9.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

⑦ 取締規定とは、行政上の取締目的に基づき一定の行為を㋐禁止しまたは義務付けることなどを定める規定をいう。取締規定に反する契約がなされた場合、㋑その契約は無効とされ、㋒その違反者には行政処分等の制裁が科されるのが通例である。
⑧ 民法によれば、㋐当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定する特約を設けることができ、その場合、裁判所はその額を増減することはできないとされているが、消費者契約法第9条は、消費者の利益擁護の見地から、事業者が消費者に請求する場合に限って、損害賠償額の予定条項について効力を制限する規定をおいている。これによれば、㋑ホテルのキャンセル料を定めた条項は、そのキャンセル料が平均的な損害の額を超える限度で同条により無効とされ、また、㋒貸衣装の返却が遅れた場合の延滞料条項も、その延滞料が平均的な損害の額を超える限度で同条により無効とされる
⑨ 特定の目的物の売買において、その給付された目的物に瑕疵(かし)があり、その瑕疵が「隠れた」瑕疵、㋐すなわち売主から買主に告げられていない瑕疵であったときは、買主は、民法の瑕疵担保責任の規定に基づいて、㋑売主の過失の有無を問わず、売主に対して損害賠償の請求をすることができ、その瑕疵のために契約をした目的を達することができないときは、契約を解除することもできる。㋒これらの権利は、買主が瑕疵を知ったときから1年以内に行使しなければならない

【解説と解答】

「取締規定」の定義は取締という文言からも想像がつくように行政上の取締で設問にあるとおりの説明です。
問題となるのは違反する行為がされたときにその効力は有効であるかどうかという話です。
身近なもので考えてください。
飲食店が無許可営業であった場合はもちろん「取締規定」に違反することになり行政的な罰則を受けることになりますが、では、その飲食店で飲食したという 「売買契約」そのものも無効となるのでしょうか?無効にはならないですね。民法では契約は自由に行えます。売買契約と取締規定は別個のものと考えてくださ い。
ただし、公序良俗(民法90条)に違反する場合は、「法律行為」も無効になるという例外があります。たとえば、違法な薬物を販売すれば取締規定に違反しますが売買契約も公序良俗により違法となるというのを想像していただければ分かりやすいと思います。
すると、普通の売買契約においても基本的には同じ考え方であるので、取締規定に反する契約がなされた場合は、行政的な罰則が適用されるが、契約自体は無効とはなりません。したがって、⑦は㋑が不正解です。


民法
第二節 債権の効力
第一款 債務不履行の責任等(第四百十二条―第四百二十二条)
に債務不履行が規定されています

民法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html

(賠償額の予定)
第四百二十条  当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない
2  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3  違約金は、賠償額の予定と推定する。

消費者契約法の不当条項で損害賠償額が平均的な損害を超える場合は無効であるというのはご存知だと思います。
設問では2つの事例があり、無効であるかどうか判断されることになります。民法といいながら消費者契約法の問題になっていますね。
「ホテルのキャンセル料の条項」と「貸衣装の延滞料の条項」です。
実は両方無効になると思いましたが、違っており、悩みました。
22年度の問題でも「レストランのキャンセル料条項やビデオレンタル延滞料は、同条の規制対象からはずされている」の解説の一部が間違っていました。
ホテルのキャンセル料は「平均的な損害を超える場合は無効である」で正解だと思います。
実は、貸衣装の延滞料はビデオの延滞料で判例があるように、不当条項の中の「平均的損害」という考え方ではなく、延滞料が「金銭債務の遅延損害金の年利14.6パーセントを超える分」は無効であるという考え、もしくは、暴利をむさぼるのは消費者の利益を一方的に害するという考え方でいいと思います。
すなわち、ホテルのキャンセル料が平均的損害を超える場合は消費者契約法9条1が該当しますが、貸衣装の延滞料の場合は14.6%を超える部分は消費者契約法9条2または10条に該当します。
したがって、⑧は㋒が不正解となります。

消費者契約法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H12/H12HO061.html

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

なお、貸衣装やビデオの損害額の上限は無限に延滞料が加算されるのではなく新品の購入費用になります。購入価格を超える延滞料金は消費者契約法10条に違反すると考えます。
(参考)東京都港区のHPに分かりやすく解説されています。
ホーム > 暮らし・手続き > 消費生活 > 消費者契約法が適用された具体的な事例
http://www.city.minato.tokyo.jp/shouhisha/kurashi/shohi/jire.html

⑨は瑕疵担保責任の問題です。
イとウについては正解であることは分かりますよね。
アの設問がいまいち分かりにくいですね。
「隠れた瑕疵」の意味が単純に「売主から買主に告げられていない瑕疵」であっているのかどうかでということだとすると、正解のような気がしますが、解答では不正解になっています。悩む。
本来、「隠れた瑕疵」は契約時に買主が知らなかった瑕疵のことであり、その瑕疵については売主が知ってても知らなくても対象となるので、「売主から買主に告げられていない瑕疵」は「売主が瑕疵を知っていて買主に告げていない」と限定解釈したうえで、「隠れた瑕疵」はそれだけではなく、「売主が知らなかったために買主に告げていない」瑕疵についても対象となるので、「売主が瑕疵を知っていて買主に告げていない」だけではないので不正解である、としか考えられません。
分かりませんが、そういう意味で考えて⑨は㋐が不正解としておきます。

民法

(売主の瑕疵担保責任)
第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

解答一覧

⑦→×㋑、⑧→×㋒、⑨→×㋐