論文試験
要件(注意書きの変更)
「記載」が「記入」に変更したなどの細かな修正は別として、大きな修正があります。
- ②文字数制限で、「1行の途中で終わっても1行とみなす」ことですが、これは、1000字の最後の50行目が途中で終わっていた場合に、1000字以上とみなしてもらえるのかどうかということで、昨年、勉強部屋の会員が問い合わせてOKだった話です。それが明確に表現されています。50行目の途中でも50行目まで書いたことになり、1000字以上の要件を満たします。
49行目までで終わっていたら、残念ながら採点対象外の可能性が高いですね。点数開示で確認できると思います。文字数が不足して、採点対象外になった受験生の報告もありましたので、十分に気をつけてください。どうしても足らなくなったら、相談員としての心がけをテーマにあわせて追加すればいいと思います。 - ③指定語句が複数回出たときはすべてに下線を引かなければならなかったのが、最初に出てきた1回目だけでOKになりました。繰り返し使う指定語句に線を引くのはミスが起こりがちでしたのでよい変更点かもしれません。
複数引いてしまった場合に減点対象になるかはわかりません。また、指定語句の書き間違い(29年度試験でいえば「成年年齢」を「成人年齢」、「引下げ」を「引き下げ」など)は採点対象外という鬼のようなことはしないと信じていますが減点対象になる可能性はあるかもしれません。 - ④「消費生活相談員の立場を」というのが、「消費生活センター、消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を」に変わりました。基本原則は変わりませんが、少し視野が広くなった感じですね。行政職員の受験が増えている(すすめている?)ことも背景にあるのかもしれません。また「立場」が「役割」に変わっているというのもあります。どちらにしても、行政施策や消費生活センターの存在をネガティブにとらえてはいけないということです。
変更前後
変更前
次のテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解答用紙に記入しなさい。以下の場合は、いずれも採点の対象外となる。
①「選択式及び正誤式筆記試験」の得点が基準を超えていない場合
②文字数制限が守られていない場合
③受験番号の記載がない場合
④選択した論文テーマ番号の記載がない場合
1. 以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2. 指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3. 文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。
4. 課題を考察するに当たっては、地方自治体における消費生活相談員の立場を考慮すること。
変更後
次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解答用紙に記入しなさい。以下の場合は、いずれも採点の対象外となる。
①「選択式及び正誤式筆記試験」の得点が基準を超えていない場合
②文字数制限が守られていない場合
※文字数の数え方は、文字が記入されている行ごとに20字として数える。一行の途中までしか文字が書かれていなくても、20字として数える。
③受験番号・氏名の記載入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合
④選択した論文テーマ番号の記載入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合
1. 以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2. 指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3. 文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4. 課題を考察するに当たっては、地方自治体における消費生活センター、消費生活相談窓口、消費生活相談員等の立場役割を考慮すること。
論文試験問題
次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解答用紙に記入しなさい。以下の場合は、いずれも採点の対象外となる。
①「選択式及び正誤式筆記試験」の得点が基準を超えていない場合
②文字数制限が守られていない場合
※文字数の数え方は、文字が記入されている行ごとに20字として数える。一行の途中までしか文字が書かれていなくても、20字として数える。
③受験番号・氏名の記入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合
④選択した論文テーマ番号の記入がない場合、もしくは正しく記入されていない場合
【テーマ1】
1. 以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2. 指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3. 文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4. 消費生活センター、消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。
