30年度 問題11 民法 (正誤×選択)その1(一般公開中)

11. 次の文章のうち、下線部がすべて正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。
なお、以下は現行民法(平成29 年改正前の民法)に関する問題である。

① 「契約自由の原則」は近代民法の基本原則である。民法の㋐強行規定に反する合意は、公序良俗等に反しない限り有効である。一方、この原則を強調しすぎると弱者の権利が害されることになる。そのために、㋑借地借家法や㋒消費者契約法等の民法の特別法が制定され、これを制限している。

② 契約は、申込みと承諾の二つの意思表示の合致によって成立する。申込みの誘引は、相手方に申込みをさせようとする意思の通知であり、㋐申込みではない。テレビCM や店頭の広告表示は、一般に㋑申込みの誘引と解されている。隔地者に対する申込みの意思表示は、㋒その通知が相手方に到達したときからその効力を生ずる

③ 売買契約のように当事者の合意のみによって成立する契約を、㋐諾成契約という。これに対して、当事者の合意以外の要件が揃わないと不成立、あるいは無効となる契約もある。例えば、㋑寄託契約等、物の交付を成立要件とする契約や、㋒保証契約等、書面でしなければその効力を生じない契約がある。

④ 未成年者は、法律行為を判断する能力が十分ではないので、㋐意思能力がないとされ、未成年者が法律行為をする際に法定代理人の同意がない場合には、㋑未成年者自身又は法定代理人はその法律行為を取り消すことができる。ただし、未成年者が婚姻した場合や、㋒贈与を受けるなど単に権利を得る法律行為等については、単独でできる。

⑤ 無効とは、㋐その法律行為に対し法律が初めからその効力を認めないことである。公序良俗違反の契約の無効は、㋑誰からでも、㋒いつでも主張できる。

⑥ 製造業者が欠陥のある商品を製造し、これを小売業者が販売し、小売業者から購入した消費者がけがをする等の損害を被ったときには、消費者は製造業者に民法上の㋐不法行為責任を問うことができる。その責任が認められるためには、製造業者の㋑故意又は過失を消費者が主張立証する必要があるが、これが困難であること等から、特別法として㋒製造物責任法が制定された。

⑦ 代理人が、代理権の範囲内において㋐本人のためにすることを示して行った意思表示は、本人に対して効力が生じることになる。代理権を有しないAが本人Bの代理人として契約した場合は、㋑無権代理になることから、Bに対してその効力は生じない。ただし、Bが追認したときは、別段の意思表示がない限り、㋒追認の時以降、Bに対して効力が生じることになる。

⑧ 最高裁判所の判例では、敷金について、賃貸借契約に際して賃借人から賃貸人に交付される金銭であって、㋐賃料債権など賃貸人の債権を担保する目的のものとされている。また、敷金返還請求権は、㋑賃貸借契約終了の後の建物等の明渡しが完了しないと発生せず、賃借人から敷金の返還と引換えに建物を明け渡すという主張は認められないと、判断されている。

⑨ 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる。委任の受任者は、委任事務の処理に対して㋐善管注意義務を負う。委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるが、相手方の不利な時期に解除したときには、㋑やむを得ない事由がある場合を除いて、損害賠償をしなければならない。病院での診察等、法律行為ではない事務の委託をする契約は、㋒事務管理という。

⑩ 債務不履行には、履行遅滞、履行不能、㋐不完全履行の3類型がある。債務不履行があった場合には、債権者は債務者に対して損害賠償を求めることができる。損害賠償請求の要件としては、債務者に帰責事由があることが必要であり、帰責事由については㋑債権者が証明しなければならない。もっとも、㋒金銭の給付を目的とする債務の不履行については、債務者は不可抗力であっても損害賠償責任を負う。

解説

  • いよいよきました民法です。ここからメインの法律問題が始まります。しっかり勉強しましょう。
  • 民法は難しいですので、あまり根をつめるのはよくないです。ある程度割り切って、時間をかけすぎないようにしましょう。また、よく分からない問題や意地悪問題もありますので、そういう問題はパスしていきましょう。
  • 28年度試験は3択が6問+2択が4問でしたが、29年度試験は例年通り3択となりましたので難易度が上がりました。30年度試験では3択が9問+2択が1問でしたので、たまたま2択が1問だったという感じで、民法の正誤問題は基本3択になったと考えてもよさそうです。
  • この正誤×選択については正解率を5割でかまわないとしています。民法での得点の上積みを狙って勉強時間を割くよりも、絞って勉強して、その時間をほかの勉強にまわしてほしいと思います。
  • 旧試験では正誤×選択が15問でしたが、新試験になってから正誤×選択が10問+別に大問題として選択穴埋5問となりました。全体として15問ですが、5問が穴埋めになったことから、民法の難易度は下がったと言えます。

