30年度 論文試験・論文対策 総評(まとめ)(一般公開中)

 論文試験の要件を確認する(2018年度以降は同じ)

受験要項(2019年度)

(B)論文試験(100 点満点)
論文試験は、相談内容を分析し、問題点をまとめ、資料を作成する能力を判定するために出題します。このため、「体験談」や「感想文」といった作文ではなく、以下の評価の観点を踏まえ、客観的な事実に基づき論理的に考察した論文である必要があります。

[評価の観点]
・出題の趣旨をよく理解し、テーマに関する要点が適切に記載されているか。
・指定語句をその意味するところが明確になるよう、適切に使用しているか。
・出題に関する知識や能力、問題意識を有しているか。
・広い見地から考察し、適切な結論を下しているか。
・論理に矛盾や飛躍がなく、論旨が明確になっているか。
・消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員の役割を踏まえて消費者問題を考察しているか。
なお、原稿用紙の使い方の不適、誤字・脱字については、減点の対象とします。

試験問題(2018年度・平成30年度)

次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解
答用紙に記入しなさい。以下の場合は、採点の対象外となる。
①「選択式及び正誤式筆記試験」の得点が基準を超えていない場合
②文字数制限が守られていない場合
※文字数の数え方は、文字が記入されている行ごとに20 字として数える。一行の途
中までしか文字が書かれていなくても、20 字として数える。
③受験番号・氏名の記入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合
④選択した論文テーマ番号の記入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合

以下のページでまとめていますので、必ず確認しておいてください。

平成30年度 論文試験問題

【テーマ1】

消費者の権利を実現する上で、行政や消費者はどのような責務や役割を果たしていくべきか、論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。

1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。

指定語句:消費者基本法、消費者と事業者との格差、国、地方公共団体、消費生活相談

【テーマ2】

適格消費者団体による差止請求制度に加え、特定適格消費者団体による集団的被害回復制度が導入された。両制度が消費者被害防止・救済において果たす役割を論じるとともに、消費生活センター等における相談業務との連携について、論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。

1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。

指定語句:不当契約条項、不当表示、2段階型、PIO-NET、個別解決

論文解説・総評

テーマ1は「行政や消費者の責務や役割」、テーマ2は「差止請求制度と集団的被害回復制度の役割と相談業務との連携」と命名しました。

行政問題か法律問題か

この2つに区分するのが賛否が分かれるところですが、勉強部屋では2つに区分しています。

行政問題

行政問題は、政策的なことを論じるもので、さまざまな視点から書くことができ、何でもありになるので書きやすいです。テーマは現場を知らなければ書けないものから、今回のように一般受験生でも書けるものなど、出題年によって難易度が異なります。現職向けの問題です。指定語句を見ると、基本的な語句ばかりで、政策的な語句や、一般用語などが入っており、法律的な用語が少ないので判断できると思います。現職は、こちらを選ぶほうが無難です。30年度の問題もそうですが、新試験になってからは、一般の受験生でも対応できる問題になりつつあるようです。
ということで、テーマ1は「行政問題」で、「行政や消費者の責務や役割」と命名しました。
なお、平成29年度試験のように「若年者の消費者トラブル」を法律問題として書いてしまうかもしれませんが、指定語句を見てわかるように、行政問題になっています。法律問題的な行政問題ですね。そこを明確にしておかないと、出題の趣旨から外れてしまいますので注意してください。
このように、行政問題でありながら、法律問題の要素が含まれるテーマが増えていますので、見分け方としては、指定語句が行政的なのものか法律的なものかを確認してください。

法律問題

法律問題は2つのパターンがあって、1つは法律制定や改正などがあったときに、その概要を論じるもので、純粋な法律問題です。過去問を見ればわかると思います。
もう1つは行政問題的な法律問題です。これは、現場で見られる相談事例をあげて具体的に解決方法を具体的な法律を適用させて書くというもので、最近はこのパターンが多くなっています。「送りつけ商法」「次々販売」「ネット通販」などオーソドックスな事例が出題されます。特徴は指定語句に条文等に出てくるような法律用語が列挙されることです。知らなければ書けないというもので、毎年1つぐらい難易度の高い指定語句があります。また、具体的な解決策として、法律に基づくアドバイスをしていくことになるので、どんな条項を使って解決するのかを示す必要があります。現職が行政問題的に政策的なことを書いてしまって不合格になるパターンが出ています。こちらは、あくまでも法律用語を正確に適用させて解決方法を助言するというのが中心になります。
30年度の問題は純粋な法律問題になっています。そこに相談業務との連携という行政問題的な要素が含まれています。
ということで、テーマ2は長いですが「法律問題」で「差止請求制度と集団的被害回復制度の役割と相談業務との連携」と命名しました。

最近の傾向として、行政問題が「法律問題的な行政問題」であったり、法律問題が「行政問題的な法律問題」であったりするので、同じテーマのようでも少し書き方が変わります。ごっちゃになってしまうと論点をはずすことになりますのでお気をつけください。

例年通り、テーマ1は行政問題、テーマ2は法律問題でした

【テーマ1】行政や消費者の責務や役割

消費者の権利を実現する上で、行政や消費者はどのような責務や役割を果たしていくべきか、論じなさい。
指定語句:消費者基本法、消費者と事業者との格差、国、地方公共団体、消費生活相談

