1. 次の各文章が、正しければ○、誤っていれば×を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

⑤ 消費者委員会の所掌事務には、消費者教育の推進に関する法律に基づき、消費者教育推進会議を開催し、消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報の交換及び調整を行うことが含まれている。

⑥ 国民生活センターでは、「全国消費生活情報ネットワークシステム」(PIO-NET)を通じて、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談情報を収集している。収集された情報は、各消費生活センター等での相談処理に活用されるとともに、国や地方公共団体の消費者政策の企画・立案及び国民への情報提供、行政機関による法執行等に活用されている。

⑦ 都道府県は、消費者安全法の要件を満たす消費生活センターを設置しなければならないが、市町村は、必要に応じ、同法の要件を満たす消費生活センターを設置するよう努めなければならないとされている。

⑧ 消費者安全法上、市町村は、事業者に対する消費者からの苦情相談への対応や苦情処理のためのあっせんを行うこととされている。他方、都道府県は、それらのうち、主として各市町村の区域を超えた広域的な見地を必要とするものを行うこととされている。

解説

問題1⑤ 消費者委員会の事務(消費者教育) BC

⑤ 消費者委員会の所掌事務には、消費者教育の推進に関する法律に基づき、消費者教育推進会議を開催し、消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報の交換及び調整を行うことが含まれている。

読みにくい文章になっており、正解のような感じがしていますが、そうではないという少し難問です。

一番単純に考えれば、消費者教育の推進に関する法律の所管は消費者委員会ではなく、消費者庁であるということです。消費者委員会は消費者基本計画について意見をするのと同じように、消費者教育の基本方針について意見をする役割です。したがって、⑤は不正解です。消費者教育推進会議は消費者庁に置かれているので消費者庁の事務となります。消費者委員会は監視役と覚えておけばわかりやすいかもしれません。

消費者委員会の事務として該当しそうなところは、消費者庁及び消費者委員会設置法第六条で「消費者教育の推進に関する法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること」となっています。

消費者教育の推進に関する法律第九条5では「内閣総理大臣及び文部科学大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、消費者教育推進会議及び消費者委員会の意見を聴くほか、消費者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。」となっています。消費者委員会の言葉が出てきているのはここだけです。

  • 消費者庁と消費者委員会の所掌事務は「消費者庁及び消費者委員会設置法」という消費者庁を設立したときの法律に定められています。
  • の事務として、第四条十三の二 消費者教育の推進に関する法律(平成二十四年法律第六十一号)第九条第一項に規定する消費者教育の推進に関する基本的な方針の策定及び推進に関すること
  • 第五条の二に審議会である「消費者教育推進会議」をおくことになっています。また、第五条の四で「消費者教育推進会議」は「消費者教育の推進に関する法律」によるものとなっています。
  • 消費者教育の推進に関する法律第十九条には「消費者庁に、消費者教育推進会議を置く。」と定められ、「消費者教育推進会議」の事務のひとつとして、今回の問題になっている「消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して消費者教育推進会議の委員相互の情報の交換及び調整を行うこと。」がそのまま書かれています。

なお、消費者教育推進法は消費者庁よりも後に作られた法律です。今回を機会に、「消費者教育推進会議」と「消費者教育の推進に関する基本的な方針」も確認しておきましょう。

消費者庁及び消費者委員会設置法

(所掌事務)
第四条 消費者庁は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務(第六条第二項に規定する事務を除く。)をつかさどる。
十三の二 消費者教育の推進に関する法律(平成二十四年法律第六十一号)第九条第一項に規定する消費者教育の推進に関する基本的な方針の策定及び推進に関すること

(設置)
第五条の二 別に法律で定めるところにより消費者庁に置かれる審議会等は、次のとおりとする。
消費者安全調査委員会
消費者教育推進会議
(消費者教育推進会議)
第五条の四 消費者教育推進会議については、消費者教育の推進に関する法律(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。

