9.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

④ 契約の㋐意思表示は、本人に代わって他の人が行うこともできる。代理によって本人に効果を帰属させるためには、その代理行為をする者に代理権があることが必要である。その代理権が㋑本人の意思によって与えられる場合を任意代理といい、㋒本人の意思によるのではなく、法律の規定または法律の定める手続によって与えられる場合を法定代理という。
⑤ 債権は、権利を行使することができるときから一定期間経過すると、時効により消滅する。㋐債権の一般的時効期間は10年とされているが、商事債権については5年とされている。また、不法行為による損害賠償請求権については、㋑民法第724条により被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから2年間行使しないときは時効によって消滅し、さらに、不法行為のときから20年を経過したときも、同様に消滅すると規定している。この20年の期間は㋒除斥期間と解されている。
⑥ 多数取引の画一的処理のため、あらかじめ定型化された契約条項を一般に約款という。㋐消費者契約においては約款が用いられることが多いが、事業者間契約においても約款が用いられることがある。約款が当事者を拘束するための要件および法的根拠については議論があるが、判例には、保険契約における約款に関して、㋑「約款による」との顧客の意思が推定されるとしたものがある。㋒消費者契約法は、消費者契約における契約条項のうち約款の不当条項のみを対象にして、不当条項規制の規定を設けている

【解説と解答】

いきなり「意思表示」に下線が引かれていますが、民法上の意思表示とは「法律効果が発生するという効果意思を、他人に知らせたいという表示意思を持って、外部に表示する表示行為を行うこと」です。ウィキペディアが参考になります(意思表示)。
代理行為による法律行為は民法第3節99条から118条に規定されています。それだけ重要ということでしょうね。
代理権には、本人から代理権が与えられる任意代理というのと法律の規定による法定代理の2種類があります。
任意代理は、例えば、「この本を買ってきて」と1000円渡してお願いするようなイメージを考えていただいたら分かりやすいです。
法定代理は、未成年者の契約を親権者がしたり、相続財産の管理人のように裁判所から選任されたりする場合などです。
ともに、代理人がした行為は本人がした行為となります。ただし、代理行為の瑕疵や制限などトラブル回避のための複雑な規定があります。
ということで、④はすべて正解です。


時効です。覚えるしかないです。時効の期間については民法ゆるめ、特別法きつめ、となっていますので、同じ時効でも適用する法律により時効の期間が変わってきますので、その違いをしっかり覚えておいてください。

民法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html

(債権等の消滅時効)
第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

口語民法にも分かりやすい解説と表が掲載されていますが、債権の10年時効には多くの例外があります。
そのなかでも、商行為から生じた債権は原則として5年(商法522条)となります。
問題にある民法724条による不法行為のの損害賠償請求は条文にあるとおり、3年です。また、不法行為から20年経過したときに時効になりますが、この20年を「除斥期間」といいます。除斥期間は民法の条文上には出てきません。除斥期間は消滅時効と対比されることがあり、実は難解な問題点となっているようです。
除斥期間の起算点は権利の発生日で期間が中断されることなく固定されており、裁判所が判断することができます。
ということで、知ったときから2年ではなく3年となるので、⑤は㋑が不正解となります。
細かい期間を問題にするとは意地悪ですね。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条  不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
覚えておくべき時効(消費生活アドバイザー受験合格対策より)

製造物責任・・・損害および加害者を知ったときから3年または引き渡した時から10年
不法行為責任・・・損害および加害者を知ったときから3年または不法行為が行われた時から20年
債務不履行責任・・・知った時から10年
瑕疵担保責任・・・知った時から1年


約款についての問題です。約款の定義としては問題文中にもあるとおり、「多数取引の画一的処理のため、あらかじめ定型化された契約条項」です。
約款といえば具体的にどんな契約をイメージしますか?
保険契約、通信契約、電気ガス契約、旅行契約など多数あります。私たちは日常的に約款を使用しています。
そもそも約款を使用しないとなると、事業者が契約するに際して、任意規定として、契約者と細かいところまで合意して契約しなければならず事実上不可能です。
そこで統一的な約款を作成しています。
便利な反面、こっそり不利益となる条項が書かれている場合もあります。
そのような背景から相談現場でも約款を確認するという場面は頻繁です。
さて、このような約款は事業者と消費者だけでなく、事業者と事業者でも日常的に契約されていることは分かりますよね。
この問題で判例として保険契約が例に出されています。22年度の試験もほぼ同じ内容でした。
約款の法的拘束力を認める場合の根拠について議論がありますが、判例では、「意思推定説(当事者が約款によらない旨の意思表示をせずに契約したときは、その約款による意思で契約したと推定すべきである)」との立場で、「大正4年」のものが踏襲されています。
また、ウの出題する意味が不明確ですが、消費者契約法では約款の「契約条項のうち約款の不当条項のみを対象」とありますが、「不当条項」だけでなく「契約 事項に錯誤があれば無効を主張できるのでは、と解釈して間違いとします。もともと、「のみを対象」という出題方式は間違っていることが多いですね。
というわけで、⑥は㋒が不正解だと思います。

消費者契約法と約款についての係争中の裁判があり注目です。

「保険料の払込猶予期間内に保険料の払込がないときは保険契約が失効する旨の保険約款は、消費者契約法10条の規定に照らして、その効力を生じない。」とした係争で平成21年9月に高裁で判決「約款は消費者の利益を一方的に害しており、消費者契約法に反する」として約款を無効と判断。
判決などによると、男性は04年8月と05年3月、2件の生命保険契約を締結し、月額計約1万6千円の保険料を支払っていたが、07年1月分を、猶予期限の2月末時点までに支払えず、契約が失効した。
裁判長は「意に反して契約が終了した場合の契約者の不利益の度合いは極めて大きい」と指摘。「信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する」
とした。
(ただし、平成24年3月に最高裁で、「差し戻し」の判決が出ています。)

 

解答一覧

④→○、⑤→×㋑、⑥→×㋒