13.次の文章の[   ]の部分に入れるのに最も適切な語句を、下記の語群の中から選び、解答用紙の解答欄にその番号を記入(マーク)しなさい。なお、同一記号には同一語句が入る。

【語 群】

1.契約解除 2.慰謝料 3.懲罰的賠償 4. 売買契約 5.工作物責任 6.説明責任 7.請負契約
8.20年間 9.相当因果関係 10.10年間 11.不動産媒介契約 12.不法行為責任
13.事実的因果関係 14.雨水の浸入を防止する部分 15.宅地建物取引業法
16.委任契約 17.瑕疵担保責任 18.建替費用相当額の損害賠償請求
19.耐火性能に関する部分 20.住宅の品質確保の促進等に関する法律

問題13 [ オ ]~[ キ ]

住宅を取得する契約には、大別して、マンションや建売住宅を購入する[ ア ]と注文住宅を建築する[ イ ]とがある。取得した住宅に欠陥があったときは、被害者は、直接の契約当事者である売主や工事請負人に対して、契約上の責任である[ ウ ]に基づき、修補請求や損害賠償請求ができる。建売住宅を購入した場合のように、買主と建築工事を行った施工業者との間に直接契約関係がない場合でも、買主は[ エ ]を追及することによって、直接施工業者に損害賠償を請求できる。このように[ エ ]は、直接契約関係がなくても追及できるので、買主と直接設計監理契約を締結していない設計者や監理者などを相手方とする場合の請求の根拠とすることができる。

損害賠償請求が認められる損害の範囲は、[ オ ]の範囲内の損害であるとされている。裁判例で認められているのは、補修費用のほか、補修期間中引越が必要ならば引越費用と仮住居費用、建築士の調査費用などである。被害の程度にもよるが、被害者の精神的苦痛を理由に[ カ ]を認めた裁判例も少なくない。注文住宅が新築されて注文主に引き渡されたが、欠陥の程度が著しく、技術的、経済的にみても、建て替えるほかはないと認められるときは、[ キ ]が認められるとするのが最高裁の判例である。

このような住宅の[ ウ ]に基づく損害賠償請求については、民法上の時効や除斥期間による権利行使の期間制限があり、また契約上短縮の特約がなされていることも多い。しかし、消費者保護の見地から、[ ク ]という法律によって、新築物件の瑕疵のうち、構造耐力上主要な部分と[ ケ ]については、引渡し後[ コ ]の[ ウ ]が義務付けられた。

【解説と解答】

語群をグループ分けします
1.契約解除 2.慰謝料 3.懲罰的賠償 18.建替費用相当額の損害賠償請求
4.売買契約 7.請負契約 11.不動産媒介契約 16.委任契約
5.工作物責任 6.説明責任 12.不法行為責任 17.瑕疵担保責任
8.20年間 10.10年間
9.相当因果関係 13.事実的因果関係
14.雨水の浸入を防止する部分 19.耐火性能に関する部分
15.宅地建物取引業法 20.住宅の品質確保の促進等に関する法律

建物の欠陥に関する損害賠償は、民法の世界でも昔から議論され、様々な説が唱えられています。また、判例も多く出ていますので、かなり整理されてきたのではないでしょうか。

欠陥住宅に限らず、一般論としての損害賠償請求における損害の範囲は、民法416条に債務不履行の損害賠償の範囲につて定められており、他の損害賠償にも準用されます。
条文中の「通常生ずべき損害の賠償」が、損害の範囲となり、この「通常発生する範囲内の損害」のことを「相当因果関係にある損害」といいます(口語民法より)
ということで、[ オ ]は「9.相当因果関係」が正解です。

民法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

「被害者の精神的苦痛」とくれば、素直に「慰謝料」となります。
したがって、[ カ ]は 「2.慰謝料」が正解です。
ただし、覚えておかなければならないのは裁判では財産的被害は財産的価値が回復されればよい、ということで、原則として慰謝料は認められていません。
しかし、欠陥住宅被害にあった場合、生活の本拠が脅かされるため、財産的被害だけでなく、精神的にも多大な負担を負ってしまうことがあるということで、最近の判例では慰謝料を認めることも多くなってきました。欠陥住宅による慰謝料請求の裁判例を研究してまとめてりる論文などもあります。
また、民法では「慰謝料」は民法710条の不法行為に規定されており財産以外の損害に対する賠償ということで「精神的苦痛による慰謝料」もここに含まれます。なお、慰謝料については債務不履行によるものも認められるのが通説ですが直接の条文にはなく、710条に絡めて慰謝料を請求することになります。
慰謝料を請求できる場合は「不法行為」と「債務不履行」と覚えておいたらいいと思います。

民法635条は請負契約の目的物に瑕疵があり、契約の目的を達することができない場合は「契約を解除」することができる。
というのもです。しかし、この条文には「ただし書き」があって、建築その他の土地の工作物については除外されています。なぜなら、住宅の一部に欠陥があったとしても、利用価値はあるのに建て替えすることは請負人に過酷で社会経済的な損失も大きいということになっています。
といっても、あまりにもひどい欠陥の場合には建て替えしか選択肢がなく、その場合には建て替え費用相当額が賠償されるという判例が出ています。
ということで、[ キ ]は 「18.建替費用相当額の損害賠償請求」が正解です。

最高裁判所・判例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=76100&hanreiKbn=02
損害賠償請求事件(平成14年09月24日・最高裁判所第三小法廷)
判示事項・・・
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合に注文者が請負人に対し建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することの可否
裁判要旨・・・
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
参照法条・・・
民法634条2項,民法635条

民法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html

(売主の瑕疵担保責任)
第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
(請負人の担保責任)
第六百三十四条  仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2  注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。
第六百三十五条  仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

解答一覧

オ→9、カ→2、キ→18