10.次の文章のうち、下線部が、すべて正しい場合には○を、誤っているものがある場合には×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。また、誤っているものがある場合には、誤っている箇所(1カ所)の記号も記入(マーク)しなさい。
① 消費者取引においては、事業者と消費者との間に㋐情報の質及び量並びに交渉力の格差があり、契約の勧誘をするときに、事業者が消費者の家から退去しない等により契約が締結される場合がある。このような場合、消費者契約法において、㋑事業者の不退去や退去妨害により消費者が困惑し、それによって契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができることを規定している。この規定の要件に該当する場合には、㋒民法の強迫規定(民法第96条)の適用がない。
② 消費者契約法第3条は、事業者は、契約条項を定めるにあたって、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が㋐消費者にとって明確かつ平易なものになるように配慮することとしている。また、㋑勧誘をする際には、消費者契約の内容についての必要な情報を提供すべき法的義務があると規定している。
③ 消費者契約法は、消費者と事業者の格差を前提として、㋐主として消費者契約に関する民事ルールを定める法律であり、㋑消費者と事業者との間で締結される契約関係を対象としている。しかし、㋒事業者と労働者との間で締結される労働契約は、適用除外となっている。
④ 消費者契約法は、取消権の行使期間について規定している。それによると、行使期間は、㋐消費者が追認できる時から6カ月、㋑契約締結の時から5年と定められている。これらの期間は、㋒民法の取消権の行使期間と同一である。
⑤ 適格消費者団体による差止請求権の差止要件は、事業者の差止請求の対象となる行為が㋐不特定かつ多数の消費者に対するものであって、当該行為を㋑現に行い又は行うおそれがあるときとされている。なお、この消費者団体訴訟制度は、㋒平成20年の法改正で特定商取引法、景品表示法にも導入された。
⑥ 消費者契約法第4条第2項では、事業者が契約の締結について勧誘するときに、重要事項または重要事項に関連する事項について、㋐消費者の利益となることを告げ、かつ、㋑消費者の不利益となる事実を過失によって告げなかったために、㋒消費者がその不利益事実が存在しないと誤認して契約の申込み、又は承諾をした場合にこれを取り消すことができるとしている。
⑦ 消費者契約法第5条は、㋐事業者が、消費者契約締結について第三者に媒介を委託した場合や、代理人に依頼した場合、㋑その第三者や代理人が、消費者に対して消費者契約法で定める不実告知などの行為を行ったときに、消費者に取消しが認められることを定めている。
⑧ 消費者契約法の不当条項規制は、一面では約款規制の性質をもっている。同法では、一定の不当条項について㋐取消しできることを定めている。規制対象は、㋑事業者の損害賠償の責任を免除する条項、㋒消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項などである。
⑨ 消費者契約法では、消費者とは㋐事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除いた個人をいい、事業者とは㋑法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約当事者となる個人をいうとしている。消費者と事業者を区別する観点は、「情報・交渉力の格差」で、この格差は「事業」に由来するのでこの概念が用いられている。
⑩ 消費者契約法第10条は、㋐民法、商法などの他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、㋑信義則(民法第1条第2項)に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とするとしている。
解説
とにかく、問題が読みにくい。無理やり文章をつなげたようなものになっていて、時間のない集中力が切れそうな時間帯に読み込むのは精神的にきついような感じです。
全般的に、法律の条文を抜き出して無理やり問題にしたような感じです。したがって、条文をしっかり読み込んでおくことが重要です。消費者契約法自体もそんなに長い法律ではなく、比較的理解もしやすいので、条文自体のポイントをおさえておくことが重要です。
消費者契約法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO061.html
押さえておくべき条文は、基本的に取り消しや不当条項などの消費者契約に関する第1条から第11条までと雑則48条です。
残りは差止請求に関することのうち手続きなどが多くを占めているので、差止請求については制度の基本を知っておくといいでしょう。すると、覚えるべき条文は非常に少なくなってきます。
消費者契約は「取り消し」と「不当条項」の2つに大きく分かれています。これらを整理しておくことと、基本理念・定義・適用除外を確認しておきます。それらに加えて、差止請求を覚えることになりますが、差止請求は一般論的な出題がされるので難易度は高くありません。テキスト等でまとめられているものをチェックしてください。
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 消費者契約
第一節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(第四条―第七条)
第二節 消費者契約の条項の無効(第八条―第十条)
第三節 補則(第十一条)
