出題分野がばらけており、同じ分野でまとめて解説したいと思いますので、例外的に解説の順番が変わっています。
その2・・・①②消費者行政の歴史(アメリカ)、③消費者基本計画、⑪消費者基本計画、⑫消費者基本法
その3・・・④⑤相談統計、⑭相談統計
その4・・・⑥~⑩消費者行政の歴史(日本)
その5・・・⑬⑮その他

1.次の文章のうち、下線部が、すべて正しい場合には○を、誤っているものがある場合には×を、解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。また、誤っているものがある場合には、誤っている箇所(1 カ所)の記号も記入(マーク)しなさい。

① 1962年にケネディ教書で表明された4つの権利は、㋐安全への権利、㋑情報を与えられる権利、㋒選択をする権利、意見を聴かれる権利である。

② 1982年、国際消費者機構(CI)は、消費者の㋐6つの権利と3つの責任を提唱した。具体的には、㋑生活のニーズが保証される権利、㋒批判的意識を持つ責任などである。

③ 政府は、2010年3月に、2010年度から㋐5カ年を対象とする消費者基本計画を策定した。その後、消費者安全法が改正され、2012年10月に㋑消費者安全調査委員会が設置された。

⑪ 消費者基本計画は、㋐毎年度、㋑計画に盛り込まれた施策の実施状況について検証・評価・監視を行うこと、㋒検証・評価の結果とそれによって必要となる計画の見直しについては閣議決定を行い、公表することとされている。

⑫ 消費者基本法では、㋐消費者を恩恵的に保護するという発想のもと、㋑事業者に対して、消費者の安全及び消費者取引の公正の確保などの責務や、㋒国による消費者政策の推進などの責務を定めている。

解説

問題① 消費者行政の歴史(アメリカ)

  • 消費者の権利が公式に表明されるようになったのが、1962年にアメリカのケネディ大統領によるものです。「ケネディ4つの権利」といわれてます。
    ⇒「安全への権利」「情報を与えられる権利」「選択をする権利」「意見を聴かれる権利」
  • 今更、専門相談員試験で暗記問題もいまいちと思いましたが、ラッキー問題のようでラッキー問題ではないかもしれませんね。この4つは、さすがになんとなくでも正解できると思います。
  • さらに、1975年にフォード大統領が5つ目の権利として、「消費者教育を受ける権利」を追加しました。
  • この4+1の権利と大統領の名前はアドバイザー試験には暗記必須となっています。

したがって、①はすべて正解です。

問題② 消費者行政の歴史(アメリカ)

  • 問題①のケネディの4つの権利とフォードの追加の権利とセットで覚えるのが、CI(国際消費者機構)の権利と義務です。追加といっても、すべてが追加項目ではなく、4+1の言葉の表現が少し変わりながら追加されたものとなっています。
  • 項目を読めばなんとなく正解のように感じて、すべて正解の○にしたいところですが、権利と責任の数が違うという意地悪問題ですね。この試験はときどき数字が違うときがあるので要注意です。「6つの権利と3つの責任」ではなく、「8つの権利と5つの責任」なんですね。両方の数字が間違っているというのは、せめてものヒントかもしれません。こちらのほうは正解できていないかもしれませんね。

したがって、②は㋐が不正解となります。

問題①②ともに、「ハンドブック消費者2014」の8-9ページに掲載されていますので、抜粋しておきます。(消費者庁HP…http://www.caa.go.jp/adjustments/handbook.html

3.ケネディ大統領の4つの権利(1962年)
① 「消費者の利益の保護に関する連邦議会への特別教書」において、以下の
4項目を「消費者の権利」(Consumer Rights)として提示。
● 安全への権利
● 情報を与えられる権利
● 選択をする権利
● 意見を聴かれる権利
② 同教書では、
・「消費者の権利」の実現に支障がないようにすることは、連邦政府の責任
・その責任を果たすため、立法及び行政措置をとることが必要
とされている。
③ 上記に基づき、公正包装及びラベル表示法(1966年)、消費者信用保護法
(1968年)、消費者製品安全法(1972年)等が制定された。
4.国際消費者機構(CI)の8つの権利と5つの責任(1982年)
① 消費者団体の国際的組織であるCI(Consumers International:国際消費
者機構)が、次の8項目を「消費者の権利」として提唱。
● 生活のニーズが保証される権利
● 安全への権利
● 情報を与えられる権利
● 選択をする権利
● 意見を聴かれる権利
● 補償を受ける権利
● 消費者教育を受ける権利
● 健全な環境の中で働き生活する権利
② また、前述の「消費者の権利」とともに、次の5つを「消費者の責任」
(Consumer Responsibilities)として提唱。
● 批判的意識を持つ責任
● 主張し行動する責任
● 社会的弱者への配慮責任
● 環境への配慮責任
● 連帯する責任

