28年度試験の論文テーマ2

高齢者の消費者被害が増大しているが、その被害の事例と特徴を具体的に挙げ、それに対して消費生活センターはどう対応すべきか、その課題と対策について論じなさい。
指定語句:判断能力、訪問販売、次々販売、過量販売解除、高齢者見守りネットワーク

論文添削で書かれる方が多いのですが、どうも、趣旨をはずしている感じです。

記事のタイトルにもしましたが「高齢者への訪問販売による次々販売」とはどんなものか?というのを理解することが大事です。そうすればイメージがつくと思います。

事例のイメージがつかない場合は下記の記事や「くらしの豆知識」などを読んでください

さまざまな悪質商法(次々販売)

国民生活センター
トップページ > 注目情報 > 見守り情報 > 高齢者・障がい者見守りボランティア > さまざまな悪質商法(次々販売)[2010年11月30日:公表]
http://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_volunteer/mj-chishiki23.html

さまざまな悪質商法(次々販売)

一度契約をした消費者に対して、問題のある販売方法で次々と新たな契約をさせるという商法です。業者は同一業者の場合もありますが、複数の業者が入れ替わり立ち替わり契約させるケースもあります。

ターゲットは、高齢者と20歳代という両極端で、高齢者は寝具などの訪問販売が、20歳代はエステティックサービスなどの店舗販売が多くなっています。

トラブル事例

訪問販売

浄水器、ゲルマニウム温泉器、磁気活水器、マッサージ器・総合メンテナンス保証
1年半前「水道水の点検に来ました」と男性が来訪した。試薬を使って水道水を調べ、「水が汚れている。浄水器をつけるように」と勧められ、31万5千円の浄水器を契約した。数日後、集金に来た時に「お風呂に入れると温泉と同じ効果が得られる」というゲルマニウム温泉器(27万円)を勧められ、断りきれずに契約した。それから4カ月後、同じ販売員が水道管の寿命を伸ばすためだと言って磁気活水器(60万円)を取り付けて行ったが、契約書をみると前と別会社になっていた。9カ月後、再び同じ販売員が来て、マッサージ器とこれまで購入した機器に対する総合メンテナンス保証契約(45万円)をした。いずれも本当は契約したくなかったが、家を知られているので何かあったら怖いと思い、断れなかった。(80歳代 女性)

羽毛布団セット、肌掛け布団、遠赤外線カバー、敷きマット、ムートンの敷物
「羽毛布団の点検します」という電話があり、その後、販売員が自宅に来て「布団が湿っている。これほど状態の悪いのは見たことがない。これを使っていたら体に悪い」と言われ不安になって、使っていた布団を下取りに出して、羽毛布団と羊毛敷き布団を買った。その後、4社が入れ替わり立ち替わり来て、肌掛け布団、遠赤外線カバー、敷きマット、ムートンの敷物などを勧められ、断りきれずに契約してしまった。すでに下取りされた布団もあり、いつどの布団を買ったのか、もう分からない。支払い総額は300万円を超え、支払えない。(70歳代 女性)

シロアリ駆除、床下換気扇、床下耐震金具、屋根裏耐震工事
「近所でシロアリ駆除をしたので、この辺りを無料で点検している」と言って男性が来訪した。床下を調べたところ、シロアリの痕跡があったと言う。シロアリが食ったあとだという床下の写真を見せられて驚き、駆除を頼んだ。また、床下がじめじめしていると言われて、床下換気扇8台の契約をした。次は家が古いので耐震金具をつけたほうが家が丈夫になると勧められて、床下耐震金具を契約し、さらに屋根裏も補強しないと意味がないと言われ、屋根裏の耐震工事も契約した。短期間に総額600万円の契約をしたが、本当に必要な工事だったのか。(70歳代 男性)

店舗販売

着物、帯、宝石、バッグ
近くの大型ショッピングモールに着物の店があり、小物を買ったことがある。その後、キャンペーンのハガキが来たので出向き、勧められるままに訪問着を買った。受け取りに行った際、有名な作家がデザインをしたという帯を「その訪問着にとても合う。このような帯は二度と出ない」と勧められて契約した。その後も『お得意様ご招待』のはがきが届き、プレゼントをもらいに行くたびに宝石やバッグ、着物を勧められ断りきれずに買っていたら、クレジットの返済ができなくなってしまった。(60歳代 女性)

