10.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。
① 貴金属の買取業者が消費者の自宅を訪れ、貴金属のアクセサリーを買い取るから見せるよう長時間居座り強引に迫ったので、断り切れず手持ちのアクセサリーの買取りに応じてしまった。この場合、㋐特定商取引法の政令指定商品制が廃止されたので「訪問販売」には該当する が、㋑クーリング・オフの適用は困難である 。㋒消費者契約法第4条による取消しは適用の可能性がある 。
② 有料老人ホームの入居契約については、㋐前払金の保全措置は法制化されており 、㋑入居日から一定期間内の解約申出について短期解約特例制度が法制化された が、㋒標準約款は法制化されていない 。
③ 融資を受ける際に保証人を自分で探せない個人のために、手数料を取って保証人を紹介する事業者(保証人紹介業者)は、㋐貸金業法によって登録を義務付けられてはおらず 、㋑紹介した保証人が保証債務を履行しない場合、当然に連帯保証債務を負うものではなく 、㋒契約時の書面交付義務も負わない 。
【解説と解答】
①
深刻な消費者問題になっている訪問買取トラブルはご存知だと思います。事業者が商品を販売する訪問販売ではなく、訪問購入となるので、特定商取引法の6つの対象類型には該当しません。したがって、クーリングオフもできないのは当然です。
しかし、訪問購入時に誤認させるような説明や不退去(困惑)などがあれば消費者契約法第4条でで取消を主張できるのは一般的な取引に共通しているものといえます。したがって、①は㋐が不正解 です。
ただし、訪問買取を特定商取引法の7つ目の対象類型に新たに指定されることが、この3月に閣議決定されました。施行日は決まってなかったように思いますが、次回の試験問題には必須ですね。とはいいながら、施行された頃には悪質な訪問買取業者の手口はなくなっていると思います。契約書面の交付なんて面倒でやってられませんよね。新たな手口を模索しているでしょう。
消費者庁HP
http://www.caa.go.jp/
ホーム > 組織・制度について > 国会提出法案
http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/index.html
第180回国会(常会)提出法案
平成24年3月2日 特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案 概要[PDF:205 KB]
http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/pdf/120302_1.pdf
特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案のポイント
貴金属等の訪問購入に関する商取引を公正なものとし、消費者被害を未然に防止するため、訪問購入業者に対する規制を設けるとともに、売主による一定期間内の解約を認める等の所要の措置を講ずる。
2.法律案の概要
特定商取引法を一部改正し、現行の6つの商取引類型に、7番目の商取引類型として「訪問購入」を追加
(1)規制対象物品
訪問購入に係るトラブルの実態上、政令で対象を指定(指定物品制)
(2)訪問購入業者に対する不当な勧誘行為等の規制
① 勧誘目的等の明示義務
② 再勧誘の禁止
③ 不実告知・事実不告知を伴う勧誘等の禁止
④ 勧誘等の際に人を威迫、困惑させる行為の禁止 等
(3)書面の交付
物品の種類 / 購入価格 / 売買契約の申込みの撤回・解除に関する事項 /
物品の引渡しの拒絶に関する事項 等を記載して交付する義務
(4)クーリング・オフ
①法定書面交付日から8日間は、売主からの売買契約の申込みの撤回・解除が可能
②クーリング・オフ期間中は、売主は物品の引渡しを拒絶することが可能
③売主は購入業者から引渡しを受けた第三者に対する物品の所有権の主張が可能(第三者が善意無過失の場合を除く。)
②
(参考)国民生活センター公表資料
有料老人ホームをめぐる消費者トラブルが増加-相談の傾向と消費者へのアドバイス- (2011年3月30日)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110330_1.pdf
3.消費者へのアドバイス(<参考資料>参照)
(1)契約する前には入居一時金などの費用について十分説明を受け確認する
施設やサービスの利用に必要な費用に関して、契約・申込みをする前に、入居時に必要な費用、入居後毎月必要な費用、退去時の費用などそれぞれの時点に必要な費用について、事業者から十分に説明を受け確認する。
特に、消費生活センター等に寄せられるトラブルの事例として、入居一時金等の返還や原状回復費用の請求など、退去時や解約時における返金や精算に関するものが目立つことから、これらについて十分に確認する必要がある。
