14.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

⑦ 宅地建物取引業法上の宅地建物取引業者が消費者に突然電話をして投資用マンションの勧誘を行い、後日、自宅に赴いて売買契約を締結した場合、消費者は㋐特商法に基づくクーリング・オフはできないが、事業者には㋑同法に基づく書面交付義務はある。宅地建物取引業の登録をしていない不動産業者が同様の勧誘を行った場合には、消費者は㋒特商法に基づくクーリング・オフができる余地がある
⑧ 高校を卒業した浪人生のみを対象とした学力の教授を内容とする契約は、㋐特定継続的役務提供にはあたらない。これに対し、浪人生と高校生が混ざったクラスを対象とする学力の教授を内容とする契約は、㋑特定継続的役務提供にあたり得る。この場合、受講者が支払う金額は㋒5万円を超える必要がある。クーリング・オフ期間は㋓8日間である。

【解説と解答】

適用除外の問題です。
基本的な適用除外事項として、他の法律で同様の規制がある場合は、そちらの法律が適用されます。代表的な法律が26条に列挙されており、そのなかに宅建業法も含まれます。したがって、特商法に基づくクーリングオフはできませんし、特商法に基づく書面交付義務もありませんが、宅建業法37条による書面交付義務があります。

宅地建物取引業の登録をしていない不動産業者の場合は宅建業法が適用されませんので、一般的な法律、すなわち、特商法や消費者契約法が適用されることになります。したがって、電話のアポイントメントセールスでの訪問販売による契約となるので、規制事項が守られていない場合はクーリングオフが可能です。
ということで、⑦は㋑が不正解です。

特定商取引に関する法律・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51HO057.html

第五節 雑則
(適用除外)
第二十六条
八  次に掲げる販売又は役務の提供
イ 金融商品取引法 (昭和二十三年法律第二十五号)第二条第九項 に規定する金融商品取引業者が行う同条第八項 に規定する商品の販売又は役務の提供、同条第十二項 に規定する金融商品仲介業者が行う同条第十一項 に規定する役務の提供、同項 に規定する登録金融機関が行う同法第三十三条の五第一項第三号 に規定する商品の販売又は役務の提供、同法第七十九条の十 に規定する認定投資者保護団体が行う同法第七十九条の七第一項 に規定する役務の提供及び同法第二条第三十項 に規定する証券金融会社が行う同法第百五十六条の二十四第一項 又は第百五十六条の二十七第一項 に規定する役務の提供
ロ 宅地建物取引業法 (昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第三号 に規定する宅地建物取引業者(信託会社又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律 (昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項 の認可を受けた金融機関であつて、宅地建物取引業法第二条第二号 に規定する宅地建物取引業を営むものを含む。)が行う宅地建物取引業法第二条第二号 に規定する商品の販売又は役務の提供
ハ 旅行業法 (昭和二十七年法律第二百三十九号)第六条の四第一項 に規定する旅行業者及び同条第三項 に規定する旅行業者代理業者が行う同法第二条第三項 に規定する役務の提供
ニ イからハまでに掲げるもののほか、他の法律の規定によつて訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売における商品若しくは指定権利の売買契約又は役務提供契約について、その勧誘若しくは広告の相手方、その申込みをした者又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益を保護することができると認められる販売又は役務の提供として政令で定めるもの

参考までに、不動産の場合、一般的に宅建業法に基づく売買契約書に契約の解除について定められていますので、契約に基づいての「解除」になります。定めのあるときは書くことになっていますので、もし契約書に書かれていない場合は、民法557条の規定を適用することになるかもしれないので、不動産の解約手付けや債務不履行については法律解釈でもっと深い部分があります。

宅地建物取引業・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S27/S27HO176.html

(用語の定義)
第二条  この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
二  宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行なうものをいう。

(書面の交付)
第三十七条  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない
一  当事者の氏名(法人にあつては、その名称)及び住所
二  当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
三  代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法
四  宅地又は建物の引渡しの時期
五  移転登記の申請の時期
六  代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的
七  契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
八  損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
九  代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合においては、当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
十  天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
十一  当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容
十二  当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容
2  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の貸借に関し、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一  前項第一号、第二号、第四号、第七号、第八号及び第十号に掲げる事項
二  借賃の額並びにその支払の時期及び方法
三  借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的
3  宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、取引主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。

この設問の背景として、投資用不動産の強引な電話勧誘が社会問題になったという事件が関係しています。
従来は、宅建業者でなければ特商法により再勧誘の禁止がいえますが、宅建業者の場合、宅建業法に再勧誘の禁止について明確な規定がありませんでしたが、平成23年10月に法律の改正があり、再勧誘の禁止が明文化されました。

宅地建物取引業法施行規則の一部改正について 平成23年8月31日

http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000060.html
「規制・制度改革に関する方針について」(平成23年4月8日閣議決定)等を踏まえ、宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)の一部について、所要の改正を行いましたのでお知らせいたします。◆悪質な勧誘行為の禁止
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第47条の2第3項に基づき、同法施行規則第16条の12において、宅地建物取引業者等の勧誘行為について、相手方等を困惑させることが禁止されていますが、今般、宅地建物取引に係る悪質な勧誘行為の実態調査の結果を踏まえ、以下の事項を明文化する等の改正を行いました。
・勧誘に先だって宅地建物取引業者の商号又は名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うことを禁止
・相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続することを禁止
・迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問による勧誘を禁止
◆スケジュール
公布  平成23年8月31日
施行  平成23年10月1日


特商法の特定継続的役務に関する定義の基本です。
浪人生だけは対象外です。浪人生と現役生が混ざっている場合は対象となります。特定継続的役務には期間と金額が決まっており、金額は一律5万円を超えるものですが、期間は異なっており、今回の「いわゆる学習塾は」は2ヶ月を超えるものとなっています(エステだけが1ヶ月で他は2ヶ月)。また、クーリングオフの期間は8日間です。
ということで、⑧はすべて正解です。

特定商取引に関する法律・解説(平成21年版)・・・http://www.no-trouble.go.jp/#1259300931251

264ページ
④ 入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための学校教育法第1条に規定する学校(大学及び幼稚園を除く。)の児童、生徒又は学生を対象とした学力の教授(役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る。)
いわゆる学習塾の役務である。中学校、高等学校、大学、専修学校、各種学校等の入学試験に備えるため、又は小学校、中学校、高等学校の学校教育の補習のための学力の教授であって、小学生、中学生、高校生等を対象としていわゆる学習塾等において提供されるものである。
本項の役務は、小学生、中学生、高校生等を対象としたものに限られ、したがってもっぱらいわゆる浪人生等こうした児童、生徒又は学生以外の者のみを対象とした役務は除外される。(ただし、これら双方を対象とする役務については、全体としてここに掲げる役務に該当する。)

特定商取引に関する法律施行令・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51SE295.html

(特定継続的役務提供の期間及び金額)
第十一条  法第四十一条第一項第一号 の政令で定める期間は、別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第二欄に掲げる期間とする。
2  法第四十一条第一項第一号 の政令で定める金額は、五万円とする。

解答一覧

⑦→×㋑、⑧→○