17.次の事例に関する文章のうち、正しいものには○、誤っているものには×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

(事 例) 一人暮らしのA(76歳、年金生活者)は、約2年前、訪問販売業者B社の勧誘員が訪ねてきて、「羽毛布団が健康によい」と勧誘され、羽毛布団セット1組約80万円を個別信用購入あっせん(個別クレジット)契約を利用して購入した(契約Ⅰ)。その後も、同じ勧誘員が時々訪ねてきて勧誘され、2年間に布団類を個別クレジット契約で合計5組約300万円購入した(契約Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ)。信販会社は、契約Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・ⅣはC社、契約ⅤはD社である。Aは、自宅を保有しているが、預貯金も底を突き、年金では支払い困難な状態である。近年は判断力も衰え気味で、個々の契約時の勧誘内容はよく思い出せない。契約ⅠとⅤの布団をしばらく使用しているほかは、未使用のままである。契約Ⅰの商品欄・数量欄は「羽毛布団」「一式」との記載だけである。契約Ⅳの商品は届いていない。
問題は①~⑩

① 自宅で契約を結んでいても、過去1年間にすでに2件の契約がある場合、3件目以降の契約は原則としてクーリング・オフや勧誘行為規制等の適用除外となるが、過去の1件目または2件目の契約について不当な勧誘行為があったような場合は適用除外とならない。

② 契約Ⅰは、書面不備によりクーリング・オフを行使できる可能性があり、この場合、商品を使用していてもクーリング・オフの行使は可能であるが、商品使用分の利益は支払う必要がある。

③ 訪問販売で通常必要とする分量を著しく超える契約は過量販売解除の可能性があり、勧誘内容をよく思い出せなくても解除ができ、契約Ⅴが過量販売解除できるとすれば、商品を使用した利益分も支払う必要がない。

④ 過量販売解除は、通常必要とする分量を著しく超える契約が解除の対象だが、その商品を購入する特別の必要性があることと、その商品を現に使用していることを販売業者が証明したときは、その契約は解除できない。

⑤ 商品が届いていない契約Ⅳは、債務不履行により解除する方法が考えられるが、20日以上の催告期間を設けて書面により催告することと、催告期間内に商品引き渡しがないことが要件となる。

⑥ Aの判断能力が著しく低下しているという診断書が取れる場合は、成年後見制度のうち保佐開始決定が認められる可能性があり、保佐開始決定からさかのぼって1年以内の契約は取り消すことが可能となる。

⑦ 契約Ⅰの売買契約書面と個別クレジット契約の申込書面および契約書面に記載不備があるときは、売買契約と個別クレジット契約の両方をクーリング・オフすることができ、クレジットの既払金は信販会社C社が消費者Aに対し返還する義務を負う。

⑧ 契約Ⅴについて売買契約を過量販売解除できるときは、これに利用したD社の個別クレジット契約も解除できるが、過量販売となる過去の契約の存在をD社が知らなかったときは解除できない。

⑨ 契約Ⅳの売買契約について債務不履行解除をするときは、これに利用したC社の個別クレジット契約について、未払金の支払いを拒絶できるとともに、解除を理由にC社に対し既払金の返還を請求できる。

⑩ 契約Ⅳや契約Ⅴに関する個別クレジット契約は、C社やD社の過剰与信防止義務の違反が問題となるが、年金収入があっても生活維持費を控除して計算する必要があり、自宅を資産として考慮してはならない。

事例問題です。「羽毛布団」の高齢者に対する過量販売の事例であり、この種の被害が社会問題になったため、平成20年に特商法と割販法が改正されました。
この問題には、いろんな要素が含まれていますので、事例を考えながら、あわせて、特商法や割販法も確認してください。
また、2次試験の面接での事例にも応用できます。

前回の事例問題でも書いていますが、どちらも相談現場や社会的にも問題になった事例です。月刊国民生活などに掲載されている事例を必ず読んでおいてください。また、事例を知るうえでは、くらしの豆知識も必読です。