14.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

③ 一週間にわたりホテルの会場を利用して呉服の展示会販売を行う事業者と展示会場で呉服の購入契約を締結した場合において、㋐パーティーへの招待のように告げながら、パンフレットに極めて小さな文字で「新作商品をお勧めする即売会があります」と記載したのみであったような場合や、㋑販売員が消費者に強引に商品を使用させて勧誘した場合、㋒勧誘に際して、消費者の履き物を隠すことなどによりその場からの消費者の退出を妨害した場合などは、いずれも、商品を陳列し、消費者が自由に商品を選択できる状態だったとはいえないため、その契約はいわゆる店舗外取引として訪問販売に該当する。

【解説と解答】

まず、訪問販売の定義を知ることが重要であり、現場でも、その契約が訪問販売に該当するかどうかで対応方針が大きく異なってきますのでおさえるべき事項です。
特に、今回の問題のような展示会販売はトラブルも多く、まず、訪問販売に該当するかどうかを判断することから始まります。

最初に「1週間にわたりホテルの会場を利用して呉服の展示会販売を行う」行為が訪問販売に該当するか、単なる販売店での店舗購入に該当するかどうかです。
訪問販売であれば、書面交付やクーリングオフなど特商法の規制を受けることになります。

特商法の定義では、第1号は店舗外契約、すなわち自宅への訪問やキャッチでファミレスで契約など単純に考えていただけたらいいと思います。第2号はアポイントメントセールスやキャッチセールスなどで、様々な方法により勧誘し、事業者の営業所へ連れてきて契約することをいいます。

現場では展示会や健康食品のSF商法での契約トラブルの場合、まず営業日数を確認します。1日や2日だと店舗とはみなされないので第1号に該当し訪問販売となりますのでクーリングオフが可能です。営業期間が長くなれば店舗ということになり、第2号の勧誘方法を検討することになります。

では、「営業所等に該当するかどうか」を検討します。単純には1週間の営業は固定店舗とみなされるので訪問販売にならないので勧誘方法や販売方法の検討をしていくことになりますが、営業所の定義に合致しているかどうかを検討します。
施行規則では、「一定の期間にわたり、商品を陳列し、当該商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの」は営業所に該当するので、第1号の訪問販売は適用されません。一定の期間というのは2-3日以上のことであり、ホテル等は店舗に類するものとなります。ただし、「商品を陳列し」とは「消費者が自由に商品を選択できる状態にある」ということが前提になっており、これが満たされないと営業所等に該当しないとなります。その条件が逐条解説で例示されています。

○ 販売員が消費者を取り囲んだり、消費者に強引に商品を使用させ、あるいはその一部を費消させて勧誘すること
○ 高額商品等の特定の商品についてのみ繰り返し勧誘するなど、陳列された商品を自由に選ばせることなく勧誘すること
勧誘に際して、消費者の履物を隠すことなどによりその場からの消費者の退出を妨げること

ということで、設問のイとウはこの条件に該当するため第1号の訪問販売となります。

ではアはどうなるのかというと、1週間の営業ということで通常の固定店舗とみなされます。そこで検討するのが、「勧誘方法」に関するものであり、販売目的を隠して特定の場所への来訪を要請した場合は、特商法のアポイントメントセールス等となり、第2号の訪問販売に該当します。今回の設問では小さい文字でありながら「販売目的」を表示しているので、「隠して」と断言できるかどうかですが、これについても逐条解説に説明があります。

「また、パー ティーや食事会等への招待のように告げながら、パンフレット等に消費者の目に留まらないような小さい文字で「新作商品をお勧めする即売会があります。」と 記載するなど、実質的に販売する意図が示されているとは言えない場合は、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない。」

ということで、アは販売目的を隠していることになるのでアポイントメントセールス等に該当する第2号の訪問販売となります。
要するに、販売目的を示す条件を無理やり満たしていても、消費者が販売目的であることを認識できているのかを争点として交渉していく余地があるということです。

ところが、この設問はアイウが「いずれも、商品を陳列し、消費者が自由に商品を選択できる状態だったとはいえないため、その契約はいわゆる店舗外取引として訪問販売に該当する」かどうか、すなわち第1号に該当する訪問販売かどうかを問われているので、イとウは第1号ですが、アは第2号となります。
したがって、③は㋐が不正解となります。
引っ掛け問題的で嫌ですね。
反面、問題の意図が分かっていると中身を検討することなくアが不正解と導き出すことも可能です。

特定商取引に関する法律・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51HO057.html

(定義)
第二条  この章及び第五十八条の四第一項において「訪問販売」とは、次に掲げるものをいう。
一  販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の主務省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供
二  販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供

特定商取引に関する法律施行規則・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51F03801000089.html

(営業所等)
第一条  特定商取引に関する法律 (以下「法」という。)第二条第一項第一号 の経済産業省令で定める場所は、次の各号に掲げるものとする。
一  営業所
二  代理店
三  露店、屋台店その他これらに類する店
四  前三号に掲げるもののほか、一定の期間にわたり、商品を陳列し、当該商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの
五  自動販売機その他の設備であつて、当該設備により売買契約又は役務提供契約の締結が行われるものが設置されている場所