今回のテーマ1は行政問題

典型的な行政問題であり、何でもありで通用するので、非常に書きやすいテーマでした。

30年度限定のテーマとして重点対策

「消費者保護基本法制定から、2018年で50年」という節目を迎えます。節目に出題されることがあるので、通常の定番テーマに加えて、30年度のみ重点対策テーマにしました。ほぼ、同じようなテーマで出題されましたので、勉強部屋の会員はラッキーでした。

事前練習テーマ 消費者保護基本法50年【行政問題】
消費者保護基本法制定から、2018年で50年を迎えました。消費者被害の防止や救済における消費生活センターや消費生活相談員の役割・課題について論じなさい。
指定語句:消費者と事業者との格差、消費者基本法、相談窓口、あっせん、消費者教育

難易度は易しいです

何でもありですので、指定語句の使い方が間違ってなければ書きやすいですね。

指定語句からストーリーを作る

指定語句:消費者基本法、消費者と事業者との格差、国、地方公共団体、消費生活相談

  • 【消費者基本法】
    消費者保護基本法から消費者基本法への歴史…消費者の保護から権利の尊重と自立の支援
  • 【消費者と事業者との格差】
    消費者基本法と消費者契約法での条文、格差があるから消費者法があり消費生活センターがある
  • 【国、地方公共団体】
    国と地方との役割分担。消費者庁と消費生活センターの関係をイメージ。国は政策立案・法律改正等の司令塔としての役割、地方公共団体は消費者の身近な相談窓口として、消費者トラブルへの救済や啓発を行う。
  • 【消費生活相談】
    消費者救済のために、消費生活相談が重要な役割を担っている。

【テーマ2】差止請求制度と集団的被害回復制度の役割と相談業務との連携

適格消費者団体による差止請求制度に加え、特定適格消費者団体による集団的被害回復制度が導入された。両制度が消費者被害防止・救済において果たす役割を論じるとともに、消費生活センター等における相談業務との連携について、論じなさい。
指定語句:不当契約条項、不当表示、2段階型、PIO-NET、個別解決

今回のテーマ2は法律問題

差止請求制度と集団的被害回復制度がテーマの「法律問題」です。これらの制度の役割を論じるとなっています。さらに、「消費生活センター等における相談業務との連携について」ということで、行政問題的な視点も加わっています。

30年度以降の必出テーマでした

予想はできたと思います。勉強部屋でも重点的に添削しました。被害者救済という視点はいつ論文に出てもおかしくないテーマですが、消費者裁判手続特例法が平成28年(2016年)10月に施行されたことから、29年度以降の出題論点となりました。29年度の論文添削でも添削テーマとしてあげており、実際に論文添削もありました。

特に、30年度は消費者団体訴訟制度スタートから10年が経過したことから30年度限定重点対策テーマとしましたが、実際に出題されました。法律問題は一度出題されると、再度出題されることはありませんが、被害者救済という大きなくくりで、再度、指定語句などで出題されることもありますし、あえて、使っていく手もあると思います。特に、被害者救済制度は重要なテーマになりますので。

30年度試験対策(論文添削)事前練習テーマ 消費者団体訴訟制度10年【法律問題】
消費者団体訴訟制度スタートから10年が経過しましたが、制度の概要・役割・課題について論じなさい
指定語句:少額多数被害、消費者契約法、適格消費者団体、消費者裁判手続特例法、消費者スマイル基金(ほかに、差止請求など、適宜過去問などから選択してください)

難易度は普通です

択一試験でも重要なポイントでしたので事前に勉強されている受験生が多かったと思います。実際に択一試験にも出題されていますね。指定語句もポイントを押さえれば、そんなに難しくはないと思います。

指定語句からストーリーを作る

指定語句:不当契約条項、不当表示、2段階型、PIO-NET、個別解決

  • 【不当契約条項、不当表示】
    消費者団体訴訟制度は「消費者契約法」での制度で、不当な勧誘行為や不当な契約条項を差し止める制度
  • 適格消費者団体が提起できる
  • 【不当契約条項、不当表示】
    対象範囲が拡大し、ほかの法律でも差止請求制度ができるようになった(特定商取引法の不当行為、景品表示法の不当表示、食品表示法の食品表示基準違反)※27年度のテーマ2で出題
  • 【2段階型】
    「消費者裁判手続特例法」は消費者契約法ではない単独の法律。2段階型になっているのは基本(1段階目は支払い義務の確定、2段階目は被害者被害救済)
  • 適格消費者団体から要件を満たす「特定適格消費者団体」が提起できる
  • 【PIO-NET】
    多数の被害が出ている情報は「PIO-NET」で確認可能。少数被害でもPIO-NETに入れておくことは大切。また、のちに2段階目の連絡も可能になる。
  • 【個別解決】
    5個目の指定語句だが序論の消費者団体訴訟制度」もしくは、「消費者裁判手続特例法」の冒頭で使うのが適当。消費者団体訴訟制度で勝訴しても、同様の被害者は個別交渉になり、個別解決が難しい。「消費者裁判手続特例法」は裁判で確定すれば、同様の被害者全員が2段階目の救済の対象となる。まとめにも強調して繰り返し使える。