化粧品、美顔器
無料チケットをもらい、美顔エステの体験に行った。とても気持ちがよかったので、回数制限のない半年間有効の10万円コースを契約した。施術に行く度に自宅ケアのための化粧品を勧められ、断ると不機嫌な対応になるので購入した。その後、美顔器も断りきれずに購入した。支払いが厳しいと担当者に伝えたところ、友人を連れてきたらキャッシュバックがあると言われたが、行くたびに何か勧められるのでもう行きたくない。(20歳代 女性)

育毛サービス、基礎化粧品、カツラ
毛髪診断を受けたくて、軽い気持ちで店に出向いた。機械を使って自分の頭皮の状態を見せられ、「毛根にアブラがたまっている。頭皮が赤い。今のうちにケアをしないと大変なことになる」と言われ、とても心配になった。将来髪が薄くなったら困ると思って1年間の育毛サービスと自宅で使うシャンプーやマッサージ用の化粧品を買う契約をした。さらに「今のうちにカツラを作っておくと安心」と言われ、まだ必要がないと思ったが断りきれずカツラも作った。毎週施術に通っているが、髪は以前の状態と変化がないように思う。本当に必要な契約だったのか。カツラは一度も使っていない。(20歳代 男性)

 

契約をやめたい時

クーリング・オフ
訪問販売や電話勧誘販売で契約をした場合は「法律で定められた事項が書かれた書面(法定書面という)を受け取った日」(契約した日ではありません)から8日以内であればクーリング・オフができます。

しかし、次々販売が発覚した時点でクーリング・オフができるのは、直近の契約だけの場合がほとんどです。それでもクーリング・オフができるのであればとにかく通知を出しましょう。

それ以前の契約でも契約書面に不備がある場合は、「法定書面が交付されていない」としてクーリング・オフが主張できる場合があります。

クーリング・オフができない場合

次々販売の場合、業者のセールストークや勧誘方法に問題があることが多く、これにより契約の無効や取り消しができる場合があります。

また、訪問販売で、一人暮らしなのに布団を10枚以上買わされたなど消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品(役務・指定権利)を購入する契約を結んだ場合、契約締結後1年間は、契約の申し込みの撤回又は契約の解除ができます。(消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときは例外です)この際の清算ルールは、クーリング・オフと原則同様の清算ルールが適用されます。

まず相談しましょう
長い期間にわたって複数の契約をしているので、それぞれの契約時にどのような勧誘を受けたのかほとんど覚えていないことがよくありますが、相談する際はせめて関係書類だけでも出来る限り探しましょう。

よく覚えていなかったり、契約書面が見つからなかったりしても、とにかくあきらめずにお住まいの自治体の消費生活センターに相談しましょう。

 

被害にあわないために

業者は最初の契約で「この家は、昼間は高齢者が一人で留守番をしているので、話し相手になり親切にすれば、すぐ契約する」「この人は断ることが苦手で、強く勧めれば契約してくれる」などの情報を得ているので、契約が欲しい業者にとって2度目以降は勧誘しやすいものです。中には消費者に認知症の症状があることを知りながら、次々と契約を勧める極めて悪質な業者もいます。また、このような消費者の情報を同業者で共有し、一度契約してしまうと複数の業者から一斉に勧誘が始まる場合も多くみられます。

実際に被害に遭った人の中には「初めの頃から必要のない契約だと思い後悔したが、断れない自分も悪いのであきらめていた」と言う人もいます。この時点で相談していれば、被害を回復できる可能性だけでなく、同様のトラブル事例や今後の注意点についての情報を得ることで、その後の被害を未然に防ぐことが期待できます。

たとえ顔なじみの担当者に親切にしてもらったとしても、業者の本当の目的は新たな契約です。勧められても、本当に必要な契約なのかを冷静に考え、きっぱりと断る勇気を持ちましょう。特定商取引法では、訪問販売と電話勧誘販売ではっきり断った消費者への再勧誘を禁止しています。

被害を未然に防いだり、拡大させたりしないためには、家族や周りの方の見守りが不可欠です。特に高齢者の場合、本人の被害者意識が低く、被害が表面化するまで時間がかかることもあります。日頃から見慣れない商品が大量にないか、不審な契約書類がないかなど、家の中や生活状況の変化に注意しましょう。また、高齢者が相談しやすい環境を作っておくことも大切です。

 

参考法令
特定商取引法3条、9条、17条

トップページ > 相談事例・判例 > 各種相談の件数や傾向 > 高齢者への次々販売[2017年7月28日:更新]
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/old.html

