17.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

① 製造物責任法は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産にかかる被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任を定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とするものである。従って、㋐被害者として保護される対象は消費者に限られ、事業者は保護の対象とされていない。また、同法における㋑「製造物」には外国製のものも含まれ、㋒「製造業者」には輸入業者も含まれる
② 製造物責任法における「製造物」とは、㋐製造または加工された動産であり、不動産は含まれない。㋑ただし、医薬品・医療機器については特別法があるので、製造物責任法の対象とはならない。㋒冷蔵庫、自動車などの製品が、たとえ中古品であっても製造物責任法の対象となる
③ 製造物責任法において賠償責任が認められるためには、㋐欠陥の存在を要件とし、製造業者等に過失がなくても賠償責任が認められる。㋑ただし、被害者の過失を不問に付すというものではなく、被害者に過失がある場合は、過失相殺されることがある。さらに、㋒欠陥と発生した損害との間に因果関係が存在することが必要である
④ 製造物責任法における「欠陥」とは、㋐当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、㋑行政法規等の基準を満たしていれば、通常有すべき安全性があると常に判断される。㋒当該製造物の特性、通常予見される使用形態、当該製造物を引き渡した時期等の事情が欠陥を判断するにあたって考慮される事情となる
⑤ 欠陥は、設計上の欠陥、製造上の欠陥、指示・警告上の欠陥に分類される。㋐設計上の欠陥は、設計自体に製品の安全性に問題がある場合であり、㋑製造上の欠陥は、設計には問題はないが、設計どおりの部品を使わなかったり、溶接等に問題があった場合である。㋒指示・警告上の欠陥は、使用者が当該製品を安全に使用するための取扱説明書、警告表示が不十分な場合であるが、製造業者等が十分な指示・警告表示をすれば、設計上ないし製造上の欠陥があっても賠償責任を免れることになる

【解説と解答】

この法律の目的は、第一条にもあるとおり、「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」に「被害者の保護を図る」とされており、被害者は消費者だけでなく、事業者が事業として使用していた場合も当然含まれます。例えば、宿泊施設で石油ファンヒーターの欠陥により一酸化炭素中毒で従業員が被害を受けた場合は当然対象となることからも想像がつくと思います。

製造物が外国製であっても通常輸入業者が存在しますので当然対象となるわけですが、海外で購入した場合やオークションで海外から購入した場合、個人輸入した場合などは、海外で製品が引き渡されたことになるわけで、そうすると一般的に引き渡された国の法律が適用されることになります(法の適用に関する通則法)。とはいえ、通常の生活では海外製品も国内で正規に販売されることがほとんどです。そして、輸入品の場合は定義にもあるとおり輸入業者も含まれます。
したがって、①は㋐が不正解となります。


「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。の定義どおり、不動産は含みません。また、特商法のように適用除外の規定もないので、当然医薬品も対象と なります。ただし、医薬品などは予防接種にもあるように一定の割合で被害が出てしまうこともあり特別法で細かい被害救済の規定がされているので、PL法で 争わず特別法で解決を図ることがスムーズなこともあります。
それでも、PL法により争うことは可能です。薬害エイズ訴訟が製造物責任法で争われたことは記憶に新しいかもしれません。
中古品については、中古品であっても定義を満たせば対象となります。ただし、製造物を引き渡したときの状態であるという条件が中古品が流通後に改造や修理 がされていないことが不明であり、また、流通後10年が対象となるので、これらの条件を満たすかどうかが中古品が法律の対象となるかどうかにかかわってき ます。
したがって、医薬品も対象となるということで、②は㋑が不正解となります。


製造物責任法の賠償責任は①欠陥の存在②損害の発生③欠陥と損害との因果関係、の3点を満たすことになります。
また、第6条にもあるとおり、損害賠償の過失割合などのこの法律で定められていないことは「民法」が適用されることになります。したがって、設問にある過失割合についても民法により過失相殺されることがあります。
ということで③はすべて正解です。


第2条の定義では「2  この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」とあります。
「行政法規等の基準」を満たすことと通常有すべき安全性があることは別次元の話です。特に「常に」と書かれているところがツボになります。
行政法規はあくまでも最低限度の基準で、法に則った表示をしていればOKかというと表示自体の欠陥についても言及しなければならないですし、こんにゃくゼリーについては何ら食品衛生法などに違反するものではないことを考えると想像がつくと思います。
したがって、④は㋑が不正解です。

⑤欠陥の分類についての問題です。
PL法における「欠陥」とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」とあります。
一般的に欠陥には①設計上の欠陥②製造上の欠陥③表示・警告上の欠陥の3種類があると言われています。
当然どれか1つを満たせばいいというものではなく、1つだけ該当しても欠陥となります。
したがって、⑤は㋒が不正解です。

製造物責任法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H06/H06HO085.html

(目的)
第一条  この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう
2  この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう
3  この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一  当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二  自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三  前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

(製造物責任)
第三条  製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

(免責事由)
第四条  前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一  当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二  当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

(期間の制限)
第五条  第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。
2  前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

(民法 の適用)
第六条  製造物の欠陥による製造業者等の損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法 (明治二十九年法律第八十九号)の規定による。

附 則 抄

(施行期日等)
1  この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、その法律の施行後にその製造業者等が引き渡した製造物について適用する。

解答一覧

①→×㋐、②→×㋑、③→○、④→×㋑、⑤→×㋒