13.次の事例に関する文章のうち、正しいものには○、誤っているものには×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

(事 例) 事業者Aが、トラックにステンレス製の物干しざおを積載し、拡声器でアナウンスしながら巡回していた。消費者Bがこれを呼び止め、値段を尋ねたところ「ニ・キュ・パでどう?」と提案してきた。そこで、Bはこれに同意し、購入することにした。
①~③

① 契約の当事者間において「ニ・キュ・パ」という表示の意味が争われて訴訟になった場合、裁判官が、当事者の考えた表示の意味のうち、いずれかが当該具体的な事情を前提として客観的に理解される意味と一致する限りで、その意味において契約の成立を認定できるとする見解がある。これによれば、本件での「ニ・キュ・パ」という表示が2,980円であると理解されるのが通常とされていても、2,980円で契約が成立することはない。

② 「ニ・キュ・パ」という表示が当該状況の下では客観的に29,800円を意味し、消費者Bが表示について考えたところの意味が2,980円であったとした場合、Bの意思(2,980円)と表示の客観的意味(29,800円)とが異なることから、Bがこの意思と表示の不一致を知らずに意思表示を行ったのであれば、民法第95条の錯誤無効を主張できる可能性がある。

③ 「ニ・キュ・パ」という表示が当該状況の下では客観的に2,980円を意味し、事業者Aが表示に付与した意味が29,800円であったとした場合、表示の客観的意味(2,980円)とAが表示に付与した意味(29,800円)とが異なるから、Aの意思表示において意思と表示の不一致があることになる。したがって、Aがこの不一致を認識していたとしても、Aは民法第95条の錯誤無効を主張できる可能性がある。

【解説と解答】
①なんだか難しい書き方ですね。要は、 「ニ・キュ・パ」は誰が考えても同じ解釈になるのであれば契約は成立していますよ、ということだと思います。すなわち、 「ニ・キュ・パ」は誰が考えても、2,980円であれば、両者の見解が一致するので、契約は成立しますよね。そういう考え方をすればいいと思います。したがって、①は不正解です。
②民法の錯誤無効は強力です。本人が勘違いしたと主張し、誰がどう考えても勘違いを起こすような要件があれば錯誤向こうを主張できます。正確には「重大な過失がなければ」とありますが、十分クリアできます。それでも、現場のやり取りの状況によっては難しいときもあるかもしれません。「可能性がある」という書き方にしてくれているラッキーさもありますが、錯誤無効は主張できるということで、②は正解です。

民法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html

(錯誤)
第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

また、錯誤無効は
「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0002246/0/011225denshikeiyaku.htm
とあわせて理解しておいてください。

②の逆でしょうか。販売者が29800円で販売するつもりだったから、2980円と思って購入した消費者の意思は錯誤があり本来の29800円を支払えという意味でしょうか。この不一致を知っていながら売ったのであれば重大な過失にあたり錯誤無効を主張できないと考えられますし、そんな主張は通るわけもない(29800円を支払え)ので、成立しません。問題の意図がいまいち分かりませんが、③は不正解です。

解答一覧

①→×、②→○、、③→×