第三章 消費者委員会
(設置)
第六条 内閣府に、消費者委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 次に掲げる重要事項に関し、自ら調査審議し、必要と認められる事項を内閣総理大臣、関係各大臣又は長官に建議すること。
イ 消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策に関する重要事項
ロ 消費者の利益の擁護及び増進を図る上で必要な環境の整備に関する基本的な政策に関する重要事項
ハ 景品類等の適正化による商品及び役務の消費者による自主的かつ合理的な選択の確保に関する重要事項
ニ 物価に関する基本的な政策に関する重要事項
ホ 公益通報者の保護に関する基本的な政策に関する重要事項
ヘ 消費生活の動向に関する総合的な調査に関する重要事項
二 内閣総理大臣、関係各大臣又は長官の諮問に応じ、前号に規定する重要事項に関し、調査審議すること。
三 消費者安全法第四十三条の規定により、内閣総理大臣に対し、必要な勧告をし、これに基づき講じた措置について報告を求めること。
四 消費者基本法、消費者安全法(第四十三条を除く。)、割賦販売法、特定商取引に関する法律、特定商品等の預託等取引契約に関する法律、食品安全基本法、消費者教育の推進に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法、食品表示法、食品衛生法、農林物資の規格化等に関する法律、家庭用品品質表示法、住宅の品質確保の促進等に関する法律及び国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。

消費者教育の推進に関する法律

(消費者教育推進会議)
第十九条 消費者庁に、消費者教育推進会議を置く。
2 消費者教育推進会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して消費者教育推進会議の委員相互の情報の交換及び調整を行うこと。
二 基本方針に関し、第九条第五項(同条第八項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
3 消費者教育推進会議の委員は、消費者、事業者及び教育関係者、消費者団体、事業者団体その他の関係団体を代表する者、学識経験を有する者並びに関係行政機関及び関係する独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
4 前二項に定めるもののほか、消費者教育推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

第九条 政府は、消費者教育の推進に関する基本的な方針(以下この章及び第四章において「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 消費者教育の推進の意義及び基本的な方向に関する事項
二 消費者教育の推進の内容に関する事項
三 関連する他の消費者政策との連携に関する基本的な事項
四 その他消費者教育の推進に関する重要事項
3 基本方針は、消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号)第九条第一項に規定する消費者基本計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、消費者教育推進会議及び消費者委員会の意見を聴くほか、消費者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
6 内閣総理大臣及び文部科学大臣は、第四項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
7 政府は、消費生活を取り巻く環境の変化を勘案し、並びに消費者教育の推進に関する施策の実施の状況についての調査、分析及び評価を踏まえ、おおむね五年ごとに基本方針に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
8 第四項から第六項までの規定は、基本方針の変更について準用する。

問題1⑥ 国民生活センター(PIO-NET) A☆

⑥ 国民生活センターでは、「全国消費生活情報ネットワークシステム」(PIO-NET)を通じて、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談情報を収集している。収集された情報は、各消費生活センター等での相談処理に活用されるとともに、国や地方公共団体の消費者政策の企画・立案及び国民への情報提供、行政機関による法執行等に活用されている。

この問題は、相談員を目指すなら当然知っているよね、という確認問題です。実務研修のようなものです。ということで、⑥は正解です。

国民生活センターのホームページにPIO-NETについて解説されていますので、一般受験生は必ず確認しておいてください。

国民生活センターHP
トップページ > 国民生活センターについて > 国民生活センターの紹介 > 業務案内 > 相談情報の収集・管理 > PIO-NETの紹介[2016年6月1日:更新]
http://www.kokusen.go.jp/pionet/

PIO-NETの紹介
・PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、消費者から消費生活センターに寄せられる消費生活に関する苦情相談情報(消費生活相談情報)の収集を行っているシステムです。

PIO-NETとは
・自治体は、国民の消費生活(商品購入・契約等)に関する苦情相談を受け付ける相談窓口(消費生活センター)を設置し、消費生活相談員による問題解決の支援(相談処理)を行っています。消費生活相談員が、消費者(相談者)から苦情相談を受けたときは、相談者から「聞き取り」を行い、相談の内容に応じた苦情の解決のための「相談処理」を行います。「聞き取り」から「相談処理」の過程はすべて記録され、全国の消費生活センターには、このような苦情相談の記録が蓄積されます。この苦情相談の記録を収集して、消費者行政に役立てることを目的として構築されたのが、「全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET※)」です。情報の内容は、苦情相談の記録を整理した要約です。※ Practical Living Information Online Network System

PIO-NETの目的
行政機関による消費者被害の未然防止・拡大防止のための、法執行への活用など
国・地方公共団体の消費者政策の企画・立案及び国民・住民への情報提供
自治体(消費生活センター)の消費生活相談業務に対する支援

PIO-NETの特徴
・わが国の消費者行政の基礎情報(国民共有の財産)
・個々の相談情報は秘匿性が高い(プライバシーに関わる情報)

問題1⑦ 消費者安全法(消費生活センターの設置義務) A★★

⑦ 都道府県は、消費者安全法の要件を満たす消費生活センターを設置しなければならないが、市町村は、必要に応じ、同法の要件を満たす消費生活センターを設置するよう努めなければならないとされている。