【テーマ2】
1. 以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2. 指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。
3. 文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4. 消費生活センター、消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。
論文解説・総評
テーマ1は「若年者の消費者トラブル」、テーマ2は「インターネット通信販売の消費者トラブル」と命名しました。
行政問題か法律問題か
この2つに区分するのが賛否が分かれるところですが、勉強部屋では2つに区分しています。
行政問題は、政策的なことを論じるもので、さまざまな視点から書くことができ、何でもありになるので書きやすいです。テーマは現場を知らなければ書けないものから、今回のように一般受験生でも書けるものなど、出題年によって難易度が異なります。現職向けの問題です。指定語句を見ると、政策的な語句や、一般用語などが入っており、法律的な用語が少ないので判断できると思います。現職は、こちらを選ぶほうが無難です。
また、29年度試験のように「若年者の消費者トラブル」を法律問題として書いてしまうかもしれませんが、指定語句を見てわかるように、行政問題になっています。法律問題的な行政問題ですね。
法律問題は2つのパターンがあって、1つは法律制定や改正などがあったときに、その概要を論じるもので、純粋な法律問題です。過去問を見ればわかると思います。
もう1つは行政問題的な法律問題です。これは、現場で見られる相談事例をあげて具体的に解決方法を具体的な法律を適用させて書くというもので、最近はこのパターンが多くなっています。「送りつけ商法」「次々販売」「ネット通販」などオーソドックスな事例が出題されます。
特徴は指定語句に条文等に出てくるような法律用語が列挙されることです。知らなければ書けないというもので、毎年1つぐらい難易度の高い指定語句があります。また、具体的な解決策として、法律に基づくアドバイスをしていくことになるので、どんな条項を使って解決するのかを示す必要があります。現職が行政問題的に政策的なことを書いてしまって不合格になるパターンが出ています。こちらは、あくまでも法律用語を正確に適用させて解決方法を助言するというのが中心になります。
最近の傾向として、行政問題が「法律問題的な行政問題」であったり、法律問題が「行政問題的な法律問題」であったりするので、同じテーマのようでも少し書き方が変わります。ごっちゃになってしまうと論点をはずすことになりますのでお気をつけください。
【テーマ1】 若年者の消費者トラブル
今回のテーマ1は行政問題
「具体的な事例をあげる」「解決方法をあげる」というのではなく、指定語句を見ても、細かな法律用語がないことから、法律問題的な要素があるものの行政問題です。
勉強部屋で課題にした事例は
でしたが、こちらは、事例をあげて解決方法を論じるという法律問題でした。序論で若者の消費者被害の現状、結論的には消費者教育について論じるという流れになっていました。今回の行政問題にあわせるとすれば、具体的な事例や解決方法を細かく書かず、「マルチ商法」や「デート商法」というくくりにして、若者の消費者被害の現状、また、18歳19歳の消費者教育の課題を論じれば、論文添削がすべて応用できますので、そこを理解すれば問題なく書けたと思います。したがって、今回の行政問題は一般受験生にも十分に対応できる、ある意味ラッキー問題だったかもしれません。一般受験生にとって行政問題がラッキー問題になるのは珍しいことです。
法律問題的に書いたのではと不安になる受験生もいると思いますが、本論後半や結論に消費者教育を書けば、センターの啓発や学校教育との連携などが入ってきますので、まず行政問題的な論文になっていると思います。
論文に求められていること
- 若年者の消費者トラブル・被害の現状・特徴・・・序論~本論
「知識・経験の不足」をキーワードにデート商法、マルチ商法、キャッチセールスなどを列挙したり、近年ではSNSによる被害も特徴にあげてもOK。若者の行動形態の変化(顔の見えない関係、ネットを信じてしまう) - その防止・救済策・・・本論~結論
防止→消費者教育
救済策→消費者契約法、特定商取引法、民法(未成年者契約の取り消し)
さらに防止→成年年齢の引下げによる消費者教育
指定語句からストーリーを作る
- 若者は「知識・経験の不足」から消費者被害にあいやすい
- よく理解しないまま「契約」してしまう。
- ただし、未成年者契約には「取消権」がある。
- 20歳になると「契約」について自己責任となる
- 民法での「成年年齢の引下げ」は18歳19歳にも契約責任が生じる
- 未成年者契約の「取消権」の年齢が下がると消費者被害が増加する懸念がある。
- 特に高校生や大学生の18歳19歳への影響が大きい。
- そのために「消費者教育」がこれまで以上に重要である。
