- (29年度質問回答)論文試験は明確に「行政問題」と「法律問題」と決められているか?
- (29年度質問回答)法律問題の出題パターンと指定語句の考え方(29年度試験分について追記)
(29年度質問回答)【重要ポイント】論文試験は明確に「行政問題」と「法律問題」と決められているか?(一般公開中)
【重要ポイント】論文試験は明確に「行政問題」と「法律問題」と決められているか?(2016/11/24日投稿分を修正)
これまでは、当たり前のように「2つの論文問題は1つが行政問題で、もう1つが法律問題であり、行政問題は実質的には現職用であるので、行政の事情をあまり知らない一般受験生は「法律問題」を選ぶことになります」と解説してきました。
特に平成28年度の新試験のテーマ2を法律問題としたことに対して反対意見が出ました。あくまでも私の個人的な見解です。
そして、テーマ2を選択して論文で不合格になった現職相談員が少なくありません。おそらく、行政問題のように書いたのだと私は思います。
また、29年度試験の要項では論文の合格基準に『「体験談」や「感想文」といった作文ではなく、』という注意事項が追加されました。これまでは、このような記載がされることがなかったので、現職相談員がテーマ2を行政問題的な視点で書いたために体験談・感想文のようになってしまい不合格となった受験者が多数いたのではないかと推察しています。
例年の一般受験生はテーマ2を選択し、基本原則どおりに法律問題として書いているので例年と変わらないと思います。というか、一般受験生はテーマ2でも現場を知らないので、行政問題的な視点で書くことはできないので、法律問題的な視点で書くことになる、ということです。
最近の法律問題は基本は法律問題ですが、行政問題的な視点が混ざっています。
ちなみに、現職相談員だったら「行政問題」が必ず書けるのかといったら、そうとは限りません。日々の相談業務に追われていたり、行政の動きに興味を持たなければ、資料等を読むこともないからです。28年度試験のテーマ1の行政問題では、「行政処分」という指定語句を避けるためにテーマ2を選んだ可能性もあります。「行政処分」は相談員ではなく、「行政職員」のほうが専門になりますので、ニュースは知っていても仕組みや意義等をあまり知らない可能性もあります。
回答
どこにも書いてません。
行政問題と法律問題の明確な区分はされていませんが、過去問からの傾向を見ると、明らかです。
ただし、今回のように行政問題のような法律問題がたまに出題されることがありますので、確実に行政問題であるほうではないテーマは法律問題と考えたらいいですし、指定語句が明らかに、両者では違っているので分かると思います。
両方とも「行政問題」であることは、ほぼないと思います。
「論文試験 過去問題 一覧」を確認してみたらわかると思います。特に、指定語句の違いに注目してください。
ここ最近は、テーマ1が行政問題、テーマ2が法律問題でしたが、逆のパターンもあります。
行政問題は、「あり方」「課題」「役割」「意義」が求められていますので、行政問題であることの判断は簡単だと思います。ただし、法律名が出てこないわけではありません。
法律問題は、例えば法律改正などがあったときに出題されやすいので、これまでは、明白に法律問題と判断できる場合がほとんどでした。しかし、今回の試験のように行政問題だと考えてしまう問題もあります。
判断基準としては
①「行政問題」でない方のテーマは「法律問題」である
②指定語句に法律用語がある。
特に②は大きな判断基準となり、また、その用語を法律的に説明することが求められていることが行政問題と違う点です。
直近では平成26年度のテーマ2が行政問題に近い法律問題だと思います。
ちょうど消費生活センターで健康食品の送りつけの商法が急増していました。現職であれば、その経験を活かして論文を書けると思いますが、そうした場合に「法律問題」の罠にはまることがあります。
指定語句を見ていただけたら判断できると思います。
平成24年度の沖縄問題も行政問題に近いような気がしますが、行政問題は制度のあり方等を問うているので、実際の相談事例に絡めたものは、法律問題の区分にはいると思います。
法律問題では、機械的に法律用語を解説する必要があります。したがって、論文全体を読んでみると両者の雰囲気の違いがわかります。すると、法律問題なのに、行政問題の書き方をしていれば、マイナスポイントになるばかりか、要件からずれた論文になり、いくらすばらしい内容だとしても不合格になることがあるのではと思います。以上です。
