消費者契約法の概要
消費者契約法の制定の経緯
- 消費者契約法が成立するまでは、消費者と事業者との契約トラブルの解決には悪質商法を規制する訪問販売法など限定されたものを除いて、民法での解決を図るしかなかった。しかし、民法を適用するのは難しいことが多かった。
- そこで、「消費者と事業者との間には格差がある」として、その格差を解消するために、消費者契約(消費者と事業者との契約)についての特別な法律(民法の特別法)を作り、広くすべての消費者契約を対象とした(労働契約は対象外)。平成13年施行なので比較的新しい法律。
消費者契約法の目的
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
消費者契約法で規定されているのは大きく3つ
- 不当な勧誘行為による契約の取消し…消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(第四条―第七条)
- 不当な契約条項の無効…消費者契約の条項の無効(第八条―第十条)
- 消費者団体訴訟制度(差止請求)…差止請求権(第十二条・第十二条の二)・適格消費者団体
1.不当な勧誘行為による契約の取消し ⇒誤認・困惑・過量販売
誤認
- 不実告知(第4条第1項第1号)
断定的判断の提供(第4条第1項第2号) - 不利益事実の不告知(第4条第2項)
困惑
- 不退去(第4条第3項第1号)
- 退去妨害または監禁(第4条第3項第2号)
- 社会生活上の経験不足の不当な利用(不安をあおる告知)(第4条第3項第3号)
- 社会生活上の経験不足の不当な利用(好意の感情の不当な利用)(第4条第3項第4号)
- 加齢等による判断力の低下の不当な利用(第4条第3項第5号)
- 霊感等による知見を用いた告知(第4条第3項第6号)
- 契約締結前に債務の内容を実施等(第4条第3項第7号)
- 契約締結前の事業活動による損失補償の請求(第4条第3項第8号)
※3以降の8個の困惑類型は平成30年改正(令和元年6月15日施行)で追加
過量販売(過量契約)
- 分量等が通常の分量等を著しく超える契約(第4条第4項)
※平成28年改正(平成29年6月3日施行)で追加
2.不当な契約条項の無効
- 事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効(第8条)
消費者の解除権を放棄させる条項等の無効(第8条の2)※平成28年改正で追加
事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項の無効(第8条の3)※平成28年改正で追加 - 消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効
・平均的な損害の額を超えるもののうち「当該超える部分」は無効(第9条第1項)
・14.6%を超える遅延損害金のうち「当該超える部分」は無効(第9条第2項) - 消費者の利益を一方的に害する条項の無効(第10条)
3.消費者団体訴訟制度(差止請求)
- 事業者が、不特定かつ多数の消費者に対して「不当な勧誘行為」や「不当な契約条項の使用」を行っているもしくは行うおそれがあるときは、その行為の差し止めを請求することができる
- 差止を請求できるのは内閣総理大臣が認定した「適格消費者団体」
- 同一事案の確定判決等があった場合は請求できない
- 差止請求は、消費者契約法だけでなく、景品表示法、特定商取引法、食品表示法にも拡大されている
- 差止請求の結果は内閣総理大臣・国民生活センターによって公表される