1.次の文章のうち、正しいものには○、誤っているものには×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。また、誤っているものには、誤っている箇所(1カ所)の記号も記入(マーク)しなさい。

① 消費者庁は、貸金業法や割賦販売法についても「共管」している。この場合、消費者庁は、業所管大臣が行う事業者への行政処分について、㋐あらかじめ協議を受けること、㋑必要な意見を述べることができるが、㋒消費者庁自身が行政処分を行うことはできない

【解説と解答】
①消費者庁が所管している法律についての問題です。平成21年(2009年)9月に消費者庁が創設されましたが、ある案件について所管する省庁が複数あれば対応が後手に回ってしまうという「縦割り行政」の弊害を克服するために、一括して消費者庁が関係する法律を所管することにしたという画期的な施策です(窓口の一元化)。たとえば、食品表示に関する問題が起これば、食品衛生法を所管している厚生労働省とJAS法を所管している農水省と景品表示法を所管している公正取引委員会など複数の省庁が関係してくるのですが、法律を消費者庁に移管して、実務は現場に残すという方法により、消費者庁が一元化された法律の司令塔の役割を担うということです。もちろん、責任の所在があいまいになるなどという批判はありますが、画期的なことです。

消費者庁HP
ホーム > 組織・制度について > 所管の法令等 > 法律一覧
http://www.caa.go.jp/soshiki/legal/index1.html

所管する法律一覧は結構重要なので、一通り確認して、暗記は難しいですが、こんな分野の法律があるんだと記憶に入れておいてください。

ちなみに「所管」は、「専管」と「共管」に分かれており、読んで字の如し、「専管」は消費者庁だけが実務もすべて所管することで、「共管」とは食品衛生法のように複数の省庁で「所管」することをいいます。「専管」という言葉はあまり見かけません。
どちらかというと、「共管」が多くを占めており、実務的な行政指導等は共管先の省庁が行うということで、現場レベルの業務は今までどおり継続されるので大きな混乱は生まれません。
さて、ここで問題に移りますが、今の説明で「共管」の概念として「実務(行政処分等の措置)は共管先の省庁が実施する」ということが分かったと思いますが、それについての消費者庁との関係性について問われています。「移管」された法律は消費者庁の「専管」になるので処分権限等も消費者庁になるのですが、共管の場合は二重行政を避けるために、基本的には消費者庁が法律の企画立案を担い共管先が行政処分等の実務を実行することになります。ただし、各法律ごとの分担が細かく決められていて、とてもじゃないですが覚え切れません。基本原則で考えればいいと思います。
今回の問題の場合は「貸金業法や割賦販売法」となっていますが、この問題はそのまま消費者庁設置法案の資料に掲載されています。
事業者への説明会等でも頻繁に使われた資料です。
まず、消費者庁が所管する法律を、その性質により分類し、それぞれについて分担が決められています。

消費者庁HP
第21次国民生活審議会総合企画部会
http://www.caa.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/21th/
第10回(平成21年7月10日)
資料1-4 消費者庁関連3法のポイント【252KB】
http://www.caa.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/21th/090710shiryo1_4.pdf
資料1-3 消費者庁関連3法の関係【14KB】
http://www.caa.go.jp/seikatsu/shingikai/kikaku/21th/090710shiryo1_3.pdf

「整備法」により消費者庁が所管する関係法律について
所管の対象= 消費者利益の擁護及び増進に関わる主要な法律(消費者に身近な法律)を所管。
(他の法律分野についても、「消費者安全法」による措置要求等で対応。)
所管の形態= 行政組織の肥大化を招かぬよう、国の地方出先機関、都道府県を活用。消費者庁の主導の下、効率的に法執行。二重行政を回避。

表示関係(景表法、JAS法、食品衛生法、健康増進法、品表法等)
◎ 消費者庁が、表示基準を策定。これを遵守させるための命令は、消費者庁のみが権限を持ち、一元的に実施。
◎ 立入検査、行政指導は、公取、農水省、経産省、厚労省に行わせるが、必要な消費者庁への通知を義務づけ。
(必要な場合には、消費者庁が自ら立入検査を実施。)
取引関係(特定商取引法、特定電子メール法、預託法)
◎ 消費者庁が、企画立案を担うとともに、自ら、立入検査、命令を行う。
◎ 特に、消費者トラブルの多い特定商取引法については、執行体制を経産省から消費者庁に移管し、地方の経済
産業局を直接に消費者庁が指揮監督することにより、実質的に執行体制を一元化。