(29年度質問回答)【論文対策】法律問題の出題パターンと指定語句の考え方(29年度試験分について追記)
質問
法律問題の書き方がどうもうまく理解できません。質問自体もうまく説明できないのですが、〇〇法について論ぜよとあればその法律に関わることを詳しく書けばよく、具体的な事例の被害救済であれば、例えば、スマホの問題なら、電気事業法、特商法、消費者契約法、民法というように解決のために使える法律、指定語句に関わる法律をまずは中心にして具体的に列挙すればよいのでしょうか。また、事例を挙げて―という場合の時にはやはりひとつでは少なすぎるのでしょうか。
回答
- 前半はご質問のとおりと考えてOKです。
- 後半の「事例の数」は求められていることが書かれているのなら1つでもいいと思います。3つは字数が多くなりすぎて中身が薄くなるので多いかもしれません。1または2ぐらいが書きやすいと思います。また、事例が詳しく書くべき事例なのか単に列挙するだけでいいのかにもよります。
- 指定語句があるからイメージしやすいという考え方もありますし、指定語句に縛られるので書きにくいという考え方もあります。
とにかく、指定語句を中心に論文を組み立てていくことを心がけてください。 - 指定語句が適切に使用されているかどうかについては具体的に論文を書いて評価を受ける必要があります。
なかなかイメージできない場合は、勉強部屋での過去の論文添削のビフォア・アフタを参考にしてください。
法律問題の論文の書き方(出題パターン・指定語句の考え方)
行政問題と法律問題の違い
(29年度質問回答)【重要ポイント】論文試験は明確に「行政問題」と「法律問題」と決められているか?
- まず前提として、行政問題と法律問題という呼び方は試験上はありません。便宜的に私が勝手につけた呼び方ですが、過去の論文テーマを見ると明らかにテーマの質が違うということは理解できると思います。
- 行政問題は、消費者行政・消費生活センター・消費生活相談員などの意義・役割・あり方・課題などが問われることが中心です。指定語句もさまざまな書き方ができるものが多いです(指定語句の説明は1つとは限らない)。
現職有利な問題です。指定語句にも厳しい制限がないので、書きやすいです。基本的には現職は行政問題を選択し、一般受験生は避けることをおすすめします。 - 法律問題は、具体的な法律名・相談事例(問題文中に具体的にあげられているものや自分であげるもの)・具体的な解決方法などが中心となります。指定語句も、条文に書かれている法律用語が中心です(指定語句の説明は基本的に1つ)。一般受験生は基本的にこちらを選択することになります。
現職でもこちらを選択してもかまいませんが、法律的な視点ではなく、行政的な視点で書いてしまった場合に、論文不合格となるパターンが見られます。最近は行政問題的な視点も必要ですが、指定語句を法律的にしっかり書けることが必要となってきます。
一般受験生は現場を知らないので、逆に、素直に法律問題として書けていることが多いです。
法律問題の3つの出題パターン+29年度1つの新パターン
法律問題では、おおまかに3つの出題パターンに分けられます。
- 純粋な法律問題(法律制定・改正)
- 具体的な相談事例が書かれていて解決に導く法律問題
- 具体的な相談事例が書かれていないが自分で例示して解決に導く法律問題(指定語句に書くべき事例があげられていることが多い)
- (29年度新パターン)具体的な相談事例が書かれていないが自分で例示して解決に導く行政問題(指定語句に書くべき事例があげられていない)
1.純粋な法律問題
- 基本的に法律の説明をしていくことが中心になります。結論部分に消費生活センターや相談員としての考え方をプラスすればOKという感じです。下記に過去問をあげましたが、このパターンはなくなっていくと思います。
- このパターンが使われるとすれば、法律改正時に行政問題に使われる可能性があります。
平成27年度「消費者団体訴訟制度」
消費者契約法では消費者団体訴訟制度が定められているが、消費者被害の特質からこの制度が設けられた理由、この制度で適格消費者団体は事業者に対しどのような請求を行うことができるのか、差止えの対象が近年拡大されていることに触れつつ下記の指定語句をすべて使用して論じなさい。なお、文章中の指定語句の箇所には、わかるように必ず下線を引きなさい。
指定語句:少額多数被害、泣き寝入り、特定商取引法、景品表示法、勧誘行為
平成25年度
