17.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

⑥ 製造物責任法において「製造業者等」には、㋐当該製品を輸入して国内で販売した業者は含まれないが、現実に当該製造物を製造した業者であれば、㋑当該製造物に自社の会社名を表示しなくても製造業者に該当する。逆に、㋒当該製造物を実際には製造していない業者であっても、当該製造物に商号、商標等を表示した者や、当該製造物の製造業者と誤認させるような表示をした者も製造業者等に該当する
⑦ 製造物責任法では、当該製造物に欠陥があったとしても、その製造業者等が引き渡したときにおける科学または技術に関する知見によっては、欠陥があることを認識することができなかった場合には、当該製造業者等は賠償責任を免れる規定をおいている。㋐ここでの「科学または技術に関する知見」とは、世界最高水準の科学知識、技術知識等であって、当該製造物を流通に置いた時点で入手可能な総体を意味すると解釈されている。㋑欠陥があることを認識できなかったことの立証責任は当該製造業者等の側が負担する
⑧ 製造業者等は、引き渡した製造物の欠陥により人の生命、身体または財産を侵害したときは、製造物責任法上の損害賠償責任を負う。㋐その場合に賠償されるべき損害は、財産的損害に限られ、精神的損害である慰謝料を含まない。㋑損害が当該製造物についてのみ生じたときは、製造物責任法上の責任は発生せず、債務不履行責任など民法の適用が検討されることになる。㋒水温が十分に高くならない電気ポットなどのように、安全上の問題でなく、品質や性能上の瑕疵にとどまる場合も製造物責任法上の責任は発生しない
⑨ 製造物責任法に基づく損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および賠償義務者を知ったときから3年間行わないときは時効によって消滅する。また、10年を経過したときも除斥期間の経過で消滅する。10年の除斥期間の起算点は、原則として、㋐製造業者等が当該製造物を引き渡したときであるが、アスベストによる肺気腫の被害のように、㋑人の身体に長期間にわたって蓄積されていき、一定量以上になると発症する場合は、症状が現れ損害が発生したときであり、㋒一定の潜伏期間が経過したあと発症する潜伏損害の場合も、症状が現れ損害が発生したときから起算する

【解説と解答】

単なる販売業者は製造業者とはなりませんが、輸入品については輸入した者が製造業者になると明記されています。販売業者が直接輸入していた場合は製造業者ということになります。輸入品を輸入業者から仕入れて販売するだけでは単なる販売業者ということになります。

製造者として製品に名前が出てなくても、製造した業者も当然製造業者になります。
また、実際に製造していなくても、自社の名前を表示した場合は製造業者となります。
これらは、いわゆるOEMのことで、国内でも多くの製品で他者に製造依頼して自社のブランド名を表示しています。
どちらも製造者ということになりますね。裁判のときにどちらが被告となるのかは、それぞれのメーカーがどのような関係になっているのかで違ってくると思います。
ということで、⑥は㋐が不正解です。

3  この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一  当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二  自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三  前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者


免責についての設問です。
免責には2つ規定されており、そのうちの1つですが、「世界最高水準の科学知識等」と解釈されており、実質的には適用は困難です。
なお、裁判ではときどき、「当時の科学的知見では」という文言が出てくる判例もありります。
ということで、⑦はすべて正解です。

(免責事由)
第四条  前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一  当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。


③でも解説したとおり、民法も適用することになるので、当然不法行為による慰謝料は請求することができます。

製造物責任法の賠償責任が認められる3つの条件(①欠陥の存在②損害の発生③欠陥と損害との因果関係)のうち、
第1条の「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」の被害というのは欠陥のあった製品以外の損害、いわゆる拡大損害のことを意味します。拡大損害はしっかり覚えておいてください。
拡大損害がないと2番目の損害の発生という条件が満たされなくなりますが、当然ながら民法等の他の法律の適用を考えたらいいことになります。
また、欠陥というのは「通常有すべき安全性」のことであり、いわゆる品質や性能といった「品質問題」は欠陥には該当しません。
ということで、⑧は㋐が不正解となります。

製造物責任法Q&A・・・http://www.consumer.go.jp/kankeihourei/seizoubutsu/pl-j.html問4 安全性に係わる欠陥による被害であれば,すべて,この法律による損害賠償の請求権が認められるのですか。
答え 欠陥による被害が,その製造物自体の損害にとどまった場合であれば,この法律の対象になりません。このような損害については,従来どおり,現行の民法に基づく瑕疵担保責任や債務不履行責任等による救済が考えられます。この法律による損害賠償の請求権が認められるのは,製造物の欠陥によって,人の生命,身体に被害をもたらした場合や,欠陥のある製造物以外の財産に損害が発生したとき(「拡大損害」が生じたとき)です。
問5 それでは,製品関連事故によって被害が生じた場合に,この法律に基づく損害賠償を受けるためにはどうすればいいのですか。
答え この法律に基づいて損害賠償を受けるためには,被害者が,1)製造物に欠陥が存在していたこと,2)損害が発生したこと,3)損害が製造物の欠陥により生じたことの3つの事実を明らかにすることが原則となります。なお,これらの認定に当たっては,個々の事案の内容,証拠の提出状況等によって,経験則,事実上の推定などを柔軟に活用することにより,事案に則した公平な被害者の立証負担の軽減が図られるものと考えられます。
損害賠償を求める場合の請求先としては,その製品の製造業者,輸入業者,製造物に氏名などを表示した事業者であり,単なる販売業者は原則として対象になりません。
なお,問2でも触れたように,本法による損害賠償責任請求が認められない場合であっても,現行の民法に基づく瑕疵担保責任,債務不履行責任,不法行為責任などの要件を満たせば,被害者はそれぞれの責任に基づく損害賠償を請求することができます


除斥期間の問題です。
時効については民法のところでも解説しましたが、おさらいします。
不法行為・・・損害および加害者を知ったときから3年または不法行為が行われた時から20年
製造物責任・・・損害および加害者を知ったときから3年または引き渡した時から10年

設問にある潜伏期間のある被害については、第5条に明記されています。
ということで、⑨はすべて正解です。

(期間の制限)
第五条  第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。
2  前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する
製造物責任法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H06/H06HO085.html

(目的)
第一条  この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう
2  この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう
3  この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一  当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二  自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三  前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

(製造物責任)
第三条  製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

(免責事由)
第四条  前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一  当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二  当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

(期間の制限)
第五条  第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。
2  前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する

(民法 の適用)
第六条  製造物の欠陥による製造業者等の損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法 (明治二十九年法律第八十九号)の規定による。

附 則 抄

(施行期日等)
1  この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行し、その法律の施行後にその製造業者等が引き渡した製造物について適用する。

解答一覧

⑦→×㋐、⑦→○、⑧→×㋐、⑨→○