1. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
① 消費者基本法は、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」を消費者政策の基本理念とし、国、地方公共団体において講じるべき施策及び事業者の責務等をまとめて明らかにしている。
② 消費者基本法では、事業者の責務として、個々の消費者の苦情を適切に処理することは規定されているが、消費者の苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制を整備することまでは定められていない。
③ 消費者基本計画は、消費者政策会議が消費者委員会の意見を聴いて案を作成し、閣議決定されたうえで、公表される。
④ 消費者庁は、特定商品等の預託等取引契約に関する法律(預託法)、景品表示法、個人情報保護法などを所管している。
解説
問題1① 消費者基本法(第1条 目的)A★★☆
28年度試験は条文そのままでしたが、今回は要約しているという感じです。消費者施策の基本的な原則ですので、相談員として必ず知っておく必要があります。ということで、①は正解です。
平成28年度問題1① 消費者基本法(第1条 目的)
① 消費者基本法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定めている。
消費者基本法第1条のポイント
- 消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差
ポイント①ここが消費者センターの存在理由であり、消費者を守る多くの法律がある理由です。ちなみに、事業者間の取引は、たとえ知識量の違いがあったとしても対等な立場ですので民法で対応するしかありません。実は事業者も悪質事業者からの被害を受けているのですが、消費者のように救済制度がないので、泣きを見ている事業者も多いです。
ポイント②面接試験でもよく問われるフレーズです。なぜ、消費者センターは消費者からの相談を受けているのか、消費者の味方をするのか?また、論文試験でも良く使うフレーズです。 - 消費者の権利の尊重及びその自立の支援
消費者保護基本法では消費者は保護すべき立場だったのが、権利を尊重するかわりに自立しなさいよ、という大きな方針転換をしました。穴埋めでも必須ですね。
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。
問題1② 消費者基本法(第5条 事業者の責務等)A★
ラッキー問題です。国語力で十分正解できます。相談員試験には、このような簡単な問題も出ますので取りこぼさないようにしてください。
「~だが、~までは有していない」という全否定形式は不正解フレーズです。
今回は内容を読んでも、体制を整備するのは当然です。
『消費者基本法第五条四 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。』
したがって、②は不正解です。
そのほかの解き方ポイント
ちなみに、「義務」と「努力義務」を問題ににしていることがあります。ちょっと悩んでしまうので要注意です。今回の問題では「体制の整備等に努め」なので、努力義務になります。「体制を整備しなければならない」だったら義務になります。体制というのが具体的に示されていないですし、整備等となっていますので努力義務という感じですね。
また、第5条第2項は「義務」ではなく「努力義務」になります。努力に義務がついてますが、努力することを義務付けるということですので必ずやりなさいというわけではありません。
例えば、消費生活センターの設置は、都道府県が「義務」なのに対して、市町村は「努力義務」となっています。
(事業者の責務等)
第五条 事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
二 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
三 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
四 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
2 事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない。
問題1③ 消費者基本計画 BC
消費者基本計画は、「誰が何をどのようにどうするのか」という関係が少しややこしく、そこをついてくる意地悪問題が出題されることがありますので、暗記できればいいのですが、なかなかそういうわけにはいかないのでやや難問になります。日本語的に正解を導き出したら、直感的に正解かどうかを判断できるのであればそれでもOKだと思います。
チェックポイントはマーカーした部分ですので、ややこしいですね。
『消費者基本計画は、消費者政策会議が消費者委員会の意見を聴いて案を作成し、閣議決定されたうえで、公表される。』
- 消費者基本法第27条で消費者政策会議の事務として消費者基本計画の案を作成することを定めています。
- 同じく、消費者基本計画の案を作成するときには、消費者委員会の意見を聴かなければならないと定めています。
- 消費者基本法第9条で、閣議の決定と公表について定めています。
ということで、③は正解となります。
(消費者基本計画)
第九条 政府は、消費者政策の計画的な推進を図るため、消費者政策の推進に関する基本的な計画(以下「消費者基本計画」という。)を定めなければならない。
2 消費者基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 長期的に講ずべき消費者政策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、消費者政策の計画的な推進を図るために必要な事項
3 内閣総理大臣は、消費者基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があつたときは、遅滞なく、消費者基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、消費者基本計画の変更について準用する。(消費者政策会議)
第二十七条 内閣府に、消費者政策会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 消費者基本計画の案を作成すること。
二 前号に掲げるもののほか、消費者政策の推進に関する基本的事項の企画に関して審議するとともに、消費者政策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視すること。
3 会議は、次に掲げる場合には、消費者委員会の意見を聴かなければならない。
一 消費者基本計画の案を作成しようとするとき。
二 前項第二号の検証、評価及び監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとするとき。第二十八条 会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。
3 委員は、次に掲げる者をもつて充てる。
一 内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第十一条の二 の規定により置かれた特命担当大臣
二 内閣官房長官、関係行政機関の長及び内閣府設置法第九条第一項 に規定する特命担当大臣(前号の特命担当大臣を除く。)のうちから、内閣総理大臣が指定する者
4 会議に、幹事を置く。
5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
消費者基本計画 平成27年3月24日 閣議決定
消費者庁HP
消費者庁ホーム > 政策 > 政策一覧(消費者庁のしごと) > 消費者政策 > 消費者基本計画等