特定商取引法の改正により訪問購入に対する法規制が導入されました。規制の趣旨や内容において訪問販売に対する規制と共通する点と異なる点について、下記の指定語句をすべて使用して論じなさい。なお、文章中の指定語句の箇所には、わかるように必ず下線を引きなさい。
指定語句:飛び込み勧誘の禁止、 指定商品、 クーリング・オフ、引渡しの拒絶、 転売先の告知
- 指定語句の正確な知識が求められますので難易度が高いです。1つでも知らない言葉があると困りますし、行政問題とは違い、ある程度の正解があるので想像で書くのもきついです。
- ただし、先にも書きましたが、今後は純粋な法律問題はなくなるのではないかと考えています。なぜなら、「課題を考察するに当たっては、地方自治体における消費生活相談員の立場を考慮すること。」「消費生活相談員の職務の意義や内容等を踏まえて消費者問題を考察しているか。」という要件が提示されたため、より、現場に近い問題=具体的な相談事例を絡めた(行政問題の視点を含む)法律問題が出題されると考えられるからです。
- したがって、2と3のパターンが中心になると考えます。もし、1のパターンのテーマが出題されたとしても、2と3の要素を自分で入れ込んでいくことになると思います。
2.具体的な相談事例が書かれていて解決に導く法律問題
- 現場での実際の相談を想定した問題です。どのような法律を使って解決していくかということが問われています。問題文中に具体的な事例があげられています。
- その具体的な事例の中で、必要ならば、さらに具体的な事例を簡単にあげていくことになります。
平成26年度
「近年、高齢者を対象とした、いわゆる健康食品の送りつけ商法に関する相談が急増している。この商法の実態とその法的解決への道筋について、下記の指定語句をすべて使用して論じなさい。」
(指定語句:特定商取引法、 意思表示の合致、ネガティブ・オプション、代金引換配達、 電話勧誘販売)
- 健康食品の送りつけ商法という事例があらかじめ例示されています。したがって、指定語句には法律定義や法律用語などの暗記ものが多くなります。
平成24年度
「クレジット決済を利用してインターネットの有料サイトやショッピングの取引を行ったところ消費者トラブルが発生したという事案においてトラブルを解決するための問題点と課題について、下記の指定語句をすべて使用して論じなさい。」
(指定語句:国際提携カード、 マンスリークリア方式、 決済代行業者、加盟店調査、 抗弁の対抗)
- カードを使ったネットショッピングのトラブルという事例があらかじめ例示されています。したがって、指定語句には法律定義や法律用語などの暗記ものが多くなります。しかも指定語句が難しく難易度が高い問題です。
3.具体的な相談事例が書かれていないが自分で例示して解決に導く法律問題
- 現場での実際の相談を想定した問題です。どのような法律を使って解決していくかということが問われています。2と違い、問題文中に具体的な事例があげられておらず、ざっくりとした対象となっているので、自分で事例をあげる必要があります。ただし、指定語句にあげるべき事例があげられていますので、それを参考にします。つまり、暗記物の指定語句が少なくなるわけです。
平成28年度
「高齢者の消費者被害が増大しているが、その被害の事例と特徴を具体的に挙げ、それに対して消費生活センターはどう対応すべきか、その課題と対策について論じなさい。」
(指定語句:判断能力、訪問販売、次々販売、過量販売解除、高齢者見守りネットワーク)
- 高齢者被害という大きな枠の中から事例を自分で例示します
- そのときに重要なのは「指定語句」。指定語句にどのような事例を書くべきかが暗示されていることが多い。ここでは「訪問販売」「次々販売」。したがって、それに関する事例をあげる。自分の書きやすい事例を書くことができるので助かる面もあります。この場合、指定語句が実質的に減ったわけであり、解決するための法律の定義などの指定語句が少なくなるの少し楽になります。
- 指定語句を分類分けすると、「訪問販売」「次々販売」が具体的な事例をあげるための指定語句。「判断能力」が法律一般用語の指定語句。「過量販売解除」が法律定義用語の指定語句。「高齢者見守りネットワーク」が行政問題的な指定語句。したがって、もっとも正確な知識を問われるのが「過量販売解除」になります。比較的楽な問題になります。(指定用語の分類パターンは次に書いています)
- ちなみに、「次々販売」は一般的な商法の1つで、その中に「過量販売」に合致するものがあれば救済されるという位置づけですね。
(29年度新パターン)具体的な相談事例が書かれていないが自分で例示して解決に導く行政問題
