14.次の文章のうち、正しいものには○、誤まっているものには×を、解答用紙の解答欄に記入 (マーク) しなさい。また、誤まっているものには、誤まっている箇所 (1ヵ所) の記号も記入 (マーク) しなさい。

④ 折り込みチラシを見て外壁塗装工事契約(工事金額100万円)を締結しようと決意した消費者が、その事業者に電話をかけて自宅で契約を締結した場合、その事業者には特商法に基づく㋐書面交付義務はなく、契約から2日たった時点であっても消費者は㋑クーリング・オフはできない。また、事業者が突然自宅を訪れて、見積書を作成するとともに消費者の方から後日電話をさせる約束をとりつけ、消費者がこの約束に基づいて電話をし、事業者に来訪を要請して、その電話に基づく事業者の来訪時に自宅で外壁塗装工事契約を締結した場合にも、消費者は㋒クーリング・オフができない
⑤ 生活保護者向けのいわゆる無料低額宿泊所の利用サービス等の提供を行っている事業者が、公園で路上生活をしている人に声をかけ、その場で無料低額宿泊所の利用に関する契約を締結した場合、㋐「指定役務制」が廃止された特商法改正後においては㋑クーリング・オフ規定が適用される可能性がある。事業者が公園で声をかけたのち、利用者を事業者の事務所に同行させて事務所で契約を締結した場合、㋒クーリング・オフができる余地はない
⑥ 「高収入を得られる仕事を紹介する」との広告を見て、その事業者と軽貨物運送の代理店契約を締結するとともに、運送の仕事に必要であると言われて、その事業者と軽自動車の購入契約を締結した個人は、法定書面交付日から㋐20日以内であればこれらの契約を㋑クーリング・オフできるのが原則である。しかし、その個人が貨物軽自動車運送事業の経営届出を行い、その際届出書に営業所の住所を記載していた場合には、実際にはその住所で実質的な事業を行っていなかったとしても㋒クーリング・オフはできない

【解説と解答】

訪問販売は消費者が冷静に考える余地がないうちに契約させてしまう不意打ち性がに問題があるので特商法で規制されています。
したがって、店舗に赴き商品を購入したが「サイズが合わなかった、人に贈ったが気に入らなかった、心変わりした」などの理由でクーリングオフしたいといってもできないのは当然で、店舗との自主交渉になります。しかし、現場ではこの手の相談が多く、なぜできないのだ、消費者センターは消費者の味方じゃないのか、税金泥棒、などと非難を浴びます。不意打ち性をしっかり理解しておいてください。

法26条の適用除外に関する問題になります。

設問の、チラシを見て商品を決めて業者を呼んで契約すれば、消費者がじっくり考えて決めたことなので不意打ち性はなく訪問販売には該当しません。
したがって、特商法に基づく書面交付義務もなく、クーリングオフもできません。ただし、通常の契約書を取り交わすことは民法上のトラブルを回避するためにも義務ではありませんが必要と考えた方がいいと思います。

後半の部分の解釈が難しいです。
突然の訪問で見積書は作成して、後日の来訪で契約した、ということですが、明確に買う意思をもって来訪要請していたのであれば適用除外になりますが、設問では、「消費者の方から後日電話をさせる約束をとりつけ」とあります。つまり、明確に買う意思がなくても電話するように業者に言われていたと解釈し、その電話で訪問することを約束したと考えれば、特商法が適用されると考え、クーリングオフが可能です。例えば、買うか買わないかを電話してほしいといわれていて、契約しない旨返答したのに説得されて再訪問にいたり契約してしまったなど。
したがって、④は㋒が不正解です。
なんだかスッキリしませんが、答がそうなので、こう解釈しました。

さて、このチラシを見て業者を呼ぶというのは特商法が適用される場合もあるので覚えておく必要があります。
商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に、販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり、これを消費者が承諾した場合は、消費者から「請求」を行ったとは言えないため、本号には該当しない。」

特定商取引に関する法律・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51HO057.html

第五節 雑則
(適用除外)
第二十六条
5  第四条から第十条までの規定は、次の訪問販売については、適用しない。
一  その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売

特定商取引に関する法律・解説(平成21年版)・・・http://www.no-trouble.go.jp/#1259300931251

142-143ページ
5 第5項は、①本法の訪問販売に対する規制がもっぱら押し付け販売的なものから消費者を保護することに目的があること、②したがって、日常生活において支障なく行われている同様の形態の取引についてまで規制を及ぼすことは本意ではなく、またそれによってこれらの取引に無用の混乱を生ぜしめることは避けるべきこと等から、これらの取引を訪問販売についての規定の適用対象から除外することとしたものである(ただし法第3条及び第3条の2は適用される。)。
(1) 第1号は、販売業者等が自らの意思に基づき住居を訪問して販売を行うのではなく、消費者の「請求」に応じて行うその住居における販売等を適用除外とするものである。
イ「売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契
約を締結することを請求した者」売買契約又は役務提供契約の申込みは承諾の主体の如何を問わない。要は、取引行為をすることを請求した者の意である。
このような場合は、例えば商品の売買にあたっては、
・購入者側に訪問販売の方法によって商品を購入する意思があらかじめあること
・購入者と販売業者との間に取引関係があること
が通例であるため、本法の趣旨に照らして本法を適用する必要がないと考えられる
(ただし法第3条及び第3条の2は適用される。)。購入者が、「○○を購入するから来訪されたい」等、「契約の申込み」又は「契約の締結」を明確に表示した場合、その他取引行為を行いたい旨の明確な意思表示をした場合、「請求した者」に当たる。
しかし、商品等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に、販売業者等より訪問して説明をしたい旨の申出があり、これを消費者が承諾した場合は、消費者から「請求」を行ったとは言えないため、本号には該当しない。
また、販売業者等の方から電話をかけ、事前にアポイントメントを取って訪問する場合も同様に本号には該当しない。


