」というのは考えられますが、「努力」義務というのはよくあるパターンです。要するに義務ではないということです。強制力はないけど、できるだけやってくださいよというパターンですので、それを否定しているのは変ですね。この問題1①は知識がなくても日本語の文章的におかしいという点で直感的に間違いだと思える問題です。

したがって、問題1①は×(誤っている文章)です。必ず正解してください。

解説の最初にしつこく書いているのは、相談員試験の問題にこのパターンが少なくありません。知識はなくても問題文の日本語のつながりがおかしいので誤りだというパターンです。同じようなおかしい問題の過去問を目にして解説を読むことで、試験本番で「おかしい」という直感を養うことができます。これは短い時間内に問題を解く本番ではとても重要な感覚ですので、ぜひ身につけてください。身につけるには、同じような過去問を繰り返して覚えることです。特に平成30年度試験では知識だけでは覚えきれない問題が多かったのですが、この直感的な感覚で正解できる問題があったので、ボーダーライン上の紙一重の差が出てきます。勉強部屋では、この感覚を養うことも重要視しています。40代以上には暗記はなかなかきついですからね。ぜひ、勉強部屋の過去問解説で意識してください。

また、消費者と事業者との格差は「消費者契約法」の目的にも明記されています。この2つの法律に 消費者と事業との格差について明記されていることを覚えておいてください。

消費者契約法
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

類似過去問

【29年度過去問 問題1① 単純正誤】
消費者基本法は、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」を消費者政策の基本理念とし、国、地方公共団体において講じるべき施策及び事業者の責務等をまとめて明らかにしている。
(正答→〇)

【28年度過去問 問題1① 単純正誤】
消費者基本法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定めている。
(正答→〇)

30年度 問題1② 消費者基本法(第26条・消費者団体の自主的な活動の促進)B ※ちょっと悩むかも

② 消費者基本法は、国は、国民の消費生活の安定及び向上を図るため、消費者団体の健全かつ自主的な活動が促進されるよう必要な施策を講ずるものとすると規定している。

消費者団体に関することです。消費者基本法に消費者団体に関することが規定されているのかな?消費者契約法の消費者団体訴訟制度の方かも。と思って悩むかもしれません。その結果不正解にしてしまうこともあり得ますね。そういう意味で少し難しいかもしれませんが、消費者問題という大きなくくりで考えると消費者団体の役割は欠かせないと考えます。間違ったとしても仕方がありませんので、この機会に覚えてください。

で、この問題文は、そのまま消費者基本法の第26条になっています。

したがって、問題②は〇(正しい文章)です。素直に正解と考えたいところですが間違っても仕方がないです。

消費者基本法
(消費者団体の自主的な活動の促進)
第二十六条 国は、国民の消費生活の安定及び向上を図るため、消費者団体の健全かつ自主的な活動が促進されるよう必要な施策を講ずるものとする。

そのほか、消費者基本法の中で「消費者団体」が出てくる条文を紹介しておきます。

消費者基本法

第八条 消費者団体は、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに意見の表明、消費者に対する啓発及び教育、消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めるものとする。

(国民生活センターの役割)
第二十五条 独立行政法人国民生活センターは、国及び地方公共団体の関係機関、消費者団体等と連携し、国民の消費生活に関する情報の収集及び提供、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理のあつせん及び当該苦情に係る相談、事業者と消費者との間に生じた紛争の合意による解決、消費者からの苦情等に関する商品についての試験、検査等及び役務についての調査研究等、消費者に対する啓発及び教育等における中核的な機関として積極的な役割を果たすものとする。

30年度 問題1③ 消費者基本計画(第27条・消費者政策会議)C★ ※主語がややこしい

③ 消費者基本法は、消費者政策会議が消費者基本計画の案を作成するとしており、また、その際には消費者庁の意見を聴かなければならないとしている。

「消費者政策会議」という主語、「消費者庁」という誰の、「意見を聴かなければならない」という何をという3点において暗記問題になってしまうという点で難問としています。ただし、消費者基本法の第27条に規定されていることそのものです。この機会に確認しておいてください。

また、消費者基本計画自体は毎年のように出題される超頻出問題となっています。

前半の消費者政策会議の業務として「消費者基本計画の案を作成する」というのは正解で、後半部分の「意見を聴かなければならない」というのも正解ですが、どこに聞くかというと、消費者庁ではなく消費者委員会なのです。ややこしい難問です。

したがって、問題1③は×(誤っている文章)解です。いやあ、難問ですね。偶然で正解すればラッキー。知ってれば素晴らしい!

消費者政策会議とは

消費者政策会議の業務

  • 消費者基本計画の案を作成 ※作成するときは消費者委員会の意見を聴く
  • 消費者政策の推進に関する基本的事項の企画に関して審議・ 消費者政策の実施を推進⇒ 実施の状況を検証し、評価し、及び監視する ※取りまとめを行うときには消費者委員会の意見を聴く

消費者政策会議は「内閣府」に設置されます

内閣総理大臣などが構成員となっている国の重要施策に関する会議は「内閣府」に設置されます。総理大臣・大臣などを管轄しますし、試験にも出てくる「消費者委員会」や「食品安全委員会」などの委員会も内閣府に設置されます。まず、消費者庁の枠を超える重要な会議や委員会は「内閣府」に設置されるということを覚えておいてください。その設置する根拠は、それぞれの施策を実施している関係省庁の法律に規定されています。今回の「消費者政策会議 」は消費者庁の「消費者基本法」ということですね。委員会はそれぞれの委員会設置法というのがあります。

【参考】首相官邸ホームページ
トップ > 会議等一覧

 「消費者保護基本法」が36年ぶりに改正され、新たに平成16年6月より「消費者基本法」として施行されています。この法律においては、従来の「消費者保護会議」を「消費者政策会議」として改組し、その機能を強化しています。
 消費者政策会議は、消費者基本法に基づき、消費者基本計画の案を作成するほか、消費者政策の推進に関する基本的事項の企画に関して審議にあたります。また、消費者政策の実施を推進するとともに、その状況を検証し、評価し、監視することとされています。
 構成員については 内閣総理大臣が会長を務め、全閣僚及び公正取引委員会委員長が委員となっています。
 なお、消費者政策会議の庶務は消費者庁消費者政策課が務めています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/syouhisya/

消費者基本法
(消費者政策会議)
第二十七条 内閣府に、消費者政策会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 消費者基本計画の案を作成すること。
二 前号に掲げるもののほか、消費者政策の推進に関する基本的事項の企画に関して審議するとともに、消費者政策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視すること。
3 会議は、次に掲げる場合には、消費者委員会の意見を聴かなければならない。
一 消費者基本計画の案を作成しようとするとき。
二 前項第二号の検証、評価及び監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとするとき。

類似過去問

【29年度過去問 問題1③ 単純正誤】
消費者基本計画は、消費者政策会議が消費者委員会の意見を聴いて案を作成し、閣議決定されたうえで、公表される。
(正答→〇)

【28年度過去問 問題1③ 単純正誤】
政府は、消費者政策の計画的な推進を図るため、消費者庁だけでなく、関係各府省庁等の施策を含めて、消費者基本計画を定めなくてはならない。また、その検証・評価・監視に当たり消費者委員会の意見を聴かなければならない。
(正答→〇)

【正答】
①→×、②→〇、③→×