6.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

① 農薬の残留基準は㋐最大無毒性量(NOAEL)を安全係数で割って設定される㋑1日耐容摂取量(TDI)を下回るよう定められている

【解説と解答】
23年度はこのあたりからの問題から苦しくなってくると思います。
経済や金融の専門用語は、何となく予想がつくものが多いのですが、食品の専門用語は定義が法律で定められたりするものが多く、常識力や予想、なんとなくといった感覚で解答を導き出せるものが少なく、難易度は高めです。常識力で解ける問題は取りこぼしがないように、また、食品の専門用語はある程度テキストや資料で覚えていかなければならないので、それなりに勉強してください。深くはないですが範囲が広いですので、自分ができるバランスをみながら勉強してください。あとは、法律が変わったりして、対象品目が増えたりした場合には、出題される可能性が高いですのでチェックしておいてください。


私にとってはいきなり難問です。農薬の基準に関する問題は頻出ですが、「ポジティブリスト」等は知っていますが、安全基準を導き出すための用語は覚えていません。「TDI]ぐらいだったら頭のすみにはありそうな気がしますが、感で答えるしかないですね。すらっと正解が出る受験生は素晴らしいです。今回の問題は次回は出ないと思いますが、今後のために調べてみます。

最大無毒性量(NOAEL)

無毒性量(NOAEL:Non Observed Adverse Effect Level)
無毒性量(NOAEL)とは、ある物質について何段階かの異なる投与量を用いて毒性試験を行ったとき、有害な影響が観察されなかった最大の投与量のことです。通常は、さまざまな動物試験で得られた個々の無毒性量の中で最も小さい値をその物質の無毒性量とし、1日当たり体重1㎏当たりの物質量(mg/kg 体重/日)で表されます。

1日耐容摂取量(TDI)

耐容一日摂取量(TDI:Tolerable Daily Intake)
耐容一日摂取量(TDI)とは、環境汚染物質等の非意図的に混入する物質について、人が生涯にわたって毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量のことです。
通常、1日当たり体重1kg当たりの物質量(mg/kg 体重/日)で表されます。TDIは、重金属等に関する指標として用いられます。

安全係数

安全係数
安全係数(Safety Factor)とは、ある物質について、許容一日摂取量(ADI)耐容一日摂取量(TDI)等を設定する際、無毒性量に対して、さらに安全性を考慮するために用いる係数です。無毒性量を安全係数で割ることで許容一日摂取量や耐容一日摂取量を求めることができます。
動物実験のデータを用いてヒトへの毒性を推定する場合、通常、動物とヒトとの種の差として「10倍」、さらにヒトとヒトとの間の個体差として「10倍」の安全率を見込み、それらをかけ合わせた「100倍」を安全係数として用いています。不確実係数(UF:Uncertainty Factor)ともいいます。

許容一日摂取量(ADI:Acceptable Daily Intake)

許容一日摂取量(ADI)とは、ある物質について、人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量のことです。
通常、1日当たり体重1kg当たりの物質量(mg/kg 体重/日)で表されます。ADIは、食品添加物や農薬等、食品の生産過程で意図的に使用されるものの安全性指標として用いられます。

急性参照用量(ARfD:Acute Reference Dose)

急性参照用量とは、人が食品や飲料水を介して、ある特定の化学物質を摂取した場合の急性影響を考慮するための指標です。人の24時間またはそれより短期間の経口摂取により健康への悪影響を示さないと推定される体重1kg当たりの摂取量(mg/kg 体重)で表されます。

農薬についての1日摂取量はTDIではなくてADIということになります。したがって、①は㋑が不正解です。難問かもしれません。

役に立つ薬の情報~専門薬学>生化学Ⅰ>毒性評価

http://kusuri-jouhou.com/creature1/toxicity.html
NOAEL、NOEL
化学物質がいかなる有害作用を引き起こさない最大投与量をNOAELという。ED50では一群の半分で作用する量であるが、NOAELでは一群すべてに作用しない量である。また、医薬品などの薬理作用を有する化学物質も含める場合はNOELを使用する。
ADI、TDI
食品添加物や農薬などに対し、ヒトが毎日そして一生摂取してもいかなる悪影響を及ぼさない一日量をADIをいう。
それに対し、環境汚染物質などヒトに対して全く無益なものに対し、ヒトが毎日そして一生摂取してもいかなる悪影響を及ぼさない一日量をTDIをいう。
NOAELとADIの関係
ADIはNOAELを1/100した数値である。
動物とヒトでは種差があるため、この種差の量を考慮しなければならない。そのため、NOAELから1/10の量を取る必要がある。
また、アルコールに強い人もいれば弱い人がいるように、それぞれ個体差があるはずである。全てのヒトに対して影響がないようにしなければならないので、ここで化学物質の影響を受けやすい人に基準を合わせないといけない。そのため、個体差を考慮してここでもNOAELから1/10の量を取る必要がある。

実は専門用語の解説は厚生労働省が作成している「食品関係用語集」から引用しました。
十数年前にはすでに存在しており、当時私も参考にしたものです。今でも改訂されながら公表されており、衛生関係の行政機関にも専門用語の解説として引用されているのでお墨付きの用語集です。
今回の問題は「食品関係用語集」のなかの「リスク評価」という項目を参照しました。この項目には5つの用語が解説されており、今回の問題に出てきた3つに加えて、「許容一日摂取量(ADI:Acceptable Daily Intake)」「急性参照用量(ARfD:Acute Reference Dose)」があげられているので、「リスク評価」の用語で最低限覚えておけばいいのは、この5つということになるのかもしれませんね。

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 食品
一番下の「政策分野関連情報」から
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/
食品安全情報
食品関係用語集
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/glossary.html
さらに詳しい用語解説集がリンクされています

ホーム > 用語集
用語集
http://www.fsc.go.jp/yougoshu.html

食品の安全性に関する用語集(第4版)[PDF]

この用語集は、食品の安全性に関する基本的な用語等について専門的な知識を持たない方にも分かりやすい平易な言葉で解説したものです。
今までご利用頂いた改訂版追補の表現を見直し、用語の追加を行うなど内容を刷新し、この度第4版を作成しましたのでご活用ください。

食品の安全性に関する用語集(第4版)平成20年10月
食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/yougoshu_fsc.pdf

解答一覧

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