22.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

⑥ 破産手続において、破産者が換価処分等せずに保有できる財産を自由財産というが、これには、㋐99万円までの現金、差押禁止財産、破産者が破産手続開始決定後の原因で取得した財産等がある。㋑自由財産以外の財産は換価処分等を求められるが、㋒原則は自由財産でない財産でも、自由財産の範囲を拡張する決定を得て、これを保有することができる場合がある
⑦ 個人破産で免責許可の申立てがあった場合に、法律上の免責不許可事由がない限り、裁判所は㋐免責許可決定をしなければならない。これに対して、免責不許可事由がある場合には、裁判所は㋑免責不許可決定をしなければならない。法律上の免責不許可事由としては、㋒浪費やギャンブルなどによって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担した場合などがある
⑧ 個人破産では、免責許可決定を受けても免責されない債権があり、㋐租税等の請求権、㋑過失による不法行為で他人の財産に損害を与えた場合の損害賠償請求権はその例である。㋒個人再生手続においても、再生計画が認可されても減免の対象にならない債権がある

【解説と解答】
22年度に比べると格段にやさしくなっています。
22年度の解説もあわせて勉強しておいてください。


個人の破産者のすべての財産を換価すると破産者は生活できなくなるので、一定の財産については自由財産として、保持することができます。
自由財産以外の財産については破産財産とすると定められています。
自由財産については破産法第34条第3項に定められています。
第34条第1項第1号の金額は民事執行法第131条第3号に2か月分の生活費となっており、そこから計算した額が「99万円までの現金」となります。
ただし、99万円の現金を保有している破産者はあまりおらず、預金や保険・自動車などの違う形で保有していることがあります。それらを、裁判所の判断で99万円相当(裁判所によって異なる)まで自由財産とする制度があり、それが破産法第34条第4項で定められている「自由財産拡張制度」です。
ということで、⑥はすべて正解です

破産法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO075.html

(破産財団の範囲)
第三十四条  破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2  破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3  第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
一  民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号 に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二  差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項 (同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
4  裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
5  裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
6  第四項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
7  第四項の決定又は前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。

民事執行法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S54/S54HO004.html

(差押禁止動産)
第百三十一条  次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一  債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二  債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三  標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
(以下省略)


個人破産(自己破産)、特に多重債務者の場合は目的は免責にあります。
破産手続きは破産者の財産を債権者に配当する手続のことであり、破産しただけでは負債が免責されることはありません。
免責決定を受けて初めて、負債が免責されます。
ただし、誰でも免責決定を受けられるということはなく、免責不許可事由があれば、免責不許可となります。
ただし、免責不許可事由があっても、程度によって裁量的に免責されることが多数のようです。
したがって、⑦は㋑が不正解となります。
ちなみにギャンブルによるものは免責されないですが、遠因としての場合は免責されることがあります。

破産法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO075.html

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条  裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする
一  債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二  破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三  特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四  浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五  破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六  業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七  虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八  破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九  不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十  次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項 (同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一  第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2  前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
(以下省略)


個人破産でも、税金など免責されない債権があり、破産法253条に定められています。
不法行為による損害賠償請求権は、重大な過失や悪意によるものは免責されませんが、単純な過失は認められるということですね(少し納得かない設問の表現です)。
したがって、⑧は㋑が不正解となります。

(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条  免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一  租税等の請求権
二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三  破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五  雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六  破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七  罰金等の請求権
2  免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
3  免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。
民事再生法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO225.html

(再生計画による権利の変更の内容等)
第二百二十九条  小規模個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権の弁済の時期若しくは第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を除き、再生債権者の間では平等でなければならない。
2  再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予については、前項の規定により別段の定めをする場合を除き、次に定めるところによらなければならない。
一  弁済期が三月に一回以上到来する分割払の方法によること。
二  最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
3  第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない
一  再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二  再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
4  住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第一項の規定を、住宅資金特別条項については第二項の規定を適用しない。

解答一覧

⑥→○、⑦→×㋑、⑧→×㋑