1.次の文章のうち、正しいものには○、誤っているものには×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。また、誤っているものには、誤っている箇所(1カ所)の記号も記入(マーク)しなさい。

⑦ 政府は、㋐消費者政策の計画的な推進を図るため、消費者基本計画を定めなければならず、㋑消費者庁だけでなく、関係各省庁の施策を含めて、各分野の事業計画を策定し、㋒検証・評価に当たり消費者委員会の意見を聴くものとされている。
⑧ 消費者委員会は、㋐内閣府に設置された10人以内の委員からなる委員会であり、㋑内閣総理大臣等の諮問事項だけでなく自ら重要事項について調査審議できるものの、㋒消費者庁以外の省庁に対する提言や建議はできない
⑨ 内閣総理大臣は、多数消費者財産被害事態が発生した場合において、㋐被害の発生または拡大を防止する必要があると認めるときであって、㋑他の法律の規定に基づく措置がある場合を除き、㋒事業者に対し不当な取引の取りやめ等の措置をとるよう勧告・命令等を行う権限がある
⑩ 消費者基本法では、事業者の責務等として、消費者の安全、取引の公正を確保すること、㋐必要な情報を書面により提供すること、㋑消費者の知識、経験、財産状況等に配慮すること等の責務が定められているほか、㋒事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならないとされている。

【解説と解答】

消費者基本計画は消費者基本法で定められています。
消費者政策は「政府が」と書いてあるとおり、すべての省庁が関与する政策です。
条文には「消費者政策会議」と「消費者委員会」が出てくるので間違いやすいかもしれませんが、「消費者政策会議」は直接消費者基本計画を作るところで、「消費者委員会」は助言するところと考えたら分かりやすいと思います。消費者委員会はあまり多くの仕事をする余裕はないので計画を作るという大きなことはできません。
ということで、⑦はすべて正解です。

消費者基本法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S43/S43HO078.html

(消費者基本計画)
第九条  政府は、消費者政策の計画的な推進を図るため、消費者政策の推進に関する基本的な計画(以下「消費者基本計画」という。)を定めなければならない。
2  消費者基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一  長期的に講ずべき消費者政策の大綱
二  前号に掲げるもののほか、消費者政策の計画的な推進を図るために必要な事項
3  内閣総理大臣は、消費者基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4  内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があつたときは、遅滞なく、消費者基本計画を公表しなければならない。
5  前二項の規定は、消費者基本計画の変更について準用する。

第四章 消費者政策会議等
(消費者政策会議)
第二十七条  内閣府に、消費者政策会議(以下「会議」という。)を置く。
2  会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  消費者基本計画の案を作成すること。
二  前号に掲げるもののほか、消費者政策の推進に関する基本的事項の企画に関して審議するとともに、消費者政策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視すること。
3  会議は、次に掲げる場合には、消費者委員会の意見を聴かなければならない
一  消費者基本計画の案を作成しようとするとき。
二  前項第二号の検証、評価及び監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとするとき。


消費者委員会に関する事項は、消費者庁が設置されたときの法律に規定されています。
設問は条文どおりです。
ポイントとしては消費者委員会が「内閣府」にあるということで、「消費者庁」にあるなどの引っ掛け問題に気をつけることです。
消費者施策は縦割り行政をなくし、他の省庁とも連携していくことから、消費者庁以外の省庁とも連携するということを理解しておいてください。
今回のテクニックとしては、「アであり、イであるが、ウはできない」という出題パターンで、ウが間違っているというパターンが多いことを迷たっときのヒントにしたらいいと思います。
ということで、⑧は㋒が不正解です。

消費者庁及び消費者委員会設置法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO048.html

第三章 消費者委員会
(設置)
第六条  内閣府に、消費者委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く。
2  委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  次に掲げる重要事項に関し、自ら調査審議し、必要と認められる事項を内閣総理大臣、関係各大臣又は長官に建議すること。
イ 消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策に関する重要事項
ロ 消費者の利益の擁護及び増進を図る上で必要な環境の整備に関する基本的な政策に関する重要事項
ハ 景品類等の適正化による商品及び役務の消費者による自主的かつ合理的な選択の確保に関する重要事項
ニ 物価に関する基本的な政策に関する重要事項
ホ 公益通報者の保護に関する基本的な政策に関する重要事項
ヘ 個人情報の適正な取扱いの確保に関する重要事項
ト 消費生活の動向に関する総合的な調査に関する重要事項
二  内閣総理大臣、関係各大臣又は長官の諮問に応じ、前号に規定する重要事項に関し、調査審議すること。
三  消費者安全法第四十三条 の規定により、内閣総理大臣に対し、必要な勧告をし、これに基づき講じた措置について報告を求めること。
四  消費者基本法 、消費者安全法 (第四十三条を除く。)、割賦販売法 、特定商取引に関する法律 、特定商品等の預託等取引契約に関する法律 、食品安全基本法 、消費者教育の推進に関する法律 、不当景品類及び不当表示防止法 、食品衛生法 、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 、家庭用品品質表示法 、住宅の品質確保の促進等に関する法律 、国民生活安定緊急措置法 (昭和四十八年法律第百二十一号)及び個人情報の保護に関する法律 の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。

