12.次の文章のうち、下線部がすべて正しい場合は○を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。
※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。

① 法令中には、公の秩序に関する規定と、公の秩序に関しない規定がある。㋐前者を強行規定といい、㋑後者を任意規定という。㋒強行規定に反する意思表示は不適法であり無効である

② 行政的取締法規は、行政上の考慮から一定の行為を禁止や制限するものであって、それに違反した場合には、行政処分や刑罰を伴うものである。例えば、㋐食品衛生法や建築基準法などがそれに当たる。行政的取締法規に違反する契約は、㋑いかなる場合も無効となる

③ 特定商取引法上の訪問販売において、クーリング・オフをして契約を解除した場合には、販売業者は受領した金銭を速やかに返還する義務があり、購入者も現存している商品の返送義務がある。㋐商品返送費用は販売業者の負担となる。提供済み役務に関する原状回復費用は㋑業者の負担であるが、提供済み役務の対価、使用済み商品の利得は、㋒民法の不当利得の規定に基づき購入者が支払う必要がある

④ 錯誤による意思表示は、民法上、㋐法律行為の要素に錯誤があった場合に取り消すことができる。錯誤は、意思表示の段階によって、表示上の錯誤、内容の錯誤、動機の錯誤に分類され、判例によれば、動機の錯誤は原則として要素の錯誤とはならないが、動機が表示されて意思表示の内容となった場合には、㋑法律行為の要素の錯誤になりうると解されている

⑤ 20 歳未満の者は未成年者であり、㋐法律行為をするには法定代理人の同意が必要である。未成年者の法定代理人の同意を得ないでした法律行為については、㋑法定代理人は取り消すことができるが、㋒未成年者自身は取り消すことができない

⑥ 貸金など債権の消滅時効の時効期間は原則として㋐10 年であり、時効期間は期限が到来するなど権利を行使することができる時から進行する。期限を定めていない場合には、㋑相当の期間を定めて催告をすることによって進行する。時効期間が経過するまでに権利を行使したときは、時効期間は㋒中断をする

⑦ 取消しは、その契約を有効とするか否かが取消権者の選択に委ねられている。取消しできる契約を確定的に有効とする取消権者による㋐追認の制度も設けられている。また、民法では、㋑行為から20 年、追認できる時から5年の取消期間の制限も定められている。

⑧ 債務者が債務の本旨に従った履行をしないことを債務不履行という。債務不履行には、㋐弁済期を過ぎた履行遅滞、㋑履行が後発的に不可能となった履行不能、㋒完全な履行がされない不完全履行の3類型がある。

⑨ 従業員が事業の執行について他人に損害を与えた場合は、㋐その従業員は責任を負わず、使用者が不法行為に基づく損害賠償責任を負う。ただし、使用者が従業員の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたときは、㋑使用者は責任を負わない

⑩ 第三者が代理権限を有しないで代理人として本人のために契約を締結しても、その契約は本人の意思に基づいていないので、㋐本人には効力は生じない。ただし、㋑本人が追認したときは有効となる。また、本人が代理人と称する者に一定の代理権限を与えていないにもかかわらず、そのような外観を作り出したときは、㋒契約の相手方が権限がないことを知っていたかどうかを問わず相手方が保護される。

解説

いよいよ、相談員試験のメインである「民法」に突入です。これ以後、「消費者契約法」「特定商取引法」「割賦販売法」と続きます。

これまでの試験では、このメイン4分野が非常にハードでした。基本的に正誤×選択方式で、50問ありましたので、全体200問中の4分の1を占めていました。問題も難しいので、勉強部屋では、この4分野については半分を目標にしていました。

28年度試験からは、問題数が180問に減少したと同時に、問題分野の出題バランスと難易度も変わりました。

そうはいっても、

  • 問題12民法(正誤×選択)10問
  • 問題13民法(選択穴埋)5問
  • 問題14消費者契約法(正誤×選択)7問
  • 問題15特定商取引法(5肢2択)2問
  • 問題16特定商取引法(正誤○×)11問
  • 問題18割賦販売法(正誤×選択)7問

合計42問で、180問中の4分の1近くを占めていますのでボリューム的にはあまり変わっていません。ただし、難易度は下がっています。29年度試験でどうなるかは分かりませんが、旧試験と同じ勉強と心構えをおすすめします。

難易度(A易、B普通、C難)目標:6問以上/10問中

(正誤×選択)問題は難易度が高いのですが、実は、毎年、ほぼ3択のところ、28年度試験は、3択が6問、2択が4問となっています。つまり、難易度が下がっているのは、こういうところからです。ちなみに、2択になった数は、27年度1問、26年度0問、25年度2問、24・23年度0問となっています。ちなみに、22年度は4択5問5択5問でした。

  • 問題12①3択 任意規定と強行規定 B
  • 問題12②2択 取締規定 BC
  • 問題12③3択 不当利得(708条) AB
  • 問題12④2択 錯誤無効(95条) C
  • 問題12⑤3択 未成年者契約 AB
  • 問題12⑥3択 消滅時効 C
  • 問題12⑦2択 契約の取り消し BC
  • 問題12⑧3択 履行遅滞・履行不能・不完全履行 AB
  • 問題12⑨2択 使用者責任 B
  • 問題12⑩3択 代理 BC

ポイント

問題ごとの項目名は私が勝手に命名しているのですが、これまでの出題一覧表からコピペしています。新しい項目は「問題12⑨ 使用者責任」だけでした。

つまり、出題される分野は、ほぼ決まっており、過去、同じ論点で繰り返し出題されています。したがって、過去問を数年分やれば、民法は対応できます。過去に出ていない論点や、私が過去問解説で付随的に解説した項目以外が出題されたら、放置でかまいません。100点目指す必要はないので。

年度ごとの出題分野の一覧表を作成していますので別途紹介します。