問題③ 消費者基本計画

  • 消費者基本計画は、ずっと5年ごとに策定されています。5年ごとという決まりはないと思うのですが、最初に5年にしたので、ずっと5年だと思います。(条文や規定に5年があれば教えてください)
  • 行政の施策の中には5年や10年などの中・長期計画をたてて、行政施策を進めていくのが通常です。
  • 消費者基本計画は重要ワードですので5年ごとというのは最初に覚えてしまえば、間違うことはないと思います。覚えていない人は今覚えてください。下記に補足もしております。ちあんみに、改定があれば適宜改定していますが、短くなって新たに改定されて1年目がはじまるということはありません。
  • 出題されている「消費者基本計画」と「消費者安全調査委員会」がどう関係してるのかと思うところですが、まず、歴史的経緯を知っておくと分かりやすいと思います。
  • 消費者の事故情報が縦割り行政で他の省庁と共有されていないという問題点から消費者庁が事故情報を一元的に取りまとめることとなり、2009年の消費者庁の設置と同時に消費者安全法が制定され、重大事故の収集制度などができました。しかし、事故原因の究明までは手が回らず、2010年の消費者基本計画の中で
    情報の分析・原因究明を的確かつ迅速に進めます。
    ☆事故情報分析タスクフォースなどを通じた迅速・的確な分析・原因究明
    ☆消費者事故の独立した公正かつ網羅的な調査機関の在り方の検討

    という計画が定められました。
    その成果として、2012年に消費者安全法が改正されて消費者安全調査委員会が設置されました。
    消費者安全調査委員会は「消費者事故調」「事故調」と呼ばれています。私は「事故調」と覚えていたので、「消費者安全調査委員会」という名前が間違っているのかどうか迷いましたが、問題の視点はそうではなかったのです。

したがって、③はすべて正解です。

問題④ 消費者基本計画

「ハンドブック消費者2014」(17ページ)の丸写しです。

4.「消費者基本計画」の検証・評価・監視
「消費者基本計画」では、毎年度、①計画に盛り込まれた施策の実施状況について検証・評価・監視を行うこと、②検証・評価の結果とそれによって必要となる「消費者基本計画」の見直しについては閣議決定を行い、公表することとされています。
なお、2012年8月22日の消費者基本法の改正を受けて、2012年度以降の実施状況に関しては、各施策の実施状況の検証・評価の結果を「消費者白書」として閣議決定を行うとともに、各施策の必要な見直しを「消費者基本計画」として閣議決定を行い、それぞれ公表することとしています。
また、現行の「消費者基本計画」については、2011年7月8日、2012年7月20日、2013年6月28日に、それぞれ一部改定の閣議決定を行っています。

計画は5年ごと、報告は毎年度、閣議決定、公表、というのがキーワードです。毎年度が迷うかもしれないところです。
したがって、⑪はすべて正解です。


もう一つ大事なこととして、1968年に制定された「消費者保護基本法」が、2004年に「消費者基本法」として全面改正されました。

消費者基本法のポイント

  1. 消費者は行政から保護される立場であるという施策方針から、「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」を施策の基本とすることに方針転換されました。つまり、消費者も、行政に甘えてるのではなく、自分でしっかり勉強しなさいよ、ということです。
    重要ポイント!「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」
  2. 消費者の権利として、上記に上げた「アメリカでの4+1およびCIでの8」から、6項目を取り込んで、第2条の基本理念としています。この第2条も。穴埋めや正誤でまるまる出題される可能性もありますので確認しておいてください。
  3. 消費者基本計画を定める(第9条)ことになっています。何年ごとに作成しなければならないというのはありませんが、5年ごとに作成されています。最初が17年度(2005年)から21年度、22年度(2010年)から26年度、最新は27年度(2015年)から32年度までとなっています。なお、毎年、国会に消費者政策の実施状況を報告する(第10条の2)ことになっていますが、これは「消費者白書」のことを指します。

問題⑫ 消費者基本法

違和感ありまくりのラッキー問題です。「恩恵的に」という言葉は聞くことがないですよね。
ちなみに消費者基本法第5条と第3条からの出題です。

消費者基本法・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S43/S43HO078.html
(事業者の責務等)
第五条  事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一  消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること
二  消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
三  消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
四  消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五  国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
2  事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよう努めなければならない。

(国の責務)
第三条  国は、経済社会の発展に即応して、前条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのつとり、消費者政策を推進する責務を有する。

したがって、⑫は㋐が不正解となります。

【解答】
①→○、②→×㋐、③→○、⑪→○、⑫→×㋐

①②で1問、残りから1-2問、5問中2問、できたら3問正解したいところです。