22.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

① 金銭の貸付けにつき、利息制限法の制限金利を超える利息の契約をした場合、㋐それだけで直ちに貸付けの契約自体が無効となるのではなく、制限超過部分の利息の契約が無効となる。判例によれば、弁済すべき元本が残存する場合、支払った制限超過利息は、㋑まず元本に充当され、計算上元本が完済となったのちに支払った金額は、過払金としてその返還を請求できる。高金利の契約によって貸付けの契約自体が無効になる場合については㋒貸金業法等に定めがある
② 利息制限法は、㋐保証料については一切制限を設けていない。同法は、金銭の貸付契約の債務不履行による賠償額の予定については制限を設けており、㋑制限超過部分の賠償額の予定の契約を無効としているが、その制限の元本に対する割合は㋒利息の制限利率と全く同じではない
③ 出資法の上限金利を超える利息を㋐契約しただけでは刑事処罰の対象とならないが、これを㋑要求する行為は刑事処罰の対象となり、㋒受け取る行為も刑事処罰の対象となる
④ 利息制限法の制限金利と出資法の上限金利は完全には一致していないところ、貸金業者が、利息制限法の制限金利を超え、出資法の上限金利以下の金利で貸付けをした場合、㋐行政処分の対象になるが、㋑刑事処罰の対象にはならない
⑤ 貸金業法における過剰融資規制としてのいわゆる総量規制では、貸金業者は、借り手が個人の場合、㋐顧客の総借入残高が年収の3分の1を超える貸付けをすることが原則として禁止されており、㋑その違反は刑事処罰の対象となるが、㋒借り手が法人の場合にはいわゆる総量規制はない

【解説と解答】
貸金三法の問題ですが、細かいところをつつかれているようで難問かもしれません。○ばかりに見えてしまいます。


過払い金請求のことですのでアとイは正解ということはすぐに分かりますが、ウは悩みます。ただし、契約自体が無効になり原本も返還しなくてもよい」という話を聞いたことがあると思います。すると、何らかの法律で定められているのではと気がつきますが、何の法律か知らなくても、「貸金業法等」と「等」がついているので、オールマイティで何でもありの正解だと予想できます。迷うとすれば、契約が無効になるのは法律によるものなのか判例によるものかというところですね。
実は、貸金業法第42条に(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)が定められています。この場合、当然に違法な利息は払わなくてもいいことになりますが、元本については明確な定めがなかったところ、最高裁で元本の返還も不要との判例が2006年に出ています。
したがって、①はすべて正解です。

貸金業法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S58/S58HO032.html

第四章 雑則
(高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効)
第四十二条  貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつて金銭を交付する契約を含む。)において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする
2  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条の四第一項 から第四項 までの規定は、前項の利息の契約について準用する。


利息制限法の保証料は勉強をしていないと分からないですね。ここまで勉強する必要があるのかと思いますが、推測作戦でいけそうです。
保証料も金利の一つと考えると制限があるはずとしたらアが不正解ですね。ちなみに、イの制限超過部分は無効というのはまず正解でしょうし、延滞部分の利息は制限内であれば高くなってもOKという一般論でウもまず正解でしょう。単純にアが正解かどうかというところにポイントがあり、二者択一でアは不正解に分がありそうです。
ということで、アは第8条に、イは第7条に、ウは賠償額は例えば元本100万以上では年15%までであるが、賠償額は2割まではOKとなるので同じではないことが分かると思います。
したがって、②は㋐が不正解です。

利息制限法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO100.html

(利息の制限)
第一条  金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一  元本の額が十万円未満の場合 年二割
二  元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三  元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
(賠償額の予定の特則)
第七条  第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
2  第四条第二項の規定は、前項の賠償額の予定について準用する。

保証料の制限等)
第八条  営業的金銭消費貸借上の債務を主たる債務とする保証(業として行うものに限る。以下同じ。)がされた場合における保証料(主たる債務者が支払うものに限る。以下同じ。)の契約は、その保証料が当該主たる債務の元本に係る法定上限額(第一条及び第五条の規定の例により計算した金額をいう。以下同じ。)から当該主たる債務について支払うべき利息の額を減じて得た金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。


出資法のわけ分からない問題ですね。
これも一般論から推測する作戦でいくと、実行してしまえば刑事処罰の対象となると考えれば、あとは契約するだけの場合に刑事処罰があるかどうかの二者択一です。予測が難しいので勘ですね。
出資法第5条にどれも刑事処罰が課せられることが定められています。
したがって、③は㋐が不正解です。

出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO195.html

(高金利の処罰)
第五条  金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
2  前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
3  前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。


利息制限法違反は行政処分だけで刑事処罰がなく、出資法違反には刑事処罰がある、ということを押さえておいてください。
いわゆるグレーゾーン金利の一般的な話ですね。
したがって、④はすべて正解です。


改正貸金業法の総量規制の問題ですのでご存知の話だと思いますが、設問はひねりが入っています。
総量規制が年収の3分の1は知っていると思いますが、それを超えると刑事処罰にまではならないという直感はありますが、罰則を調べてみると、信用情報を使用した調査をせずに増額した場合は罰則があるということぐらいしか見つかりませんでした。
また、総量規制は個人顧客に対する規制なので法人は対象外であることは常識的でOKですね。
したがって、⑤は㋑が不正解となります。

貸金業法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S58/S58HO032.html

(過剰貸付け等の禁止)
第十三条の二  貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第一項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
2  前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。

第四十八条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一の四  第十三条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の場合において、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用した調査をせずに、同条第二項に規定する貸付けの契約を個人である顧客等と締結し、又は同条第五項に規定する極度方式基本契約の極度額を増額した者

解答一覧

①→○、②→×㋐、③→×㋐、④→○、⑤→㋑