民法の試験対策と勉強方法

  • 範囲が広い民法ですが、出題される分野はほぼ決まっています。したがって、その分野だけ勉強します。他の分野を勉強する時間がもったいないですし、無駄で効率的ではありません。新しい分野が出題されれば捨て問題でOKです。
  • 出題される分野は過去問で分かります。論点もほぼ同じです。過去問対策が効果的です。
  • 民法が苦手な方は、過去問だけ勉強してください。勉強方法は過去問解説でOKです。勉強部屋では22年度試験の解説からありますので、繰り返し出題されている過去問を勉強します。また、過去問解説にある関連分野の解説も合わせて勉強してください。さかのぼればさかのぼるほどよいです。
  • 出題される分野については別途まとめていますので、参考にしてください(後日公開)。
  • 参考書を使うなら、ボリュームの少ないものでOKです。

時期的に、うっとおしい民法

29年度試験から、問題文に「なお、以下は現行民法(平成29 年改正前の民法)に関する問題である。」と注釈が書かれています。

民法自体はちょこちょこ改正されていますが、大きな改正というのがあります。そのひとつである「平成29年改正民法」といえば「債権法」の大改正です。債権なので消費者法とも関連してくる「契約」に関するルールが時代に合わせて大幅に改正されました。

施行は「平成32年(2020年)令和2年4月1日」となりますので、現時点では出題範囲として、『法律改正【試験範囲外だが概要が出題されるもの】平成31年5月2日以降に新たに施行もしくは改正される法律等(平成31年5月1日までに公布済)』となります(令和に変換するには平成から30を引いてください)。つまり、未施行なので概要だけが出題されます。他の法律の問題では概要として出題されていますが、民法で概要を出題すると混乱する可能性があるので、択一試験では、まだ出題はないかなと考えています。

ただし、全く準備なしは怖いので、基本的な概要だけは知っておいてください。また、成年年齢の引下げも(平成30年6月20日公布、平成34年4月1日施行)公布済みであり、ともに論文での出題も視野に入れて勉強だけはしておいてください。

したがって、2019年度試験でも問題文に「なお、以下は現行民法(平成29 年改正前の民法)に関する問題である。」と注釈が書かれる可能性が高いと思います。

平成30年度 難易度(A易、B普通、C難)目標:5問以上/10問中(★頻出☆重要実務)

  • 問題11① 任意規定と強行規定 AB★
  • 問題11② 到達主義と発信主義 B★
  • 問題11③ 契約の分類(諾成契約・寄託契約・保証契約)B★
  • 問題11④ 未成年者契約 BC★
  • 問題11⑤ 無効(公序良俗違反) C
  • 問題11⑥ 不法行為(製造物責任)C
  • 問題11⑦ 代理(無権代理)B
  • 問題11⑧ 賃貸借契約(敷金返還訴訟)BC
  • 問題11⑨ 委任契約 BC
  • 問題11⑩ 債務不履行(履行遅滞・履行不能・不完全履行)C

過去問

29年度 過去問 難易度(A易、B普通、C難)目標:6問以上/10問中(★頻出☆重要実務)

  • 問題11① 一般論(一般法と特別法) ★AB
  • 問題11② 契約の意思表示 ★AB
  • 問題11③ 履行遅延と履行不能(債務不履行) ★BC
  • 問題11④ 詐欺又は強迫無効 ★BC
  • 問題11⑤ 制限行為能力者の法律行為 ★B
  • 問題11⑥ 請負契約 ★B
  • 問題11⑦ 契約の取り消し(追認・時効)★B
  • 問題11⑧ 即時取得 BC
  • 問題11⑨ 不法行為 ★BC
  • 問題11⑩ 代理 C

平成28年度 過去問 難易度(A易、B普通、C難)目標:6問以上/10問中

  • 問題12①3択 任意規定と強行規定 B
  • 問題12②2択 取締規定 BC
  • 問題12③3択 不当利得(708条) AB
  • 問題12④2択 錯誤無効(95条) C
  • 問題12⑤3択 未成年者契約 AB
  • 問題12⑥3択 消滅時効 C
  • 問題12⑦2択 契約の取り消し BC
  • 問題12⑧3択 履行遅滞・履行不能・不完全履行 AB
  • 問題12⑨2択 使用者責任 B
  • 問題12⑩3択 代理 BC

「民法」「消費者契約法」「特定商取引法」「割賦販売法」

相談員試験のメインである「民法」の後には、「消費者契約法」「特定商取引法」「割賦販売法」と続きます。

これまでの試験では、このメイン4分野が非常にハードでした。基本的に正誤×選択方式で、50問ありましたので、全体200問中の4分の1を占めていました。問題も難しいので、勉強部屋では、この4分野については半分を目標にしていました。新試験では、問題数が180問に減少したと同時に、問題分野の出題バランスと難易度も変わりました。単純正誤問題や穴埋問題に変わってる分、難易度は旧試験と比べると下がっていますが、新試験の最初に比べると高くなっています。

  • 問題11 民法(正誤×選択)10問
  • 問題12 民法(選択穴埋)5問
  • 問題13 消費者契約法(正誤×選択)7問
  • 問題14 特定商取引法(正誤○×)11問
  • 問題15 特定商取引法(正誤×選択)5問
  • 問題16 割賦販売法(正誤×選択)6問

合計44問で、180問中の4分の1近くを占めています。ボリュームもあまり変わっていません。