このうち、入居一時金等については、退去する際に返還がされるのか、償却はいつの時点からされるか、初期償却の割合(入居期間にかかわらず返金されない金額の割合)や償却期間(経過すると一時金が全額償却され戻らない期間)を確認し、退去や解約した場合の返金額について不明な点をなくし、納得するまで十分検討したうえで契約する注12。
また、前払金の保全措置注13 が講じられていることと保全措置の内容、短期解約特例制度 が設けられていることについても契約書などで確認する。特に入居一時金等が高額なケースでは、トラブルの未然防止のために、これらの規定が契約書等に盛り込まれていることが重要となる。
注12 「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」では、「一時金(入居時に老人福祉法第29 条第5 項に規定する前払金として一括して受領する利用料)の償却年数は平均余命を勘案し決められていること」とされており、また「一時金のうち返還対象とならない部分の割合が適切であること」とされている。
注13 家賃や入居一時金等の名目で前払金として一括で受領する場合、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ当該前払金について必要な保全措置を講ずることが義務付けられている(原則として平成18 年4 月1 日以降に届け出た有料老人ホームに適用)(老人福祉法第29 条第6 項)。
短期解約特例制度とは、2006年7月以降の契約について、有料老人ホームに入居してから90日以内に退去あるいは契約解除をする場合、入居一時金など前払い金が全額返還されるシステムのことです。
老人ホームに関する標準約款は定められていないと思います。
ということで、②はすべて正解 です。
③
社会問題となった「保証人紹介ビジネス」です。
このビジネスは、保証人を紹介するだけであり、対象となる保証の契約には業者は全く出てこない、すなわち、個人の契約書の保証人には業者名ではなく紹介された保証人が記載されることになるため、紹介事業者名はまったく出てきません。したがって、保証人が保証債務を履行しない場合は事業者が連帯責任を負うこともありませんし、貸金業にも当たらないし、契約書を作成するかどうかも任意です。
ということで、③はすべて正解 です。
(参考)国民生活センター公表資料
「借金をするとき、家を借りるとき、就職するとき・・・保証人紹介ビジネスのトラブルにご注意!」(H22.5.26)[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20100526_2.pdf
1.保証人紹介ビジネスとは
保証人が必要とされる場面は様々あるが、自分で保証人を探すことができない消費者へ保証人を紹介し、その手数料等を得ることを目的とする事業者を保証人紹介業者という 。紹介業者は、保証人が必要な消費者同士を相互に保証人として紹介したり、債務は紹介業者が負担するとうたって保証人として名義を貸してくれる消費者を募集し、報酬として一定の名義登録料を支払い、その名義登録した消費者を保証人として紹介するなどしている。「保証人が必要な消費者」同士を結びつけたり、紹介業者が債務を負担するとうたって「保証人として名義登録をした消費者」と「保証人が必要な消費者」を結びつける等、実質的には保証人といえない消費者が保証人として紹介されるところに特徴がある。
4.消費生活相談からみた問題点
(3)他人の債務を負担させられる
紹介業者は、保証人を募集する際に「消費者は全く金銭的負担を負わない」旨や「折半となる」旨を説明しているが、実際には債権者と保証人間の保証契約に紹介業者は一切かかわっていない。つまり、債権者と紹介業者に契約関係がない以上、紹介業者は債権者との関係では何らの責任も負担しない 。債権者から請求を受けた消費者は、債務負担を免れない ことになる。このように、保証人紹介サービスは多くの問題点を抱えているが、保証人紹介サービスの利用を考える消費者はあとを絶たず、トラブルに巻き込まれてしまう結果を招いている。事業者への法規制や監督官庁が存在しない現状においては、保証人紹介ビジネスに代わるなんらかの社会的制度の整備が望まれる。
5.消費者へのアドバイス
(3) 保証人としての名義登録は絶対にしない
ただ単に名義を貸すつもりであっても、他人の保証人になることは、債権者との関係では自分に支払い義務が生じる。保証人紹介業者が代位弁済するので債務は負わないとうたっていても、他人の保証人になることは、金銭的に大きな負担を伴うことになるので、絶対に紹介業者へ保証人としての名義登録はしないこと。
解答一覧
①→×㋐、②→○、③→○