1.次の文章のうち、下線部が、すべて正しい場合には○を、誤っているものがある場合には×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。また、誤っているものがある場合には、誤っている箇所(1 カ所)の記号も記入(マーク)しなさい。

⑥ 1960年代には、いわゆる「ニセ牛缶事件」のような不当表示事件が発生し、1962年、㋐景品表示法が制定された。また、1968年には、㋑消費者基本法が制定された。政府においては、消費者政策担当部局が設置され、1965年、㋒経済企画庁に国民生活局が設置された。

⑦ 1970年代には、「マルチ商法」と呼ばれる商形態が広まり始めた。これらを規制するため、㋐割賦販売法が制定された。また、国民生活センターが、㋑苦情相談対応、㋒調査研究等を担う機関として1970年に設立された。

⑧ 1980年代には、クレジットカードの普及等により多重債務問題等が㋐増大した。また、いわゆる「バブル経済」の中で、金の現物まがい取引等に見られる資産形成取引をめぐる消費者問題が急増したことから、1986年には、㋑預託法が制定された。

⑨ 1990年代から2000年代にかけては、消費者と事業者との間の一般的な民事ルールの整備が進められ、その結果、㋐製造物責任法、㋑消費者契約法、㋒個人情報保護法など、民事ルールの立法化が行われた。

⑩ 2000年代前半には、急激な高度情報化に伴い、2002年、㋐内閣府が「電子商取引等に関する準則」を策定・公表した。また、消費者問題としては、アダルトサイト利用料等の㋑架空請求が発生し、2003年度、2004年度に相談件数が急増した。

解説

問題⑥ 消費者行政の歴史(日本)

ハンドブック消費者で同じように年代ごとにまとめていますので引用します。

1.1960年代
1960年代には、経済が高度成長を遂げ、大量生産・大量販売の仕組みが広がる中で、欠陥商品による消費者危害の発生や不当表示事件が発生しました(ニセ牛缶事件(1960年)、サリドマイド事件(1962年)等)。こうした動きに対応するため、政府においても消費者問題への取組が本格化し、個別分野における法令の整備(薬事法(1960年)、割賦販売法(1961年)、景品表示法(1962年)等)が進められるとともに、消費者政策担当部局が相次いで設置されました(経済企画庁国民生活局(1965年))。
1968年5月には消費者保護基本法が制定され、消費者政策の基本的枠組みが定められました。また、地方公共団体においても、消費者保護基本法でその責務が規定されるとともに、地方自治法で消費者保護が地方公共団体の事務として規定(1969年)されたことを受け、消費者政策専管部局や消費生活センターの設置が進められ、その後、地域の実情に応じた施策を講じるため、都道府県・政令指定都市等で消費者保護条例が順次制定されていきました。

  • 出来事と関係する法律を知っていればいいのですが、少し引っ掛けようという出題の癖がありますね。「ニセ牛カン事件」は「景品表示法」というのは有名ですが、消費者保護基本法が1960年代だったのは不確かかもしれません。また、国民生活局もわからないし、ましてや経済企画庁に設置されたかどうかも記憶の中では不確かですね。
  • 暗記していない場合は常識で考える必要がありますが、歴史の最初の年代なので消費者保護基本法がここにはまっても大丈夫かなあと。「あ!消費者保護基本法ではなく、消費者基本法になっている!」。これに気づけば、いきなりラッキー問題に早変わり。しかし、試験本番中という雰囲気では気づかないこともあるんですよね。それは仕方がありません。実は私も気づきませんでした。最後は消費者問題はお金や取引の話になるので、今でいう経済産業省が事業者を指導しているということを考えれば、同じ「経済」ということで、答えにたどり着けるかもしれません。
  • すべて正解にしてしまった人は引っ掛け問題に引っかかったということです。

したがって、⑥は㋑が不正解です。

重要ポイント ⇒ 試験本番では、明らかに不正解が判明した時点で残りは読まずに次に進むこと

「ニセ牛カン事件」についてJAROに詳しい記事がありますので参考にしてください
・・・http://www.jaro.or.jp/jaro40/j_choice/index.html

1960年8月ににせ牛缶事件が起こった。横浜市の一消費者が購入した牛の絵の付いた牛肉大和煮の缶詰の肉が、牛肉ではなく鯨の肉だったという事件で、その相談を受けた主婦連合会が市販品を試買したところ、牛の絵のついた大和煮缶詰の肉はほとんどが馬肉であることが分かった。

問題⑦ 消費者行政の歴史(日本)

2.1970年代
1970年代には大衆消費社会を背景とした製品の安全性の問題が更に大きくなるとともに、マルチ商法など新たなタイプの消費者問題が発生し、被害を引き起こしました。こうした中で、消費者問題も商品の品質・性能及び安全性に関するものから、商品の販売方法や契約等に関するものへと比重がシフトしました(訪問販売等に関する法律(1976年、現特定商取引法)等)。
また、1970年10月には、消費者問題の情報提供や苦情相談対応、商品テスト、教育研修等を担う機関として国民生活センターが設立されました。

