8.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

⑨ クリーニング事故賠償基準では、㋐洗たく物について事故が発生した場合、クリーニング業者はその責任があるかどうかにかかわらず、被害者に対して補償することとなっているが、㋑クリーニング業者が、事故の原因の一部が他の者の過失に基づくことを証明したときは、賠償額の支払いを免れることができ、㋒事故の責任を負うべき者が、倒産等の事情により、その者に対する求償が事実上不可能であることをクリーニング業者が証明したときは、賠償額の一部をカットすることができるとされている。
⑩ クリーニング事故賠償基準による賠償額の算定に関する基本方式は、㋐洗たく物が着用に耐えないとして、クリーニング業者が品物を引き取る場合の賠償額を算定する方式を示したものである。背広上下など、2点以上を一対としなければその着用が著しく困難な物品を一対としてクリーニングに出した場合、㋑その一部にのみ損害が生じたときであっても、一対のもの全体を考慮して賠償額を算定することとなっている。

【解説と解答】
22年度の解説を流用します。
22年度分と合わせて参照してください。
「クリーニング事故賠償基準」は一般の人は知らないと思います。しかし、消費者センターでは最重要な基準で、現場で知らなければ話になりません。現職受験者には日常用語ですが、それ以外の人にとっては難しいかもしれません。
クリーニングの苦情は多く、紛失や事故にあったときに、誰がどのような基準で弁償するかが定められています。
昔は民法の損害賠償でしか弁償してもらう手段がなかったのですが、それは手間がかかるので、国と業界が作った自主基準が「クリーニング事故賠償基準」です。自主基準でありながら、基本ルールとして扱われています。
基本的には組合に加入しているクリーニング店の自主基準ですが、未加盟のクリーニング店でも準用しています。

クリーニング事故賠償基準
(定 義)
第 2 条 この賠償基準において使用する用語は、つぎの定義にしたがうものとする。
(2) 「賠償額」とは、客が洗たく物の滅失破損により直接に受けた損害に対する賠償金をいう。
(5) 「補償割合」とは、洗たく物についての客の使用期間、使用頻度、保管状況、いたみ具合等による物品の価値の低下を考慮して、賠償額を調整するための基準であって、物品の再取得価格に対するパーセンテージをもって表示された割合をいう。
(過失の推定)
第3 条
洗たく物について事故が発生した場合は、その原因がクリーニング業務にあるかどうかを問わず、クリーニング業者が被害者に対して補償する。ただし、クリーニング業者がもっぱら他の者の過失により事故が発生したことを証明したときは、本基準による賠償額の支払いを免れる。
(賠償額の減縮)
第 6 条
クリーニング業者が、事故の原因の一部が他の者の過失にもとづくことを証明したときは、その者に対して求償することができるにとどまり、被害者に対しては本基準による賠償額の支払いを免れることができない。ただし、被害者の過失が事故の一因であることまたは事故の原因について責任を負うべき者が、倒産し、若しくはその事業所を外国に置いている等の事情により、その者に対する求償が事実上不可能なことをクリーニング業者が証明した時は、賠償額の一部をカットすることができる
2 クリーニング業者が賠償金の支払いと同時に事故物品を被害者に引き渡すときは、被害者の同意を得て賠償額の一部をカットすることができる。
3 クリーニング業者が洗たく物を受け取った日より90日を過ぎても仕事の完成した洗たく物を客が受け取らず、かつ、これについて客の側に責任があるときは、クリーニング業者は受け取りの遅延によって生じた損害についてはその賠償責任を免れる。
クリーニング事故賠償基準運用マニュアル

http://www.oc929.net/library/houki/unyo.html
1 目 的
クリーニングにおけるクレームは、複雑多岐にわたるため、あらゆる場合に適合する賠償基準を作成するとすれば、基準自体が複雑かつ膨大になるため賠償基準ではその大綱を示すにとどめている。
そこで、この運用マニュアルは、賠償基準を適用するための細目を定め、賠償基準の解釈のしかたや適用方法を解説することを主目的とし、あわせて賠償基準を適用する場合のモデルを示して、その円滑な運用をはかることを目的とする。
4 基準第4条について
(1)この規定は、洗たく物が着用に耐えないとして、クリーニング業者が品物を引き取る場合(全損またはみなし全損)の賠償額を算定する方式を示したものである
事故の程度が軽く、品物は客が引き取り、引き続き使用するが、品物の価値が減じた場合(部分損)には、その損害の割合を判定し、これを上記方式により算定した額に乗じて賠償額を決定する。
(2)賠償額算定の特例
背広上下など、2点以上を一対としなければその着用が著しく困難な物品については、その一部について損害が生じたときは、一対のもの全体を考慮して賠償額を算定する
ただし、客が一対のもののうち、1点だけをクリーニングに出した場合に、クリーニング業者がこれを知らなかったときは、その1点だけについて賠償額を算定することができる。

⑨は事故発生時の責任の一部がほかのものの過失にあるときの賠償額の支払いの一部減額についての問題で、賠償基準の第6条が該当します。
まず、第3条により、クリーニング業者の責任の有無を問わず、クリーニング店が賠償責任を負うという基本原則です。
そして、その原因が「もっぱら」他の物に責任があると証明したときは、第3条により賠償額の支払いをのがれることができます
ただし、その原因の「一部」が他の物に責任があると証明したときは、一部の支払いをのがれることができるとはならず、第6条により、被害者には全額支払う必要があるが、一部をその者に請求することができるとなっています。
すなわちクリーニング店が自分の責任ではない部分を責任の一部がある他の者と交渉することになり、交渉が上手くいけば一部を取り戻すことができるし、うまくいかなければ全額賠償しなければならないことになります。
ただ、現場ではなかなか上手くまとまらないのが現実です。
なお、倒産等で請求できない場合は一部カットすることができると定められています。
ということで、⑨は㋑が不正解です。

⑩は「クリーニング事故賠償基準運用マニュアル」にかかれている文章そのままですが、さすがに、一般の方はマニュアルの存在までは知らないと思います。
まあ、常識力でいけると思います。
「着用に耐えない」の解釈が焦点になります。すなわち、通常のクリーニングでおこる消耗的なことで、結果として「許容範囲」であれば問題がないということです。ただし、現場では、許容範囲かどうかという基準が消費者と事業者との間でギャップがありトラブルが大きくなります。基本的には消費者はクリーニングすれば新品と同じ状態に戻るという思いがあるからです。
また、上下物であれば当然セットで賠償されるものです。ただし、上下物だとは認識できなかった場合はのがれることができます。
ということで、⑩はすべて正解です。

クリーニング賠償基準は直接国のHPには掲載されていないようですが、各都道府県や組合などのHPに掲載されています。
東京都クリーニング生活衛生同業組合
東京都クリーニング生活衛生同業組合「クリーニング事故賠償基準」
http://www.tokyo929.or.jp/misc/post_2.php
「クリーニング事故賠償基準」全文
http://www.tokyo929.or.jp/pdf/cleaningjikorule.pdf

大阪府クリーニング生活衛生同業組合

http://www.oc929.net/
資料室>クリーニングに関する法律等
クリーニング事故賠償基準
http://www.oc929.net/library/houki/baisyo.html
クリーニング事故賠償基準運用マニュアル
http://www.oc929.net/library/houki/unyo.html

解答一覧

⑨→×㋑、⑩→○