『消費生活センターの設置について、都道府県は義務、市町村は努力義務』というのは過去何度も繰り返し出題されている頻出問題であり、ラッキー問題です。したがって、⑦は正解です。

ただし、正誤×選択では、このあとに、書かれる3つめの下線文章が正解かどうかを判断する問題が多く、悩ましいところを付いてきます。

消費者安全法

(消費生活センターの設置)
第十条 都道府県は、第八条第一項各号に掲げる事務を行うため、次に掲げる要件に該当する施設又は機関を設置しなければならない。
一 消費生活相談員を第八条第一項第二号イ及びロに掲げる事務に従事させるものであること。
二 第八条第一項各号に掲げる事務の効率的な実施のために適切な電子情報処理組織その他の設備を備えているものであること。
三 その他第八条第一項各号に掲げる事務を適切に行うために必要なものとして政令で定める基準に適合するものであること。
2 市町村は、必要に応じ、第八条第二項各号に掲げる事務を行うため、次に掲げる要件に該当する施設又は機関を設置するよう努めなければならない。
一 消費生活相談員を第八条第二項第一号及び第二号に掲げる事務に従事させるものであること。
二 第八条第二項各号に掲げる事務の効率的な実施のために適切な電子情報処理組織その他の設備を備えているものであること。
三 その他第八条第二項各号に掲げる事務を適切に行うために必要なものとして政令で定める基準に適合するものであること。
3 前項の規定により同項の施設又は機関を設置する市町村以外の市町村は、第八条第二項第一号及び第二号に掲げる事務に従事させるため、消費生活相談員を置くよう努めなければならない。

問題1⑧ 消費者安全法(消費生活センターの管轄地域) AB

⑧ 消費者安全法上、市町村は、事業者に対する消費者からの苦情相談への対応や苦情処理のためのあっせんを行うこととされている。他方、都道府県は、それらのうち、主として各市町村の区域を超えた広域的な見地を必要とするものを行うこととされている。

市町村と都道府県の役割分担です。読んでいても違和感はないと思います。それぞれの事務は消費者安全法に列挙されています。「都道府県は市町村の区域を越えて広域的に」を覚えてください。したがって、⑧は正解です。

消費者安全法

(都道府県及び市町村による消費生活相談等の事務の実施)
第八条 都道府県は、次に掲げる事務を行うものとする。
一 次項各号に掲げる市町村の事務の実施に関し、市町村相互間の連絡調整及び市町村に対する必要な助言、協力、情報の提供その他の援助を行うこと。
二 消費者安全の確保に関し、主として次に掲げる事務を行うこと。
イ 事業者に対する消費者からの苦情に係る相談のうち、その対応に各市町村の区域を超えた広域的な見地を必要とするものに応じること
ロ 事業者に対する消費者からの苦情の処理のためのあっせんのうち、その実施に各市町村の区域を超えた広域的な見地を必要とするものを行うこと
ハ 消費者事故等の状況及び動向を把握するために必要な調査又は分析であって、専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。
ニ 各市町村の区域を超えた広域的な見地から、消費者安全の確保のために必要な情報を収集し、及び住民に対し提供すること。
三 市町村との間で消費者事故等の発生に関する情報を交換すること。
四 消費者安全の確保に関し、関係機関との連絡調整を行うこと。
五 前各号に掲げる事務に附帯する事務を行うこと。
2 市町村は、次に掲げる事務を行うものとする。
一 消費者安全の確保に関し、事業者に対する消費者からの苦情に係る相談に応じること
二 消費者安全の確保に関し、事業者に対する消費者からの苦情の処理のためのあっせんを行うこと
三 消費者安全の確保のために必要な情報を収集し、及び住民に対し提供すること。
四 都道府県との間で消費者事故等の発生に関する情報を交換すること。
五 消費者安全の確保に関し、関係機関との連絡調整を行うこと。
六 前各号に掲げる事務に附帯する事務を行うこと。
3 都道府県は、市町村が前項各号に掲げる事務を他の市町村と共同して処理しようとする場合又は他の市町村に委託しようとする場合は、関係市町村の求めに応じ、市町村相互間における必要な調整を行うことができる。
4 第一項各号に掲げる事務に従事する都道府県の職員若しくはその職にあった者又は第二項各号に掲げる事務に従事する市町村の職員若しくはその職にあった者は、当該事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

【正答】
⑤×、⑥○、⑦○、⑧○

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