今年の試験では高得点不合格者が続出しているようです。
現職有資格相談員も相当論文で落とされた可能性があります。

過去の試験で、ここまでミスギャップがあった記憶はありません。

論文試験の正式な解説は問題文が公表されてから書きますが、論文試験について、なぜ、不合格者が続出しているか私なりに感じていることがあります。受験感想とかぶる部分がありますが書いてみます。

受験感想はこちらです

28年度試験の感想【管理人 受験してきました】(2016/10/15)
http://soudanshiken.com/room2016/2524.html
論文の感想抜粋

論文試験

出題形式

出題形式の中で指定語句の書き方が微妙に変わりました。

『2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。』

と変わりました。

といっても、それぞれの語句の意味を説明するという趣旨ではないと思います。指定語句に絡めた文章を書くということだと思います。単純に文章の中の単語として流れてはいけませんということでしょう。

テーマ

テーマ1は行政問題で、もっとも基本的な一般論の問題でした。
指定語句も一般用語ばかりでした。

テーマ2は例年法律問題ですが、純粋な法律問題ではなく、行政問題に近いテーマでした。
といっても、指定語句の中に法律に出てくる用語が出てたので、やはり法律問題かなと思います。しかし、消費生活センターの対応を論じることになっており、法律の正確な解釈ではないので、書きやすかったかもしれません。

今回の2つのテーマは制度変更後の初回のテーマとして、比較的書きやすいラッキー問題だったのではと思います。

来年度になると、特商法と消費者契約法の改正や、民法改正も視野に入ってきます。個人情報保護法の大きな改正も待ってます。書きやすいテーマは今回だけかもしれません。

論文解説は一次試験の合否発表が終わってからにしますが、少しだけコメントします。

テーマ1

私はこちらを選びましたが、思ったほど上手くかけませんでした。

「意義及び役割は何か+また留意すべき点について」という感じで2つのテーマが入っている形だったので序論本論結論の形式が書きにくかったです。意義及び役割を序論に長めに書いて、本論で留意点を書いて、まとめに、意義役割をもう一度持ってきて、相談員としての考え方を入れました。私にしては珍しく7行も余してしまいました。

指定語句の使い方としては、「相談者への聴き取り」が重要⇒「あっせん」につなげる。「あっせん」にあたっては過去に蓄積された「相談情報の活用」を行う⇒あっせん結果を新たに相談情報として蓄積する。蓄積された情報は、被害拡大防止と被害の未然防止のために「注意喚起」等の啓発に活用する、という流れにしました。

悩んだのは「行政処分」です。行政処分は大半が国が行います。ただし、特商法等は都道府県にも権限が下りてるので時々見かけます。市町村には通常特商法等の処分権限はありません。しかし、テーマは地方公共団体のことです。そこで、私は市町村の消費生活条例で地域で集中的に発生している特定事業者への行政指導と行政処分について書きました。また、法律での行政処分は、都道府県も行うことができる、という形にしました。行政処分情報を啓発活動につなげるというのは事後のことなのでちょっと違うかなと思い書きませんでした。

相談現場を経験したことがあれば、それなりにかけたのではないかと思います。

テーマ2

またもや高齢者か、という感じで、一般の受験生には比較的予想できた問題かなと思います。過去問をしっかりやれば、同じような視点で書けます。

論文添削での電気通信事業法の考えの中で、一人暮らしの高齢者が訪問販売でケーブルテレビを契約してしまい、時間がたってから気づく、など流用できる論点はたくさんありました。もろに事例にしてもかまいません。

「判断能力」は民法で保護される制限行為能力者と保護されない認知症の考え方も何回か解説しています。「過量販売解除」という6文字を論文に使うのは無理がありますね。そして、「高齢者見守りネットワーク」は何度も解説してきたところですね。具体的な事例もたびたび出てきましたので、そんなに手が出ないというテーマでもありませんでした。

ずばりポイントは「テーマ2」だと思います

まず、テーマ1が行政問題であることは明白です。したがって、現職にはラッキー問題になりますので、適当といったら語弊がありますが、現職の経験をうまく書けばそんなに難しくないと思います。例年通りの現職のための行政問題です。指定語句を見ても例年通りの書きやすい問題でした。

ただし、指定語句の「行政処分」がネックになり「テーマ2」を選んだ現職も多いと思います。実際、合否報告を見ると、テーマ2を選択している受験生が圧倒的に多く、また、高得点不合格者も「テーマ2」を選択しています。