この問題は「無料低額宿泊所の利用サービス等の提供」という題材が混乱を招く気がしますが、単なる役務のキャッチセールスと考えるのが素直です。
平成20年度の特商法の改正で指定商品制・指定役務制が撤廃されてすべての商品・役務が規制対象となりました。

公園で声をかけて契約した場合は訪問販売の「第2条第1項の営業所以外の場所での契約」に当たりますし、公園で声をかけて事業者の事務所に同行させて契約した場合は「第2条第2項の営業所での契約」に該当します。
したがって、⑤は㋒が不正解です。単純素直に考えましょう。


消費生活安心ガイドより
業務提供誘引販売取引・・・「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。

クーリングオフは20日間ですのでアとイは正解であることの説明は不要ですよね。

さて、問題は「軽貨物運送の代理店契約」ということです。
単純な内職商法と違い、契約と同時に運送業の営業届けを出していることもあり、業者はあくまで事業所等で業務を行っている者との契約であるとして、特定商取引法のクーリング・オフや取消権のルールは適用にならないと主張します。しかし、営業の届出をしていても、実質のある事業を行っていない場合は事業所等に当たらず、特商法の適用対象となります。
したがって、⑥は㋒が不正解です。

国民生活センターHP
トップページ > 注目情報 > 発表情報 > 「独立開業で高収入?」軽貨物運送の代理店契約に関する相談が再び増加!-支払いできず、多重債務に陥るケースも-
[2010年9月1日:公表]
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100901_3.html

[報告書本文(PDF)] 「独立開業で高収入?」軽貨物運送の代理店契約に関する相談が再び増加!-支払いできず、多重債務に陥るケースも-(245KB)

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20100901_3.pdf
本トラブルの相談者の多くは個人事業者という形で代理店契約をしているが、代理店を募る業者と比べ、運送業に関する情報や知識の量に大きな格差がある。このような者に対して、正確な情報等を提供することなく、収入が得られることを強調して高額な商品を契約させれば、当然、前述したようなトラブルとなる。トラブルを防止するため、特定商取引に関する法律(以下、特定商取引法という。)では、業務提供誘引販売取引という取引形態を定め、契約者を保護する目的で様々な規定を設けている(注1)。特に、上記取引に該当し、「業務を事業所等によらないで行う者」が契約する場合には、クーリング・オフ等の契約者を保護する規定がある。
軽貨物運送の仕事をするためには、貨物軽自動車運送事業の経営届出をする必要があり、この届出書には営業所の住所等を記載することになる。届出等の手続きをしていても、これに対応した実質のある事業を行っていない場合は、クーリング・オフ等の規定が適用される(注2)が、代理店を募る業者の中には、あくまで“事業所を構えて業務を行う者”との契約だと主張し、クーリング・オフ等に全く応じず、解決困難となることが多い。

(注2)「特定商取引法に関する法律等の施行について」(平成21年8月6日付)によると、『「事業所等」とは、当該業務を行うことを目的とし、相当程度の永続性を有する施設を意味する。例えば、自宅とは別に、店舗や事業専用の場所を構えて、そこで永続的に業務を行う場合や、関係する業規制法上の許可や届出等の適正
な手続きをした上でこれに対応した実質のある事業を行っているような場合については、一般的にこの「事業所等」に該当するものと考えられ、このような場所で業務を行う個人は、通常、これら条項の適用の対象外となる。』とされている。(消費者庁取引・物価対策課、経済産業省商務情報政策局消費経済政策課編「特定商取引に関する法律の解説」参照)

特定商取引に関する法律・解説(平成21年版)・・・http://www.no-trouble.go.jp/#1259300931251

277ページ

1 第1項
(1) 「その業務提供誘引販売業に関して提供され、又はあつせんされる業務を事業所等によらないで行う個人」
本条、第55 条、第56 条第1項第2号及び第3号並びに第58 条から第58 条の3までの規定は、事業所等によらないで業務を行う個人を相手方とするものに適用を限定している。法人及び事業所等を構えて業務を行う個人は、一般的に商取引に習熟したものと考えられ、これら条項による保護の対象とするまでの必要がないものと考えられることから、適用から除外したものである。
また、事業所等を有していても、在宅ワーク等の業務を当該事業所で行わない場合、例えば、店舗を構えてある分野の事業を行っている個人事業主がその分野と無関係の業務として在宅ワークを行うような場合には、本法の適用の対象となる。
ここでの「事業所等」とは、当該業務を行うことを目的とし、相当程度の永続性を有する施設を意味する。例えば、自宅とは別に、店舗や事業専用の場所を構えて、そこで永続的に業務を行う場合や、関係する業規制法上の許可や届出等の適正な手続をした上でこれに対応した実質のある事業を行っているような場合については、一般的にこの「事業所等」に該当するものと考えられ、このような場所で業務を行う個人は、通常、これら条項の適用の対象外となる。
一方、例えば、自宅の一室に私用のために置いているパソコンを使って業務を行うような場合には、一般的には「事業所等」には当たらず、このように自宅で業務を行う個人は本法の適用の対象となる。
なお、個人が業務提供誘引販売業を行う者との間で「代理店契約」を締結する場合もあると考えられるが、本法の適用の対象となるかどうかは、業務の提供についての契約の名称や形式によって決まるものではなく、個人が「事業所等」により業務を行っているかどうかという実態によって判断されるものである。

解答一覧

④→×㋒、⑤→×㋒、⑥→×㋒