9.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。
【解説と解答】
④
いきなり「意思表示」に下線が引かれていますが、民法上の意思表示とは「法律効果が発生するという効果意思を、他人に知らせたいという表示意思を持って、外部に表示する表示行為を行うこと」です。ウィキペディアが参考になります(意思表示)。
代理行為による法律行為は民法第3節99条から118条に規定されています。それだけ重要ということでしょうね。
代理権には、本人から代理権が与えられる任意代理というのと法律の規定による法定代理の2種類があります。
任意代理は、例えば、「この本を買ってきて」と1000円渡してお願いするようなイメージを考えていただいたら分かりやすいです。
法定代理は、未成年者の契約を親権者がしたり、相続財産の管理人のように裁判所から選任されたりする場合などです。
ともに、代理人がした行為は本人がした行為となります。ただし、代理行為の瑕疵や制限などトラブル回避のための複雑な規定があります。
ということで、④はすべて正解です。
⑤
時効です。覚えるしかないです。時効の期間については民法ゆるめ、特別法きつめ、となっていますので、同じ時効でも適用する法律により時効の期間が変わってきますので、その違いをしっかり覚えておいてください。
口語民法にも分かりやすい解説と表が掲載されていますが、債権の10年時効には多くの例外があります。
そのなかでも、商行為から生じた債権は原則として5年(商法522条)となります。
問題にある民法724条による不法行為のの損害賠償請求は条文にあるとおり、3年です。また、不法行為から20年経過したときに時効になりますが、この20年を「除斥期間」といいます。除斥期間は民法の条文上には出てきません。除斥期間は消滅時効と対比されることがあり、実は難解な問題点となっているようです。
除斥期間の起算点は権利の発生日で期間が中断されることなく固定されており、裁判所が判断することができます。
ということで、知ったときから2年ではなく3年となるので、⑤は㋑が不正解となります。
細かい期間を問題にするとは意地悪ですね。
⑥
約款についての問題です。約款の定義としては問題文中にもあるとおり、「多数取引の画一的処理のため、あらかじめ定型化された契約条項」です。
約款といえば具体的にどんな契約をイメージしますか?
保険契約、通信契約、電気ガス契約、旅行契約など多数あります。私たちは日常的に約款を使用しています。
そもそも約款を使用しないとなると、事業者が契約するに際して、任意規定として、契約者と細かいところまで合意して契約しなければならず事実上不可能です。
そこで統一的な約款を作成しています。
便利な反面、こっそり不利益となる条項が書かれている場合もあります。
そのような背景から相談現場でも約款を確認するという場面は頻繁です。
さて、このような約款は事業者と消費者だけでなく、事業者と事業者でも日常的に契約されていることは分かりますよね。
この問題で判例として保険契約が例に出されています。22年度の試験もほぼ同じ内容でした。
約款の法的拘束力を認める場合の根拠について議論がありますが、判例では、「意思推定説(当事者が約款によらない旨の意思表示をせずに契約したときは、その約款による意思で契約したと推定すべきである)」との立場で、「大正4年」のものが踏襲されています。
また、ウの出題する意味が不明確ですが、消費者契約法では約款の「契約条項のうち約款の不当条項のみを対象」とありますが、「不当条項」だけでなく「契約 事項に錯誤があれば無効を主張できるのでは、と解釈して間違いとします。もともと、「のみを対象」という出題方式は間違っていることが多いですね。
というわけで、⑥は㋒が不正解だと思います。
消費者契約法と約款についての係争中の裁判があり注目です。