これが、今年の論文選択の大きな落とし穴になったと考えています。

やっぱり、テーマ1は「行政問題」で、テーマ2は「法律問題」

テーマ2は一見行政問題のように見えて、やっぱり、例年通り、法律問題だと思います。指定語句を見ても、例年どおりの法律問題にでてくるような法律用語です。

今年は、高齢者被害や見守りネットワークという行政問題的な視点が入ったのがポイントだったと思います。

すなわち、テーマ2は行政問題としてではなく、法律問題としての論文が求められていると思います。

特に、今年から、『2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるように、適切に用いること。』の要件が加わっていますので、指定語句の法律用語に対して、法律的な説明が必要だと考えます。

それをせずに、行政問題的な視点で論文を書くと、マイナスになるのではないかと考えています。現職はどうしても行政問題的な視点で書こうと考えると思いますが、それは視点がずれてしまっている可能性があります。

私は2つのテーマを見て、直感的にそう感じたので、「テーマ1」を選択しました。
法律問題は知識問題なので正確に書くことが求められますので、記憶力が低下している状況では選択したくないです。

テーマ2の指定語句についてコメントします

「判断能力」

「判断能力」については、「単に判断能力が低下した高齢者が被害にあう」という現場感覚ではなく、判断能力が低下した認知症であっても、民法上は制限行為能力者ではないので保護されない。したがって、診断書などを根拠に交渉すいるしかないという難対応事例になります。そうならないためにも、成年後見人等の手続きをしたほうが良い、というところまで言及できればいいのではと思います。

「訪問販売」

「訪問販売」については、このテーマ2が「訪問販売」について論じる問題ですよ、という出題者の意思表示だと思います。さらに、訪問販売の中でも「次々販売」と「過量販売解除」という関連した2つの指定語句の被害について、具体的に事例をあげて、法律的な解釈を加えるということになります。

「次々販売」「過量販売解除」

そこで、「次々販売」の定義と、「過量販売解除」になる要件をできるだけ条文から引用することになります。この中で、「1年間」「1つの事業者から」「複数の事業者から」など、解除になる要件を説明し、具体的な商品をあげればいいですが、なかなか正確にはあげれないのでぼやかしてもいいと思います。特に「1年間に必要とされる分量を超える」という説明は必須ではないかと思います。

また、浄水器やふとんなどの具体的な数量については法律で定めがありませんが、日本訪問販売協会が目安を作成しており、それがスタンダードになっています。これは勉強部屋の解説では何度も書いているところです。このことを書けばプラスの印象になるでしょう。

さらに、今年の特商法の改正で電話勧誘販売にも過量販売の規制が追加されたと1文書けば印象が良いでしょう。

「高齢者見守りネットワーク」

最後の「高齢者見守りネットワーク」は、この言葉が頻出なのでテーマ2を選択したのかもしれませんが、法律問題であることを考えると重要度は低いと思います。最後のまとめ的な使い方=これらの被害を防止するために、「高齢者見守りネットワーク」を活用する、ということです。そこに軽く「高齢者見守りネットワーク」の説明を入れたらいいと思います。

まとめ

法律問題は、行政問題と違って、個人の感情をあまりいいれてはいけないと考えています。現職は過度に現場の実情や感情的なものを書いているのかもしれません。テーマ2は一般受験生のほうが現職よりも求めれている視点で論文を書けていた可能性があります。

以上です。結論的に『テーマ2は法律問題だった』というのが最大のポイントだったと考えています。

【追記】実は採点基準はそんなに厳しくなかった説

「テーマ2」について考察してきましたが、実は、採点基準はそんなに変わっていない説もあるのではと思い始めました。

つまり、不合格の多くが「テーマ2」であり、その論文クリア要件が法律問題の論文になっていなかったという基本的な間違いで不合格になったことも考えられます。そうすると、現職の高得点者がその罠にはまり、行政問題的な視点で書いたことから、一律、不合格の基準に抵触した可能性もあるのではないでしょうか。

合否報告を見ると、テーマ1の選択者自体が少ないですが、テーマ1の不合格者はいるものの、それは例年通りの割合かもしれません。今一度、どんな論文だったか思い返してください。

補足

採点基準で気になるのが、区切りです。従来の8点満点の5点以上で合格は「1点」単位ですのでわかりますが、今回は100点満点の60%以上で合格という表現になっています。

普通に考えると「10%」きざみで、実質、10点満点中の6点以上で合格となり、採点基準が分かりやすいのですが、「5%」単位、あるいは「1%」単位だと、カオスな世界になります。
まあ、点数確認したら分かることですが、私は「10%」きざみだと考えています。
加点方式か、減点方式かはわかりません。
公表された点数と再現答案を評価すれば分かるかもしれません。

もし、ご意見・ご感想がある場合は問い合わせフォーム等で連絡ください。あわせて、ここに、感想を転記してもいい場合は、その旨書いておいてください(名前は非公開です)。また、不合格者の再現論文を評価してみようかなとも考えています。