「消費生活年報2017」から「2016年度の消費生活相談の傾向と特徴」を抜粋紹介したいところですが、昨年度は「2015年度の消費生活相談の傾向と特徴」として冒頭にコンパクトにまとめた記事があったのですが、今回はありませんでした。したがって、特別に読んでおくほどの記事はありません。ただし、旧試験のように細かい統計資料が出たときには8月公表の概要版には書かれていないこと(年代別の特徴など)も出たりしますが、時間があれば読んでもいいと思います。ただし、8月公表の概要版だけは10分ほどで読めますので確認しておいてください。

「消費生活年報」は国民生活センターのHPで公表されています

国民生活センターHP
トップページ > 研修・資料・相談員資格 > 消費生活年報
http://www.kokusen.go.jp/nenpou/index.html

(参考)平成29年度試験対策 相談統計 2015年度の消費生活相談の傾向と特徴(消費生活年報2016より)

◆ 相談件数は2年ぶりに減少するも依然として高水準

2015年度に全国の消費生活センター等が受け付けた相談件数は、約92.6万件であった。2013年度以降相談件数は増加していたが、2015年度は2年ぶりに減少に転じた。依然として最も多い相談であるものの「アダルト情報サイト」に関する相談が2014年度に比べて2万件近く減少したこと、また、立場の違う複数の業者が登場し、架空の投資話などを電話で勧誘する“劇場型勧誘”(買え買え詐欺)が多くみられる「ファンド型投資商品」「公社債」「株」などの相談が、高齢者層を中心に減少したこと、さらには、2014年度に急増したバイナリーオプション取引に関する相談が減少したことなどによると考えられる。
一方、利用した覚えのないサイト利用料の請求など「架空請求」の相談は、2012年度以降増加傾向が続いている。また、「還付金詐欺」は、2011年度からの5年間で10倍以上も増加した。

◆ 光回線サービスの卸売りに関する勧誘トラブルが急増

2015年2月1日より、NTT東西(東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社)が光回線サービスの卸売り(光卸し)を開始したことにより、多くの事業者が、卸売りを受けた光回線とプロバイダーや携帯電話等を組み合わせた独自のサービスを、さまざまな料金や契約形態で消費者に提供するようになった。消費者にとっては契約先の選択肢が増えた一方、卸売りを受けた事業者の勧誘時の説明不足などに伴い、全国の消費生活センター等には、「現在契約している大手電話会社だと思って話を聞いたら、関係ない事業者との新たな契約になっていた」「知らないオプション契約をさせられて今より高くなった」などの事例や、消費者が光卸しについて十分な理解がないまま契約してトラブルになってしまった事例が多数寄せられ、2015年度に入り急増し、相談件数は1万件を超えた。
そこで、国民生活センターでは、消費者に契約内容を十分確認するようになどアドバイスするとともに、総務省には電気通信事業者等に対し、光卸しの販売勧誘等を行う際は、契約内容、特に注意点などについて説明を徹底するよう指導することなど、また、事業者団体には契約関係について十分説明を行うよう加盟事業者に周知徹底することなどを要望した。
この他、スマートフォンやモバイルデータ通信も勧誘時の説明などが分かりにくく、最近では契約内容が難しいという高齢者からの相談の割合も高くなりつつある。
こうした実態を踏まえ、電気通信事業法が2015年5月に改正され(施行は2016年5月)、契約後の書面の交付義務、初期契約解除制度、不実告知等の禁止、勧誘継続行為の禁止、代理店に対する指導などの措置義務が新たに導入された。法施行後の消費生活相談の動向を注視したい。

◆ 支払い手段のキャッシュレス化が進み、プリペイドカード詐欺被害が拡大

クレジットカードやプリペイドカード、電子マネーなどキャッシュレスで支払いをする場面が多くなってきている。しかし、現金不要で、インターネット上でもすぐ買い物できるなどの利便性・効率性、あるいは、その匿名性を悪用した業者による消費者トラブルも増加している。
特に、最近では、「有料サイトの料金を支払うために、業者に指示されるままにプリペイドカードを購入し、カードに記載されている番号を伝えてしまった」などプリペイドカードの記載番号を不正に取得しようとする“詐欺業者”とのトラブルが目立ってきた。こうした最近のサーバ型プリペイドカード(発行会社のサーバで購入した金額(価値)を管理する)の場合、カードに記載された番号を相手に伝えることで購入した価値をすべて相手に渡してしまうことになる。後でだまされたと気づいても、いったん相手に渡した価値を取り戻すことは非常に困難である。
そこで、国民生活センターでは、2015年3月から5月を「プリカ詐欺撲滅強化期間」として、一般社団法人日本資金決済業協会とともに啓発活動を行った。また、その後も消費者庁や金融庁、警察庁とも連携し、啓発グッズなどを作成、全国のコンビニエンスストアなどにも注意喚起のための協力を呼びかけた。コンビニエンスストアの店員が不審な購買行動をする顧客に声かけするなど被害防止のための取り組みの輪が広がっている。

◆ マイナンバー制度の開始、電力の自由化とともに便乗商法も次々に

マイナンバー(社会保障・税番号)制度が始まり、2015年10月からはマイナンバーの通知が開始された。新制度に乗じ、不正な勧誘や個人情報の取得を行おうとする電話や訪問などに関する相談が寄せられた。マイナンバー制度やその通知を口実に資産状況や口座などの情報を聞き出したり、何らかの名目で現金を要求したりするもので、中にはお金を支払ってしまった例もある。
また、電力の小売全面自由化が2016年4月に始まったことから、それを口実にした太陽光発電システムやプロパンガス、蓄電池などの勧誘をする便乗商法が見られるようになってきた。また、2016年に入ってからは参入を予定しているさまざまな事業者から執しつよう拗な勧誘をされたなどの相談も寄せられるようになり、相談件数は自由化がスタートする前に1,000件近くに上った。
国民生活センターでは、2016年2月に経済産業省電力・ガス取引監視等委員会と「電力小売全面自由化の実施に伴う消費者トラブル防止施策強化のための連携協定」を締結した。当センターと他の行政機関とのこうした連携協定は取引分野では初めてのことである。

◆ 海外の詐欺的事業者とのトラブルが急増

2011年11月から実証調査の一環として開設・運営されてきた「消費者庁越境消費者センター」は、2015年4月から国民生活センターに移管され、国民生活センター越境消費者センター(CCJ)として、越境消費者トラブルについて恒常的に対応することとなった。
2015年度にCCJに寄せられた相談件数は4,299件で、そのほとんどがオンラインショッピング(電子商取引)に関するものである。そのなかでもSNSの広告を見て化粧品を申し込んだが、注文した数倍の金額を請求されたという相談が急増した。海外の事業者とは気づかずに気軽に契約した結果、事業者と連絡が取れない、言葉の壁もあって、解約のやり取りができないなどである。相手が海外なのでトラブルが起きても自力で解決することは難しい。今後もトラブルの増加が予想され、トラブル解決機関としてCCJの役割がますます求められよう。