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/basic_plan/
35-36ページです。1回だけでも読んでおいてくださいね。
第5章 計画の効果的な実施1 工程表の作成
本計画を着実に推進するため、本計画に基づいて関係府省庁等が講ずべき具体的施策について、本計画の対象期間中の取組予定を示した工程表を、消費者委員会の意見を聴取した上で、消費者政策会議において策定する。
工程表では、各府省庁等の間で連携が必要な施策についてのそれらの関係を明確にするとともに、効果把握のための指標として、本計画に示したKPIを可能な限り施策ごとに更に具体化するものとする。
各府省庁等は、工程表に示された施策を着実かつ積極的に進めるものとする。2 計画の検証・評価・監視
本計画を実効性のあるものとするためには、本計画に基づく施策の実施状況については、十分な検証・評価・監視を行うことが重要である。
そのため、消費者基本法に基づき、毎年度、消費者庁が関係府省庁等の協力を得て、本計画に基づく施策の実施状況について報告を取りまとめ、政府として国会に提出する。
消費者委員会は、消費者行政全般に対する監視機能を最大限に発揮しつつ、本計画に基づく施策の実施状況について、随時確認し、KPIも含めて検証・評価・監視を行う。
消費者政策会議は、施策の実施状況の検証・評価・監視を行い、消費者委員会の意見を聴取した上で、1年に1回は工程表を改定し、必要な施策の追加・拡充や整理、実施状況に応じた施策の実施時期の見直し(前倒しを含む。)等を行う。
さらに、施策の実施状況の検証・評価・監視において、消費者を取り巻く環境や課題、取り組むべき施策の内容等に大きな変化があると考えられる場合には、消費者委員会の意見を聴取した上で、必要に応じて本計画の改定を行う。
なお、施策の実施状況の検証・評価・監視を行うに際しては、消費者団体、事業者団体、地方公共団体等へのアンケートやヒアリング、意見交換会等により意見を聴取するほか、消費者等からの意見募集を行い、消費者等の意見の的確な反映を図る。※KPI・・・定量的に評価するための指標
問題1④ 消費者庁の所管法律 B★
消費者庁の所管法律は頻出問題です。ただし、数が多いので暗記問題的なところもあり、また、悩ましいところをついてくるので、やや難問の分野になっています。一般常識で推測したりしますが、今回の問題は28年度試験と同じ論点ですので、28年度の過去問対策をしていれば間違うことのないラッキー問題です。
28年度問題1④
消費者庁は、さまざまな法律を所管しているが、その中には、「製造物責任法」、「個人情報保護法」、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(消費者裁判手続特例法)がある。
「個人情報保護法」は消費者庁の所管から外れて個人情報保護委員会が所管することになりました。したがって、④は不正解です。
今は削除されていますが28年度の解説記事です。
個人情報保護法の改正に伴い、平成28年1月1日より、個人情報保護法の所管が、消費者庁から個人情報保護委員会に移りました。また、改正個人情報保護法の全面施行時には、現在、各主務大臣が保有している個人情報保護法に関する勧告・命令等の権限が個人情報保護委員会に一元化されます。
なお、分からないときに推測するに当たっては、消費者庁設置当初の考え方としての「所管の対象= 消費者利益の擁護及び増進に関わる主要な法律(消費者に身近な法律)を所管」となっていることを参考にしてください。
残りの2つの法律ですが、景品表示法が消費者庁の所管になるのはわかると思いますが、預託法はあまり聞かない法律ですので難しいです。事件をイメージして覚えてください。
社会問題となったジャパンライフの事件です。健康磁気治療器を購入して、ジャパンライフに預けて第3者にレンタルして、そのレンタル料が収益になるという「預託契約」をしていました。また、マルチ商法(連鎖販売)でも行政処分されています。なお、ジャパンライフの事件は統計問題や最近の事件等で出題される可能性が高いです。
さて、例年、所管法律を一覧にしています。
所管する法律一覧
消費者庁設置当初の考え方としては
所管の対象= 消費者利益の擁護及び増進に関わる主要な法律(消費者に身近な法律)を所管
となっています。
http://www.consumer.go.jp/seisaku/kaigi/higaikaihuku/file7/shiryou1-7.pdf(4ページ)
消費者庁HP
ホーム > 組織・制度について > 所管の法令等 > 法律一覧
http://www.caa.go.jp/soshiki/legal/index1.html
法律一覧
- 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(平成25年法律第96号)
- 食品表示法(平成25年法律第70号)
- 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成25年法律第41号)
- 消費者教育の推進に関する法律(平成24年法律第61号)
- 消費者安全法(平成21年法律第50号)
- 消費者庁及び消費者委員会設置法(平成21年法律第48号)
- 米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(平成21年法律第26号)
- 公益通報者保護法(平成16年法律第122号)
- 食品安全基本法(平成15年法律第48号)
- 独立行政法人国民生活センター法(平成14年法律第123号)
- 健康増進法(平成14年法律第103号)
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)
- 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成13年法律第95号)
- 金融商品の販売等に関する法律(平成12年法律第101号)
- 消費者契約法(平成12年法律第61号)
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)
- 製造物責任法(平成6年法律第85号)
- 特定商品等の預託等取引契約に関する法律(昭和61年法律第62号)
- 貸金業法(昭和58年法律第32号)
- 無限連鎖講の防止に関する法律(昭和53年法律第101号)
- 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)
- 国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)
- 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和48年法律第112号)
- 生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和48年法律第48号)
- 消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)
- 消費者基本法(昭和43年法律第78号)
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)
- 家庭用品品質表示法(昭和37年法律第104号)
- 割賦販売法(昭和36年法律第159号)
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号)
- 旅行業法(昭和27年法律第239号)
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)
- 農林物資の規格化等に関する法律(昭和25年法律第175号)
- 食品衛生法(昭和22年法律第233号)
- 物価統制令(昭和21年勅令第118号)
※以前は所管している法律の数などが出題されたことがあるので、ざっくりした数を覚えておいてください。