契約が取り消された場合の商品の返送料などの原状回復費用は当事者が負担する
論文添削している中で気になることがありましたので記事にします。個別に質問もされており、論文に限ったことではないので、思い違いをしている場合は確認しておいてください。
契約が取り消しになった場合は契約時にさかのぼって、契約自体がない=無効ということになります。
契約のルールについては、基本的に民法の原則に従うことになります。
したがって、お互いに原状回復をすることになります。
すると、商品を受け取っていたら返却する送料や、もし使用した分があれば、それに相当する費用を支払うことになります。これはお互いがお互いの負担によって現状回復することになります。
つまり、不当利得は解消するということですね。
役務(サービス)の提供であったときは商品を返還するとはならないので、お金で負担することになります。
クーリングオフの無条件解約は超特別な規定である
民法の原則に従うと商品の返送料は当事者が負担することになりますが、クーリングオフの場合は当事者が負担する必要はなく事業者が負担することになります。
これは民法の基本原則から外れる強力な、ある意味、理不尽なルールです。それぐらい、消費者トラブルの歴史的な経緯を考えるとクーリングオフは特別です。これを「強行規定」といいますよね。約款と同じです。
クーリングオフ期間内であれば、事業者のどんな言い訳も関係なく、事務的に進めることができます。
そのかわり、クーリングオフをするためには厳しい要件があります。1日でも経過してしまうと、行使できず、解約交渉となるのです。
クーリングオフ以外の特商法・消費者契約法は返送料の負担をしなければならない
特別法である特商法や消費者契約法に取り消したときの返送料等の費用負担について何もかかれていなければ、民法に従うことになります。
基本的に何も書かれていないので民法の原則に従います。
消費者契約法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO061.html
(他の法律の適用)
第十一条 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法 及び商法 の規定による。
2 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法 及び商法 以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
通信販売にはわざわざ返送料は購入者の負担とすると定めています
通信販売の契約の解除に伴う返送料の負担は民法の原則に従うので、購入者の負担となりますが、返送料の負担についてトラブルが非常に多かったので、平成20年改正のときに、わざわざ、このルールを条文に規定しました。
ちなみに、通信販売の契約解除は、8日以内であれば自己都合を含めた契約の解除ができます。ただし、「自己都合による返品不可」など返品特約があれば特約を優先します。
特定商取引に関する法律・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51HO057.html
(通信販売における契約の解除等)
第十五条の二 通信販売をする場合の商品又は指定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該指定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は指定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律 (平成十三年法律第九十五号)第二条第一項 に規定する電子消費者契約に該当する場合その他主務省令で定める場合にあつては、当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法により表示していた場合)には、この限りでない。
2 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は指定権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。
逐条解説に民法との関係が詳細に説明されています
消費者契約法 逐条解説41-43ページ
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations.html
第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)[PDF:688KB]
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/pdf/annotation_170220_0007.pdf