※「知識・経験の不足」「契約」について、具体的にマルチ商法やデート商法などの言葉を入れて、なぜ被害にあいやすいのかを簡単に説明すればいいと思います。
※「契約」は、消費者被害にあった「契約」と20歳で自己責任となる「契約」と未成年者「契約」の取り消しと複数回出てきます。うまく使い分けしてください。
前半で若年者の消費者被害を、後半で未成年者の消費者被害の拡大懸念という2つの対象で書くと、指定語句とのバランスがよくなるのではないかと思います。
指定語句「成年年齢の引下げ」
「成人」ではなく「成年」、「引き下げ」ではなく「引下げ」、これは私も間違ってしまうかもしれないです。減点対象になる可能性はありますが、実際のところはわかりません。
【テーマ2】インターネット通信販売の消費者トラブル
今回のテーマ2は法律問題
こちらは明らかな法律問題です。これまでの過去問と同様に考えればOKです。
難易度は高めです
テーマ自体はネット通販トラブルですのでわかりやすいのですが、指定語句が難しいのが出てきていますので、きちんとした知識があれば比較的簡単に書けますが、知識がないと間違ってしまうという問題です。したがって、テーマ1とどちらをとるか悩んだと思います。テーマ2の自信がない場合はテーマ1を選択するのが、これまでも予想されてきたテーマであり、29年度の論文添削でもかなりの事例が出たので、よい選択だったかもしれません。
特に「申し込み内容の確認措置」「解約返品制度」を正確に知っているかがポイントです。
指定語句からストーリーを作る
指定語句:悪質サイト業者、特定商取引法、広告規制、申し込み内容の確認措置、解約返品制度
最初の指定語句に「悪質サイト業者」とあるので、メインは問題になっている「詐欺サイト」や「アダルトサイトの不当請求」などに絞ることも可能です。「悪質」というのがなければ、一般的な通販の注意事項になりますが、一歩踏み込んでいるのが特徴です。さらに、海外の詐欺サイトや越境ネット通販トラブルなどを交えると「お!」と思われるかもしれません。前半に悪質業者のことを書いて、後半に一般的なトラブルのこととして確認措置や返品制度を書くといいでしょう。
- 序論に、ネットの普及、ネット通販の普及、一般的なネット通販のトラブルの増加、詐欺的なネット通販のトラブルの増加などを書けばいいでしょう。そのなかで、詐欺的なトラブルの増加を指定語句の「悪質サイト業者」を使います。
- 通信販売は「特定商取引法」で規制されています。ということは、トラブルの多い取引形態なので規制されているということです。訪問販売などの取引類型との違いは、クーリングオフ制度の対象外ということです。不意打ち性や複雑な取引形態ではなく、じっくり選択できるからです。
- 通信販売は「特定商取引法」で「広告規制」があります。その中に、特定商取引法に基づく表示が義務付けられています。ネット通販トラブルでは、この表示が適正かどうかを見極めることが啓発されています。架空の住所ではないか、電話番号が海外や携帯もしくは記載なしではないか、振込先が個人名になっていないか、など。氏名・住所・電話番号などが義務表示になっています。
- 「申し込み内容の確認措置」が少し難しくて2つの側面があります。1つは特定商取引法で禁止されている行為として、「顧客の意に反して申し込みさせる行為(第14条第1項第2号)」であり、一般的に「容易に確認し及び訂正できる」状態のことで、ガイドラインも示されており、要するに最終確認画面を設けてくださいということです。さらに、民法では錯誤による取り消しが可能ですが、電子消費者契約法により重大な過失があれば適用されないということで、最終確認画面があれば、錯誤無効の取り消しができないとなっています。ワンクリック詐欺は、最終確認画面もなく、いきなり契約成立になるので、錯誤無効が主張でき、契約は有効に成立していないという対応になります。この2点について言及できれば最高ですが、1点や混合でも問題はないと思います。申し込み内容の確認措置=最終確認画面ということですね。
- 「解約返品制度」はいわゆる返品特約です。知っていれば簡単ですが、一般の人はほとんど知らないですので、受験勉強でどこまで知っているかということです。ポイントはクーリングオフ(無条件解約)ではない、8日以内なら返送料負担で返品できる(お互いの原状回復=新品未開封)、ただし返品特約があればそれが優先される。ということで、返品特約がなければ自己都合返品も可能ですが、多くの通販サイトでは返品特約として、自己都合返品は不可になっています。おまけですが、契約が取り消しになると民法上の原状回復義務があるので、返送料等の経費もお互いの負担になります。民法の原則なので、あえて特商法で返送料のことは書く必要はないのですが、返送料をめぐるトラブルが多かったので平成20年改正で、あえて特商法に返送料等のことが明記されたという経緯があります。
※私が個人経営者向けに開催しているネットビジネスの法律セミナーでは、通信販売の表示や確認画面、返品特約を強調して解説しています。個人レベルの経営者は、ほとんど知識がありません。また、商品だけでなく、役務(サロンや教室など)も対象になることを知りません。相談現場でも個人事業主が経営しているネット通販のトラブルでは知識がないことを前提に話をする必要も出てくるときがあります。