- 法律問題に出そうなテーマでしたが、行政問題であるという新しいパターンでした。
- 指定語句を見ても具体的な事例はあげられていませんでしたので、指定語句に関連する事例を自分であげるということになります。
- 詳しくは、29年度論文試験解説を参考にしてください。
平成29年度
若年者の消費者トラブル・被害の現状・特徴とその防止・救済策について論じなさい。
(指定語句:知識・経験の不足、契約、成年年齢の引下げ、取消権、消費者教育)
法律問題の指定語句の3つのパターン
- 法律問題の指定語句には大まかに2種類(法律定義用語の指定語句・法律一般用語の指定語句)+1種類(行政問題的な指定語句)あります。
- 法律定義用語の指定語句
条文などに出てくる定義で答えが決まっているものです。言い換えも含まれます。
(例)ネガティブオプション、過量販売解除、飛び込み勧誘の禁止、クーリングオフ - 法律一般用語の指定語句
法律の定義ではないですが法律の一般用語として用いられているものです。こちらも答えが決まっています。
(例)マンスリークリア、判断能力 - 行政問題的な指定語句
行政問題的な用語で、対策や課題になります。行政問題の指定語句と同じく答えは1つではなくさまざまな書き方がある。
(例)高齢者見守りネットワーク - テーマによって、これらの指定語句の割合は違ってきます。
- したがって、法律問題の指定語句については、ある程度の正確な知識が求められます。そこがつらいところです。知らなかったら書けないですから(行政問題は知らなかっても想像できる)。
(例)平成24年度の法律問題でクレジット決済の問題が出ましたが、「マンスリークリア方式」という指定語句が出てきています。これは法律に定義されている用語ではなく、この法律を使っていく上での一般用語ですが、知らなかったら書けなくなります。択一試験での割賦販売法で必須知識なのですが、「ふっ」と頭から消えてしまってた場合は大変ですね。法律問題はこれが怖いです。ちなみに、「マンスリークリア方式」は翌月一括払いのことで私たちが普段クレジットカードを支払うときの支払い方法です。この年の指定用語はかなり難易度が高いものが集まりました。「指定語句:国際提携カード、 マンスリークリア方式、 決済代行業者、加盟店調査、 抗弁の対抗」 - (新規制定・改正された)法律を具体的に説明するための指定語句の例をあげると
平成25年度「訪問購入」(指定語句:飛び込み勧誘の禁止、 指定商品、 クーリング・オフ、引渡しの拒絶、 転売先の告知)
平成22年度「改正貸金業法」(指定語句:多重債務、 総量規制、 消費者教育、 加盟店管理、クレジットカード会員規約)
※法律定義ではなく、一般法律用語が多め - 具体的な相談事例を解決するための指定語句の例をあげると
平成26年度「高齢者への送りつけ商法」(指定語句:特定商取引法、 意思表示の合致、ネガティブ・オプション、代金引換配達、 電話勧誘販売)
29年度試験問題で、はじめて「指定語句」の使い方の説明が提示されました
- 指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
以前から指定語句の使い方で私自身も迷っていたことで、場合によっては単に語句として使ってもいいかなという思いもありました。過去の添削でもそのような添削の仕方をしたかもしれません。今回、明確に提示されたことからも、少なくとも指定語句の意味は前後に簡単な解説でもいいので書くようにしてください。なお、重要な論点となる場合はしっかり書いてください。
ただし、指定語句を「~とは~である」という説明風な書き方ではなく、流れのある論文の中で自然に使用する必要があります。それが読みやすいきれいな論文かどうかであり、添削でも重視しているところです。
具体的な事例問題というのは、PIO-NETにきちんと入力できているかが試されているのでは?
- 相談現場では受け付けた相談をPIO-NETというデータベースに入力して、情報共有しています。
- 一般の人はあまり耳にしないと思いますが、「この入力内容がきちんと書かれていない」という問題があります。
- 消費生活相談員に必要とされる能力に「文章作成力」があります。これが論文試験で試されているということでしょう。
つまり、PIO-NETの事例を読めば、どのように解決していったのかが誰でもわかるような書き方をする必要があるということですね。
それが、法律問題での具体的な相談事例の解決方法の論述につながっていると思います。