第三章 差止請求
第一節 差止請求権(第十二条・第十二条の二)
第二節 適格消費者団体
第一款 適格消費者団体の認定等(第十三条―第二十二条)
第二款 差止請求関係業務等(第二十三条―第二十九条)
第三款 監督(第三十条―第三十五条)
第四款 補則(第三十六条―第四十条)
第三節 訴訟手続等の特例(第四十一条―第四十七条)
第四章 雑則(第四十八条・第四十八条の二)
第五章 罰則(第四十九条―第五十三条)
附則
重要フレーズ『消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差』
消費者契約法と特定商取引法の第一条にかかれている事業者と消費者の関係の基本的なポイントです
消費者と事業者の間には格差があるので消費者を救済するための法律や消費者センターがあるということです。
消費者契約法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO061.html
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に かんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとと もに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は 拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向 上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
消費者基本法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S43/S43HO078.html
(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差に かんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明ら かにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の 安定及び向上を確保することを目的とする。
消費者契約法の内容(第一条を分解)
1.取り消し⇒第四条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
- 事業者の一定の行為により
- 消費者が誤認し、又は困惑した場合について
誤認
→第四条第1項第1号(不実告知)
→第四条第1項第2号(断定的判断の提供)
→第四条第2項(不利益事実の不告知)
困惑
→第四条第3項第1号(不退去)
→第四条第3項第2号(監禁・退去妨害) - 契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとする
2.不当条項の無効
事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とする
- 第八条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
- 第九条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
- 第十条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
3.差止請求
消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができる
目的
消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする
27年度試験 各問題の分野・ポイント・難易度
① 契約の取り消し(困惑)・・・基本・・・気づけば易しい
② 第3条(事業者及び消費者の努力)・・・理念的なもの・・・知ってれば易しい
③ 適用除外・・・頻出基本・・・易しい
④ 行使期間(時効)・・・頻出基本・・・日本語的にも易しい
⑤ 差止請求権・・・基本・・・なじみのない言葉が出てるので少し難
⑥ 第4条第2項・・・取り消し要件の基本・・・簡単だが見落とす可能性があり少し難
⑦ 第5条・・・代理人や第三者がでてくるので少しややこしい・・・冷静に読めれば日本語的にも易しい
⑧ 不当条項・・・一般論・・・やさしいが引っ掛け問題少し難
⑨ 定義・・・消費者と事業者の定義(基本頻出)・・・易しい
⑩ 第10条・・・不当条項の中でもあまり使わないもの・・・基本事項で日本語的にも分かるので易しい
点数が取れない正誤問題ですが、返事例問題もなく、7割は正解できそうです。ただ、紙一重のところで点数に結びつかない受験生もいると思いますので、このレベルの問題で最低6割、できたら7割+アルファを目指したいです。
消費者契約法の出題パターン
- 定義などの条文にそった問題(逐条解説で補完する)
→同じような問題が出るので過去問対策 - 具体的な事例をからめた問題
→過去問の事例から、問題になれておく
関連ホームページ
消費者庁ホームページ
消費者庁ホーム > 政策 > 政策一覧(消費者庁のしごと) > 消費者制度 > 消費者団体訴訟制度(差止請求・被害回復)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/collective_litigation_system/
政府広報オンライン
トップページ>お役立ち情報>不当な勧誘などの消費者トラブルにあったら「消費者団体訴訟制度」の活用を!
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201401/3.html