業法関係(貸金業法、割賦販売法、宅建業法、旅行業法)
◎ 消費者庁が、行為規制について、企画立案を担う。
◎ 消費者庁は、業所管大臣の行う処分に関し、協議を受け必要な意見を述べる。意見を述べるため必要な立入
検査は消費者庁が行う。二重行政を回避しつつ、消費者の目線を反映。

安全関係(消費生活用製品安全法、有害物質含有家庭用品規制法、食品衛生法、食品安全基本法)
◎ 安全基準の策定は、各省の専門性を活用し、消費者庁が協議を受けることで、消費者の目線を反映。
◎ 消費生活用製品安全法の重大事故報告制度は、消費者庁が所管し、迅速に事故情報を公表。
◎ 食品安全基本法に基づき、食品安全行政の基本方針を消費者庁が所管し、司令塔として機能。
その他関係(製造物責任法、消費者契約法、公益通報者保護法等)
◎ 消費者庁が企画立案を担うことにより、消費者利益の擁護及び増進を実効的に図る。

したがって、行政処分は業所管大臣が行うので、㋒も正解となるので、①はすべて正解となります。
「㋐であり㋑であるが、㋒は~」の場合は㋐㋑が正解で㋒について問われるというパターンの問題で、㋒が不正解という黄金パターンから外れる問題です。
解答テクニックとしては、普通は所管先が行政処分するから、消費者庁は二重行政で処分できないと直感的に考えて、すべて正解とすればいいと思います。

解答一覧

①→○

1問目から長文になってしまいましたが、法律の一元化のときに、結構議論された役割分担ですので、一通り読んでおけば役に立つと思います。余裕があれば多くの関連する解説資料が検索されるので見ておいてください。しかも作成に2時間以上かかってるし...

ちなみに消費者庁が創設された後の23年度試験で問題2として消費者庁設置法案に関連する穴埋め問題が出題されていますので、あわせて確認しておいてください。

平成23年度 問題2 [ ア ]~[ オ ]

平成20年度から本格的に開始された消費者庁の創設に向けた議論の過程においては、消費者行政の一元化というスローガンが掲げられ、 [ ア ] が官邸に設けられた。同年6月には、 [ イ ] が閣議決定され、これに基づいて消費者庁の権限等の制度設計が行われた。
まず、消費者政策の企画・立案、他省庁との調整のための権限が消費者庁に与えられた。
また、表示・取引・安全に関する約30の法律が、消費者庁の所管あるいは他省庁との共管とされた。とりわけ、表示に関する法律の多くが消費者庁の所管となった。これは、消費者庁の創設の議論のきっかけの1つが平成19年に頻発した [ ウ ] であったことによる。
他方、安全に関する法律は、基本的に従来の官庁の所管のままにおかれたが、 [ エ ] を消費者庁に一元的に集約して、分析し、素早く対応することを可能とする仕組みが導入された。これは、消費者庁の創設のきっかけの1つが [ オ ] への反省であったことによる。

消費者庁は、消費者被害の発生または拡大の防止のため、自らに執行権限のある法律上の措置を実施するだけではなく、他省庁にのみ執行権限のある法律による措置の実施によって消費者被害の発生や拡大の防止が可能なときは、そのような措置の実施を [ カ ] に基づいて、他省庁に対して [ キ ] することができる。さらに、消費者庁にも他省庁にも重大消費者被害の発生または拡大の防止のための権限のない場合(いわゆる法律のすき間案件)については、 [ ク ] に対して一定の措置をとるべきことの [ ケ ] や命令、譲渡や使用を禁止することができる独自の権限が消費者庁に与えられた。
消費者庁が上記のような権限を適切に行使していないときは、消費者委員会は、消費者被害の発生または拡大の防止のために [ コ ] に対して必要な [ ケ ] をすることができる。

解答は国センHPの問題・解答に掲載されています。解説は勉強部屋の「23年度問題解説まとめ」(会員限定)にあります。