最近の事例

実家の母がリフォーム業者に勧誘され屋根、下水枡の修理に続き床下工事をしてしまった。今後関わらせたくないがどうしたらよいか。
一人暮らしの高齢の母が顔見知りの業者から訪問販売で次々と物品購入をしているようだ。最近購入した布団をクーリング・オフしたい。
母宅に次々に業者が来て、床下換気扇を交換して行った。その後、金額や内容の不明な工事費用の請求書が来た。対処法はないか。
高齢で一人暮らしの義母が、訪問販売で複数の会社から立て続けに高額な布団を購入させられた。クーリング・オフしたい。
母が外壁と内壁の工事を2日続けて契約したようだ。過去に何度も同様のことがあった。クーリング・オフしたい。
判断力の低下した父宛に天皇皇后両陛下の額装が届き、業者から2度目の請求書が届いている。電話勧誘だと思うがどうしたらよいか。
高齢の父が電話後に訪問してきた業者と原野の調査、測量、造成などの契約を次々にして、料金も一部支払った。解約したい。
高齢の母が健康に効能のあるホットカーペットを購入し、引き続き高額な健康ネックレスを勧められているので効能を調べたい。
母親が度々新聞勧誘されている。販売店の所長に今後の勧誘はしないと念書を書いてもらった後も勧誘があった。どうしたらよいか。
一人暮らしの義理の母が訪問販売でプラチナの現物取引を次々に契約している。不審なので、全額返金してほしい。
※「最近の事例」は、相談者の申し出内容をもとにまとめたものです。
国民生活センターホームページの関連情報

高齢者が支払えなくなるまで次々に販売するSF商法-支払い金額の平均は170万円にも! (2015年5月21日)
「見るだけでいいから」と勧誘され…展示会で何度も着物を購入 (2015年2月18日)
「ねらわれてます高齢者 悪質商法110番」実施結果 (2013年10月11日)
2カ月で総額400万円!?次々に布団を買わされた! (2012年2月7日)
「高齢者被害特別相談(高齢者110番)」実施結果 (2010年10月27日)
ワゴン車の中で検眼、メガネを次々販売 (2010年5月31日)
認知症の父が高額な布団などを次々と買わされた (2008年9月4日)
判断力が不十分な消費者に係る契約トラブル-認知症高齢者に係る相談を中心に- (2008年9月4日)
高齢な母が次々と床下換気扇などを購入した (2007年9月3日)
次々販売のトラブル-クレジットを利用した相談を中心に- (2007年12月7日)
高齢者をねらい次々と契約をさせる住宅リフォーム業者 (2006年8月18日)
深刻な高齢者の消費者トラブル-狙われる70歳以上- (2003年11月25日)
次々と商品の契約をさせられた-高齢者の消費者トラブル- (2002年1月8日)

通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安

特定商取引法第九条の二(通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等の申込みの撤回等)の条文では、具体的な量は示されずケースごとに考えることになっているが、日本訪問販売協会が目安を作成しています。

日本訪問販売協会
ホーム » 過量に当たらない分量の目安
http://jdsa.or.jp/quantity-guideline/

商品・役務 商品・役務の内容等
(販売単位等は代表的な売り方として考えられるもの)
通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安
(この目安を超えた販売分量が直ちに過量に該当するものと考えるのではない)
健康食品 保健機能食品を含む健康食品全般 原則、1人が使用する量として1年間に10ヶ月分。
下着 体型補整下着(セットで装着し主に体型を補整する機能を謳うもの)でブラジャー、ウエストニッパー、ボディスーツ、ガードル等4枚程度を組合せたセット 原則、1人が使用する量として1年間に2セット。
着物 着物・帯が基本。これに襦袢、羽織、草履等を組合せたものも含む 原則、1人が使用する量として1セット。
アクセサリー ネックレス、指輪、ブレスレット等の宝飾品全般(雑貨は除く) 原則、1人が使用する量として1個。
寝具 掛布団・敷布団が基本。これに枕、シーツ、毛布等を組み合わせたものも含む 原則、1人が使用する量として1組。
浄水器 原則、1世帯について1台。
健康機器 家庭用医療機器を含む健康機器全般 原則、1世帯について1台。
化粧品 化粧水、乳液、クリーム等のフェイシャルスキンケア商品 原則、1人が使用する量として1年間に10個。
学習教材 小・中・高の学習教材 原則、1人が使用する量として1年間に1学年分。
住宅リフォーム 屋根や外壁等の住宅リフォーム全般 原則、築年数10年以上の住宅1戸につき1工事。