特定商取引に関する法律施行令・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51SE295.html

(特定顧客の誘引方法)第一条  特定商取引に関する法律 (以下「法」という。)第二条第一項第二号 の政令で定める方法は、次のいずれかに該当する方法とする。
一  電話、郵便、民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定する特定信書便事業者による同条第二項 に規定する信書便(以下「信書便」という。)、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは法第十二条の三第一項 に規定する電磁的方法(以下「電磁的方法」という。)により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し若しくは拡声器で住居の外から呼び掛けることにより、又は住居を訪問して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること
二  電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、又は住居を訪問して、他の者に比して著しく有利な条件で当該売買契約又は役務提供契約を締結することができる旨を告げ、営業所その他特定の場所への来訪を要請すること(当該要請の日前に当該販売又は役務の提供の事業に関して取引のあつた者に対して要請する場合を除く。)。

特定商取引に関する法律・解説(平成21年版)・・・http://www.no-trouble.go.jp/#1259300931251

(1) 本法では、①通常の店舗等以外の場所で行われる商品等の販売又は役務の提供及び②特定の方法により誘引した顧客に対する通常の店舗等で行われる商品等の販売又は役務の提供を「訪問販売」として広く対象とすることとした。

(注3) 省令第1条第4号では「一定の期間にわたり、商品を陳列し、当該商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの」を通常の店舗とみなしうる場所として規
定している。①「一定の期間」とは、通常最低2、3日以上を指し、半日や1日で次の場所に移動するようなものは含まれないが、例えば1週間に1日だけ一定場所で定期的に販売するようなものは、場合によってはこれに該当することもあろう。②「陳列し」とは、消費者が自由に商品を選択できる状態でなければならない。③「店舗に類するもの」とは、店舗に類似する販売のための施設を有している場所であり、具体的には、常設展示場、しばしば展示販売が行われる公会堂、集会場等の公共施設、ホテル、体育館等が該当する。これらの場所以外の場所で行われる販売すなわち住居訪問販売、職場訪問販売、路上でのキャッチセールス等は、すべて本法の訪問販売に該当する。この際、上記3要件はすべて充足されていなければならないのは当然である。例えば、2、3日以上の期間にわたって商品を陳列し、販売のための固定的施設を備えている場所において、主に事業者が指名した者等特定の者のみが入場して販売が行われる事例が見られるが、①や③の要件を形式的に満たしている場合であっても、例えば次に掲げるような手法等により、消費者が自由意思で契約締結を断ることが客観的に見て困難な状況の下で販売が行われているときには、消費者が自由に商品を選択できる状態にあるとは言えず、②の要件を欠くこととなるため、そのような場所は本号にいう「店舗に類する場所」に該当しない。
○ 販売員が消費者を取り囲んだり、消費者に強引に商品を使用させ、あるいはその一部を費消させて勧誘すること
○ 高額商品等の特定の商品についてのみ繰り返し勧誘するなど、陳列された商品を自由に選ばせることなく勧誘すること
○ 勧誘に際して、消費者の履物を隠すことなどによりその場からの消費者の退出を妨げること

(3) 第2号はいわゆるキャッチセールス等を「訪問販売」の定義に含めたものである。
ロ「その他政令で定める方法」についてはいわゆるアポイントメントセールス等の誘引方法を次の通り政令第1条で規定している。アポイントメントセールス等の誘引方法を政令委任としたのは、その実態が多様であり、また今後の誘引方法の変化に機動的に対処し得るようにするためである。
① 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ若しくは電子メールにより、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し若しくは拡声器で住居の外から呼び掛けることにより、又は住居を訪問して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること。
② 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ若しくは電子メールにより、又は住居を訪問して、他の者に比して著しく有利な条件で当該売買契約又は役務提供契約を締結することができる旨を告げ、営業所その他特定の場所への来訪を要請すること(当該要請の日前に当該販売又は役務の提供の事業に関して取引のあった者に対して要請する場合を除く。)。
①は、業者が販売意図を明らかにしないで消費者を呼び出す場合について規定したものである。例えば、「あなたは選ばれたので○○を取りに来てください」と告げる場合や、本来の販売の目的たる商品等以外のものを告げて呼び出す場合が本号に該当することになる。なお、勧誘の対象となる商品等について、自らそれを扱う販売業者等であることを告げたからといって、必ずしも当該商品について勧誘する意図を告げたものと解されるわけではない。例えば、こうした場合であっても、「見るだけでいいから。」と告げるなど販売意図を否定しているときや、着物の着付け教室と同会場で着物の即売会が行われる場合において、実際には着物を購入しなければ講習自体も受けられないにもかかわらず、着付け教室のみの参加が可能であるように表示するなどしているときには、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない。また、パーティーや食事会等への招待のように告げながら、パンフレット等に消費者の目に留まらないような小さい文字で「新作商品をお勧めする即売会があります。」と記載するなど、実質的に販売する意図が示されているとは言えない場合は、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない。なお、ビラ、パンフレット及び拡声器については、「商品を無料で配布する」等告げて行ういわゆるSF商法として行われるものを念頭においたものである。

解答一覧

③→×㋐