(組織)
第九条  委員会は、委員十人以内で組織する。


消費者被害が発生したときの「すきま案件」の対応です。
大事なことは、イのほかの法律に基づく規定がある場合はそれに従うということで、不動産のトラブル等でも、事業者が宅建業法に登録していれば、宅建業法が適用されるが、単なる不動産の販売だけだと消費者関連法が適用でき、宅建業法よりも強い措置が取れる場合があります。特に、どこも所管する法律がない事項については消費者庁が所管します。この「すきま案件」をすべて消費者庁が所管することは画期的なことです。説明会のときに「本当に何でもいっていいのですか?」と質問したことがありますが、大丈夫だそうです。何かあれば消費者庁に相談ですね。
さて、設問で難しいところは、ウの権限が「勧告・命令等」とあるところです。「指導」や「公表」などさまざまな行政措置があるので、引っ掛け問題的なことが出題されるときもあります。ただ、明確に覚えるのは難しいかもしれませんね。条文にあるとおり、まず「勧告」、従わないときは「命令」という順序になります。
ということで、⑨はすべて正解です。

消費者安全法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO050.html

(事業者に対する勧告及び命令)
第四十条  内閣総理大臣は、商品等又は役務が消費安全性を欠くことにより重大事故等が発生した場合(当該重大事故等による被害の拡大又は当該重大事故等とその原因を同じくする重大事故等の発生(以下「重大生命身体被害の発生又は拡大」という。)の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置がある場合を除く。)において、重大生命身体被害の発生又は拡大の防止を図るため必要があると認めるときは、当該商品等(当該商品等が消費安全性を欠く原因となった部品、製造方法その他の事項を共通にする商品等を含む。以下この項において同じ。)又は役務を供給し、提供し、又は利用に供する事業者に対し、当該商品等又は役務につき、必要な点検、修理、改造、安全な使用方法の表示、役務の提供の方法の改善その他の必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。
2  内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、重大生命身体被害の発生又は拡大の防止を図るため特に必要があると認めるときは、当該事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
3  内閣総理大臣は、重大生命身体被害の発生又は拡大の防止を図るために他の法律の規定に基づく措置が実施し得るに至ったことその他の事由により前項の命令の必要がなくなったと認めるときは、同項の規定による命令を変更し、又は取り消すものとする。
4  内閣総理大臣は、多数消費者財産被害事態が発生した場合(当該多数消費者財産被害事態による被害の拡大又は当該多数消費者財産被害事態と同種若しくは類似の多数消費者財産被害事態の発生(以下この条において「多数消費者財産被害事態による被害の発生又は拡大」という。)の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置がある場合を除く。)において、多数消費者財産被害事態による被害の発生又は拡大の防止を図るため必要があると認めるときは、当該多数消費者財産被害事態を発生させた事業者に対し、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引の取りやめその他の必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。
5  内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、多数消費者財産被害事態による被害の発生又は拡大の防止を図るため特に必要があると認めるときは、当該事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
6  内閣総理大臣は、多数消費者財産被害事態による被害の発生又は拡大の防止を図るために他の法律の規定に基づく措置が実施し得るに至ったことその他の事由により前項の命令の必要がなくなったと認めるときは、同項の規定による命令を変更し、又は取り消すものとする。
7  内閣総理大臣は、第二項若しくは第五項の規定による命令をしようとするとき又は第三項若しくは前項の規定による命令の変更若しくは取消しをしようとするときは、あらかじめ、消費者委員会の意見を聴かなければならない。
8  内閣総理大臣は、第二項若しくは第五項の規定による命令をしたとき又は第三項若しくは第六項の規定による命令の変更若しくは取消しをしたときは、その旨を公表しなければならない。


消費者基本法に明記されている「事業者の責務」ですが、ラッキー問題です。情報を書面で提供する義務がないことは日常生活でもお分かりですね。したがって、⑩は㋐が不正解です。

消費者基本法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S43/S43HO078.html

(事業者の責務等)
第五条  事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一  消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
二  消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること
三  消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること
四  消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五  国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
2  事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない

解答一覧

⑦→○、⑧→×㋒、⑨→○、⑩→×㋐

このように解説を読んでみると、思った以上に正解できそうな気がするるのではないでしょうか。7割はとりたいところです。