マルチ商法といえば、特定商取引法ですよね。昔は訪問販売法という名前でした。割賦販売法は分割払に関する法律ですので、もっと前の時代(昭和36年)に制定されました。割賦販売法ではないなあと直感的に感じれればOKです。国民生活センターは問題ないですね。

したがって、⑦は㋐が不正解となります。

問題⑧ 消費者行政の歴史(日本)

3.1980年代
1980年代は、経済の情報化、サービス化、国際化等の動きが加速するとともに、クレジットカードの普及等により消費者による金融サービスへのアクセスが容易になりました。これを受け、消費者問題も、クレジットカードの普及等による多重債務等に係る問題が増加するなど、その内容が変化し複雑化しました。これに対して、消費者信用取引の適正化や消費者契約の適正化等のための施策等が実施されました(訪問販売等に関する法律の改正等)。また、いわゆる「バブル経済」の中で資産形成取引に伴う問題が急増したため、これに対応する法令が整備されました(特定商品等の預託等取引契約に関する法律(1986年)等)。

「多重債務問題が増大した」と書かれていれば違うとはしにくいですので素直に考えたらいいです。問題は後半部分で、金の取り引き=豊田商事事件では、金の預り証を渡して、現物は事業者自身が保有するという商法で実際には当然金は所有していないという社会問題となった事件で、殺人事件にもなった映像が報道されたのを覚えています。「預託法」、預けるという字が入っているので、この事件に対応していると単純に考えればOKですね。

したがって、⑧はすべて正解です。

問題⑨ 消費者行政の歴史(日本)

4.1990年代~2000年代前半
1990年代は、消費者と事業者との間の一般的な民事ルールの整備が進み製造物責任法(1994年)消費者契約法(2000年)などが制定されました。また、IT革命と言われる急激な高度情報化によって、インターネットを代表とする新しい情報通信技術が我が国においても急速に発展しました。この情報通信技術の多様化、複雑化に対し、適切な対応方法を十分に身に付けることができない消費者もおり、新たな消費者問題が発生しました。この状況を受けて、電子消費者契約法(2001年)、個人情報保護法(2003年)等が整備されました。
他方、2001年のBSE(牛海綿状脳症)問題発生等の食の安全に対する国民の信頼感を揺るがす事件に対応するため、食品安全基本法(2003年)が制定され、食品安全委員会が設立されました。

法律と制定年の暗記問題ですが、覚えていない場合は、時代背景と法律名との連想ゲームです。それ以外は言いようがない問題ですので、新しい民事ルールということで、新しそうな社会問題を想定して何とか記憶に入れてください。

今回のポイントは、ハンドブック消費者では「1990年代~2000年代前半まで」と「2000年代後半以降」に分けているのに対して、試験は「1990年代~2000年代前半まで」が「1990年代~2000年代にかけて」と「2000年代前半」とに分けられていて、ハンドブック消費者での「2000年代後半」は出題されていません。
個人情報保護法は2003年なので出題問題からは外れているということになります。これは難しいかもしれませんね。

したがって、⑨は㋒が不正解です。

問題⑩ 消費者行政の歴史(日本)

ハンドブック消費者は⑨に重なりますが、あまり記述されていませんね。

時代背景としては携帯電話やインターネット社会の普及で、これまでにないトラブルが発生しているということです。代表的なもので、架空請求になります。最初はハガキでの架空請求でしたが、その後は電子メールとなり、続いて、ワンクリック請求となっています。2003年度と2004年度はハガキによる架空請求が激増して、現場の消費者センターでは電話が鳴りっぱなしという状況になりました。私も相談員の手が足りない状況で職員も電話対応に終われましたが、対応事態は簡単でした。結果的に過去最高の相談件数を記録しました。近年は、その架空請求ブームも去り相談件数も減少してきましたが、最近、再びアダルト情報サイトの相談が増えています。

さて、架空請求は問題ないとして、「電子商取引等に関する準則」というネット取り引きに対する対応マニュアル的なものがあるのですが、その管轄が「内閣府」かどうかということですね。
電子と付いてるので総務省だから×としても結果的には正解になりますが、「取引」なので、経済的なものと考えて、「経済産業省」が正解です。

したがって、⑩は㋐が不正解です

経済産業省ホーム >政策について> 政策一覧> ものづくり/情報/流通・サービス> 情報化・情報産業 >主要施策> 電子商取引の促進
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/

【解答】
⑥→×㋑、⑦→×㋐、⑧→○、⑨→×㋒、⑩→×㋐

冷静に考えると4問もしく全問正解できそうですが、3問はとってほしいです。